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シャオえる

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102. 人々の願いに踊らされて

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「嫌です!私はもう唄いません!お母様のお願いでも、やっぱり嫌です!」
「ミク、そんな悲しいこと言わないで……。みんな、ミクのうたを待っているのよ」
「でも……でも……」
 ライの話を大声で嫌がるミクをなだめるアマネ。涙を流して嫌がるミクを見たリコが、レイを見て睨んだ
「レイさん!ずっとミクのことを守っていたのに、どうして?」
 大声でリコがレイに話しかけると、レイだけでなくミクもリコを見た
「少し気が変わってね。ライ兄さんの願いを叶えようと思ったんだよ」
「……ライ兄さんって」
 レイの返事に、戸惑い何も言わなくなったリコ。モモカがリコを抱きしめた


「ミク、どうしても嫌かい?」
 ライがアマネに抱きついているミクの側に来ると少し屈んで話しかける。声に気づいて少しライの方を向くと、小さく頷き返事をすると、再びアマネの胸元で泣きはじめたミク。その後ろ姿を見て、ライがゆっくりと立ち上がるとレイの方に歩きだした
「仕方ないか。レイ……」
 ライに名前を呼ばれ、レイが頷くと周りに浮かぶ本達が、独りでに隙間を広げながら、パラパラとページがめくりはじめた

「レイさん、何をする気ですか……」
 目の前で起きている不思議な光景に、思わず声をかけたクルミ。すると、三人の方を見てレイがニコッと笑う
「ちょっと無理矢理でも唄わせてみようかと……」
 レイがそう言うと、ミクを抱きしめていたアマネがおもむろに立ち上がり、ゆっくりと目を閉じた。アマネとライの行動に、リコ達だけでなく様子を見ていたレグスや隊員達も静まり返る。すると、アマネがふぅ。と大きく深呼吸を一度した後、ゆっくりと唄いはじめた。それと同時に、レイが隠し持っていた本が、レイの目の前に現れ、残り少ないページに文字か少しずつ浮かび上がり、レイの本には全てのページに文字が書き終わり、アマネが唄う姿を、見上げて見ていたミクが唄うアマネの口元につられて、ゆっくりと唄いはじめた


「お母様……」
 ふと、うたの途中アマネを呼んだミク。その声に気づいたアマネがミクを見て優しく微笑む。二人一緒に唄う声が、リコ達にも聞こえてきて、その唄声に聞き入っているとミクが抱きしめ持っていた本と絵本が、ミクの手から離れて、フワフワとミクの頭の真上に浮かぶ
「ミクの本が……」
 浮かぶ二冊の本を見て、ポツリ呟いたリコ。クルミやモモカだけでなく、隊員達やレグスもミクの本に目を向ける。ミクの唄声に合わせるように、少しずつ光に包まれていく二冊の本。強くなっていく光に少し目を閉じて様子を見守るリコ達。アマネとミクの唄声が響き渡る中、少しずつ光が薄れていく。すると、二冊あったはずの本は、一冊だけになってミクの真上に浮かぶ

「あの模様は……」
 ミクが持っていた本と書庫で見た本とは違う本がミクの真上に現れ、驚くリコ達。草むらの中、ミク達の事を見ていた隊員達も驚き言葉を失っている中、レグス一人だけが嬉しそうな表情でミクの真上にある本を見ていた
「新たな本か……!」
 本部で見たミクの本とは違うことに気づいたレグスが、現れた本を奪い取ろうと、ミクの側へと近づいていく


「全員、逃げろ!」
 突然、カフカが隊員に向かって叫ぶ。レイの側に浮かんでいる、とある一冊が他の本とは動きが変わったのに気づいたカフカが、隊員達に逃げるように諭すが、叫んだ理由が分からなかった隊員達が戸惑って動けずにいると、レグスや隊員達のもとに、とても強い強風が襲ってきた。次々と森の中に飛ばされていく隊員達。少し離れた場所にいて、強風の影響を受けなかったリコ達は、飛ばされた光景や隊員達の叫び声や草むらの中、倒れる音を聞いて呆然としている


「レグス。この本は取っちゃダメだよ。今から必要なんだから」
 と、レイがレグスにニコニコと笑い話しかける。強風を受ける直前に、防御の魔術を使い影響を受けずにいたレグス。レイのその笑顔を見て、同じくクスッと笑った
「私とて、あの本は必要だ。ずっと探し求めていたからな」
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