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シャオえる

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89. あの日の優しさの答え

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「来る時は、ノックをしてくれると助かるのだが……」
 いつもより早い時間のレイの訪問に、困りつつも笑って話しかけるライ。後ろから話しかけられ振り向くレイ。リビングでくつろぐレイのテーブル越し、その向かいに座ったライが、レイの顔を見てまたクスッと笑う
「魔術本部が来ると緊張するのでな」
「それは失礼。一応、魔術本部の一員なので、今後は、気を付ければなりませんね」
 少し困ったように返事をしたレイ。レイのグラスに飲み物を継ぎ足していたライ。その返事を聞いて今度は、フフッと笑う
「そうだったな。しかし、私達の本を探すと名目で入ったわりには、なかなか持って来ず、居心地良さそうに過ごしているな」
「ええ。形は違えど、人々の幸せを願うのは、本部も一族も一緒ですからね」
 と、一度会話を終え、二人一緒に飲み物を飲んで一息つく二人。しばらくの沈黙の後、ライから先に話をはじめた

「それで、今日は何の用だね」
 ライの問いかけに、少し残っていた飲み物を一口飲み、気持ちを落ち着かせると、テーブルの上にリコ達が書庫で見つけたという古い本を置いた
「リコ達が古い書庫で見つけたそうです」
「これは……」
 古い本を手に取り、表紙を凝視するライ。ゆっくりと本をめくり、一ページずつ慎重に読み進めていくライの様子を、何も言わずただ見つめるレイ。半分ほど読み終えた頃、レイがクスッと笑って声をかけた
「その本、見覚えがあるでしょう?」
 と、嬉しそうに話すレイに、返事をせず読み進めるライ。そのまま、最後まで読み終えるとパタンと本を閉じ、テーブルに置くと、一度深く深呼吸をした

「ああ、これは父様の本だな。だが、全て処分するようにという遺言で、もう一冊も無いはずでは……」
「未来を見て残していたのでしょう。一番に見つけたのは、リコ達ではありませんから」
 と、ライの質問に答えると、その言葉の意味を理解したライ。本を手に取り表紙の模様を見て、懐かしそうに目を細めた
「そうか、ミクが見つけたのか」
「ええ、書かれた魔術のせいで、今は少し寝込んでいますが……」
 リコ達から本を見つけた時の話をライにも話すと、それを聞いたライは何も言わず、手元の本を見て笑う。話終えたレイは、グラスに残った飲み物を飲んで、ふぅ。とため息ついた

「それで、ライ兄さん……」
 ポツリと呟くように話しかけたレイ。名前を呼ばれて顔を上げたライ。真剣な眼差しでこちらを見ているレイに、本を読んでいた手が止まった
「何の願いで今、動いているのです?」
 レイに聞かれて、本をパタンと閉じ、再び本を見つめるライ。またほんの少し表情が綻び、ゆっくりと語りだした
「お父様と同じ思いだ。あの頃は分からなかったが、今なら素直に、はい。と言うだろうな」
「そうですか……なら」
 返事を聞いて、椅子を少し動かしたレイ。ライと向かい合い、少しクスッと笑ってライに話しかけた
「その願いの話、もう少し聞かせてもらえますか?」
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