ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
26 / 109

26. 甘い香りに誘われて

しおりを挟む
「今日も、人がたくさん……」
 本部内では、バタバタと隊員総出でミクを探し回っている頃、ミクは魔術本部から出て、今日も人だかりの多い街に来ていた
「リコさんに教えてもらってよかった」
 本部の人が来ているか確認するために、時々後ろを振り返りながら、街を散策するミク。だが、街の中をどんどん進んでいくうちに、見慣れない本やお菓子を見つけて、テンションが上がり、本部の事を忘れて街の中を楽しんでいく


「お母様が好きそうなお菓子……」
 美味しそうな甘い匂いに誘われてケーキ屋さんの前で立ち止まるミク。しばらくそのまま見入っていると、後ろに影が現れた
「このケーキ、美味しそうだねぇ」
「リコさん!クルミさんに、モモカさんも……」
 声をかけられ驚き振り返ると、ニコニコと笑うリコと、その後ろで二人の様子を見ているクルミとモモカがいた
「探したよー。やっぱり街に出てたんだね」
 少し屈んでミクの頭を撫で微笑むリコ。だが、ミクは見つかったことにしょんぼりと落ち込んでいる
「ごめんなさい……」


「いつの間に、本部から街への抜け道を教えてたのよ……」
 そんな二人のやり取りを見ているクルミが呆れながらリコに言うと、モモカも少し呆れてため息をついた
「本当……リコらしいけど……」
 後ろでそう話している二人を無視して、店頭に並ぶケーキに夢中のリコとミク。楽しそうなミクを見て、勝手に出ていった事を叱れずにいた


「ミク。ちょっと、おやつ食べて帰る?」
 リコからの提案に、驚きつつも嬉しそうな表情になるミク。だが、それを聞いたクルミが慌てて止めに入った
「ちょっと、リコ……」
「いいじゃん。どうせ、怒られるんだし。気分転換しようよ」
 と、リコに先に言い返されクルミが戸惑っていると、リコはミクにニコニコと笑いながら問いかける
「ミクもおやつ食べたいよね?」
「えっ……はい」
「じゃあ、決まり!今日は何を食べようか」
 グイッとミクの腕を引っ張られて、スタスタと街を歩きはじめたリコ。突然引っ張られて、コケそうになるミクを気にせずご機嫌で話しかける
「さっきのお店のケーキにする?それとも、他のお店のお饅頭とか……」

「ちょっとリコ!」
 ケーキ屋の前で置いていかれたクルミが呼び止めるが、リコとミクは止まることなく街の中を歩いていく
「大丈夫よ、クルミ」
 楽しそうに街の中を歩くミクを見ながら、モモカがクルミに話しかけた
「後ろ、誰かついてきてるみたい」
 と、言われゆっくりと後ろに目を向ける。曲がり角に隠れて、リコの部屋の扉を叩き報告をしていた女性隊員が、隠れながら、ミクとリコの様子をうかがっていた


「二人とも、置いてくよ!」
 遠くで呼ぶリコの声が聞こえて、クルミが深くため息をついた
「……モモカ、何食べましょうか」
「そうねー。……そうだ。リコにおごってもらおうかな?」
 二人を待つため待っていたリコとミクのもとに駆けつけると、モモカがリコに微笑みながらそう話すと、リコが少し嫌そうな顔になった
「えー?それは困るよー」
 と、リコが笑い返していると、ミクが繋いでいたリコの手を離し、少し進んだ先にあるお店の前で立ち止まった
「これ、美味しそうです」
 と言いながら指差したのは、クレープ屋。たくさんあるクレープを見るなり、何を食べるか決めれずにメニュー表を睨み考え込んでしまった。少し遅れてミクの所に来たリコ達。悩みまくるミクの姿を見て、リコが隣にきてメニュー表を持ってミクと一緒に悩みはじめた
「じゃあ、クレープに決まりね。早く何にするか決めて、早く食べようか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...