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シャオえる

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87. 愛する者を抱きしめて

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「なにが起きてるの?」
「これ……レイさんが言ってた、本の争いとかいうのじゃ……」
「まさか……そんな……」
 会議室が消えてなくなり、再びリコ達の目の前は真っ白な世界が広がっていた。今見た不思議な光景に戸惑いつつも冷静になろうとするリコ達。あれこれと三人で話していると、
後ろからバタンと倒れる音が聞こえて慌てて振り返ると、本を下にして倒れているミクがいた

「ミク!」
 リコが慌ててミクを抱きしめ起こすが、目を閉じぐったりと動かず、名前を読んでも起きないミクに、泣きそうなリコ。すると、ミクの側に開いたまま置きっぱなしになっている本を見つけた
「もしかして、さっきのはミクの魔術……?」
「……お父様、僕には分かりません。どうして、本を書き続けなければならないのですか?」

 クルミが目の前で起きた原因を理解した瞬間、後ろから聞こえた声に振り向くと、見たことのない男の子が、向かいにいるあまり表情の見えない男性に問いかけていた
「たくさんの人々を不幸にした本を、お父様が書き続ける理由が、僕には分かりません」
 不思議そうに問いかける男の子に、男性はクスッと笑って話はじめた
「……いいかい、ライ」

「私達、本の一族は、人々の幸せのためにある。それは、分かるね?」
「……はい」
 ゆっくりと語りはじめた男性の話に、頷き答える男の子。それを見て男性が、また語りはじめた
「だが、一番に大切なことは、愛する者のためだ」
「愛する者……ですか?」
「そう。友達や村の人々の幸せを願うことも大切だが、愛しき守るべき者の幸せを願うことも大切なんだよ」
 と語り終えると、少し振り返った男性。後ろにいるリコ達は気づかれたかと思い、一瞬身構える。だが、男性はリコ達とは違う名前を言った

「レイ」
 と、優しい声で名前を呼ぶ。誰もいないその視線の先に、ぼんやりと少しずつ小さな男の子が現れた。その男の子の名前だったのか、絵本を持って後ろに振り返った
「レイ、こっちにおいで」
 再び男性に呼ばれて、読んでいた絵本を床に置いて、ゆっくりゆっくりと歩いてくると、男性の足に抱きついて、ニッコリと笑う。男性も、小さな男の子を愛しそうに微笑むと、二人の様子を側で見ていた男の子にも微笑み、そっと体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。リコ達が、抱きしめあう三人の姿を呆然と見ていると、ゆっくりと消えていく三人。完全に姿が消えると、さっきまでいた本部の古い書庫が現れた


「なに……今の」
 目の前の出来事が理解できず戸惑うクルミ。モモカと目を合わせうろたえている
「レイって、レイさんのことかな?」
 と。モモカがさっきの男の子の話をしていると、二人の側でリコが慌てはじめていた
「ミク!しっかりして!」
 突然聞こえたリコの叫び声に、驚き振り返るクルミとモモカ。そこには、リコに抱かれて、さっきよりもぐったりしているミクの姿があった
「どうしたの?」
「凄い熱なの!」
 と、ミクを抱いてうろたえるリコ。モモカがミクの額に手を置くと、予想よりもかなり高い熱に、驚き緊迫した面持ちでクルミの方に振り向いた
「本当だ……。急いで医務室に行かないと……」
 モモカの言葉に、一瞬静かになったリコとクルミ。三人がうろたえている間も、更に苦しそうな表情になっていくミク。その姿を見て、クルミがリコに抱かれているミクの手をつかみ、おんぶをすると不安そうに見ているリコとモモカに少し大声を上げ声をかけた
「私がミクをおんぶして医務室まで連れていくから、モモカは部屋の扉開けて。リコはミクの本を持って、急いで行くよ!」
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