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シャオえる

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105. もう少し、隣で……

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「お母様、とても苦しいです……」
 リコが、ミクを助けに行こうと騒いでいる光の中では、胸を押さえて背中を丸めて耐えるミク。その背中をさすり、見守っているアマネの表情も心配からか少し表情は暗い
「頑張ってミク。あなたのためよ」
「私のため?」
「そうよ。ミクが、これからずっと、笑って過ごせるように……」
 と、アマネが呟いた瞬間、光の中にいてミクの辺りは真っ白な景色だったのが、一瞬にして、見たことのない辺り一面に綺麗に広がる花畑が現れた

「綺麗なお花……」
 満開に咲く花達に、苦しかった胸の痛みを忘れて、ゆっくりと立ち上がる。少し足元がふらつくミクを支えて、アマネも花畑を見渡していると、ミクが少し離れた場所に人影を見つけた。ミクの歩幅に合わせゆっくりと近づいていく。その人影を見ると、ミクと同じくらいの歳の女の子が空に向かって一人唄っていた。その女の子が唄う曲に聞き覚えのあるミク。懐かしそうに女の子を見ているアマネに声をかけた
「あれは、お母様ですか?」
「そうよ。ミクと同じくらいの歳かな?」
 二人の話し声に気づいていないのか、唄い続ける幼き頃のアマネの姿を、しばらく見ていると、誰も来ないことに気づいたミクが辺りをキョロキョロと見渡したあと、後ろにいたアマネにぎゅっと抱きついた

「お母様も、私みたいに一人で唄っていたのですか?」
「そう。私の唄の力で、もう誰にも迷惑かけないように、一人きりで唄っているの。それがうたの一族として生まれた運命と思って……。そう、ずっと一人で……」
 アマネがそう語り終えると、唄いながらも、少しずつ成長していく幼き頃のアマネ。今よりもほんの少し若いアマネの姿になった時、ミクのそばに、誰かが近づいてきた

「……素敵な唄ですね」
 突然聞こえてきた知らない声に、驚き振り返るアマネ。花達を避けながら、アマネに近づいてくる男性。その手には、見慣れない少し厚い本とペンを持っている。唄っている途中に現れたことで、恥ずかしさと戸惑いで手で口を塞ぎ、顔を背けたアマネ。急に慌てた様子で顔を塞ぐアマネの姿を見て、持っていたペンをポケットに入れて、広げていた本をパタンと閉じた。その閉じる音と共に、近くに感じる男性の気配にアマネが恐る恐る顔を上げた。すると、すぐ隣で男性が優しい微笑みで手を差し伸べ、問いかけてきた
「少し、隣で聞いててもいいですか?」






「ミク!」
 声に気づいてうっすらと目を開けた。ぼんやり見える視界に無理矢理入ろうとするリコの姿を見つけてゆっくりと顔を動かした。どこか見覚えのある部屋を見渡すと、本部の医務室だと気づいたミク。隣で目に涙を溜めているリコの方にまた目を向けた
「クルミ、モモカ!ミクが目を覚ました!」
 部屋にある椅子に座って休んでいた二人を大声で呼ぶ
「そんな大声じゃなくても、聞こえてるよ」
 と、二人がミクのもとに来ると、三人の姿を見たミクはまたすぐ目を閉じ寝息をたてて寝てしまった

「寝ちゃった……」
「でも、目を覚ましてくれて良かった……」
 ミクの寝顔を見てホッと胸を撫で下ろしていると、騒ぎに気づいた医師達が寝ているミクの検査を始めた。部屋のすみに追いやられ、少し不安そうに検査の様子を見ていると、クルミがリコとモモカに話しかけた
「レイさんに報告しよう……。目覚めるの待ってるだろうし」
 クルミの提案に、小さく頷くリコ。トボトボとゆっくりと歩いて医務室から出ていくリコ。医師達に挨拶をした後、リコの後を追うクルミとモモカ。三人とも特に会話もなく、レイがいるはずの部屋へと歩いていく




「……どうぞ」
 レイの声が聞こえると、ゆっくりと扉を開けると、机の椅子に座り、たくさんの資料に囲まれたレイがいた
「ミクが目を覚ましました。すぐまた寝ちゃったけど……」
「そうか。一度起きたなら、まあ大丈夫だろう」
 と、ミクの報告を聞いてくすぐ、椅子から立ち上がりリコ達の横を通りすぎ部屋を出ていった
「あの……どこに?」
 慌ててレイの後を追うように、廊下に出たリコ達。後ろから聞こえてきたクルミの声で振り返り三人にクスッと笑って返事をした
「カフカに美味しいお酒を用意しないといけないからな。しばらく街に出る。くれぐれも問題を起こさないようにな」
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