ぱすてるランページ

シャオえる

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50. だからこそ、求めるうた

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「珍しいな。本を書いていたとは」
 ミクの家のリビングで一人、小さな灯火を頼りに本を読んでいたレイ。その姿を見たライが笑いながら話しかけてきた。声をかけられ、レイが本をパタンと閉じた音がリビングに響いた
「とっくに捨てていると思っていたがな……」
「そこら辺の道端に、捨てるわけにもいかないでしょう?本も勝手に書かれていくんです。本当、いい迷惑ですよ」
「それは、そうだな」
 レイの返事にクスッと笑うと、レイの向かいに座りグラスにお酒を注ぐ。レイのグラスにも注がれたお酒は飲むことなく、ライがお酒を嗜む姿を無言で見ている

「ミクは元気?」
 と、二人の無言の時間が流れていると、二人に話しかけてきたアマネ。入り口から仄かに見える姿に、レイが苦笑いで返事をした
「先程、お会いしたでしょ?何度も夜中に現れたら、こちらとしては困りますよ」
「あら、娘を心配したらいけないかしら?」
 困った顔でライの側に近寄っていくアマネ。ライの後ろから抱きしめると、隣の席に誘われてライのグラスに残っていたお酒を呑むと、微笑み見つめあう二人。そんな二人を向かいに見ていたレイが、ふぅ。とため息ついた
「あなた方は、娘より本を心配しているのでは?」
「まあ、酷いこというのね」
 と、レイに笑って話すアマネ。二人の話のやり取りを見ていたライは、レイが飲まずにいるグラスを取ると、一口飲んで向かいの椅子に座るレイに話しかけた

「それで、今日もまた、ここに来たわけはなんだね?」
「急がなくても、あの子の本は書かれるでしょう。なぜ、身を隠してまで、本を書かせるのです?」
 レイがライの質問を聞き返すと、フフッと笑うと立ち上がり部屋の窓の方へと歩きはじめると、ライの片手にはミクやレイとは少し柄の違う本が現れ、ページをパラッとめくった

「我々の願いのためにな。ミクには大分頑張ってもらわねばならないが……」
「それは、困りますね。こちらの人達も、あの本を狙っているので……」
 ライの話に呆れた様子のレイに、少し困ったようにアマネが話に入ってきた
「あら……。でもきっと魔術本部も同じ願いね」
「止めた方がよいのでは?あの子の力が持ちませんよ」
「だからこそ、あの子の唄の力がいるのだよ。私達だってその為に動いている」
 嬉しそうに話すライの姿に、不満そうに椅子にもたれるレイ。その態度にライがまたフフッと笑う

「納得していないようだな」
「ええ。元々、私は本の力は好きではないのでね」
 と、少しだけ語気を強め椅子から立ち上がると、リビングの扉を開け、振り返ることなく、ライとアマネに声をかけた
「そうそう。ライ兄さんに、とても会いたがっていましたよ。会うなら、早々でよろしくお願いしますよ」
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