ぱすてるランページ

シャオえる

文字の大きさ
106 / 109

106. 気分を変えて一つだけ

しおりを挟む
 レイの部屋から出た後、再びミクのいる医務室に戻ってきたリコ達。まだ、起きる様子のないミクを見ながら、ゆっくりと時間が過ぎていく
「あの……ミクのお母さんは……」
 リコがそばにいた看護師に問いかけると、声をかけられ振り向くと、不安そうな表情のリコを見てニッコリと微笑んだ
「大丈夫ですよ。もう少ししたら皆さんも会いに行けると思いますが……どうしますか?」
 看護師の返事を聞いて、ミクの方に向き直すと、少しうつ向いたリコ
「ミクが起きてから……会おうかな……」
 と、元気のない小さな声で返事をすると、隣にいるクルミとモモカが目を合わせ、ふぅ。とため息ついた

「それより皆さん、少し休まれては?あまり食事も取れてないようですし……」
 ずっとミクのそばから動かない三人に、心配になった看護師がリコ達に提案しても、リコはあまり浮かない表情
「ありがとうございます。でも……」
 ミクを見たまま返事をするリコ。その返事に少し困った表情になった看護師と、二人の会話を聞いていたクルミが突然立ち上がり、リコの手をつかんで引っ張った
「リコ、ここは任せて行こう」
「でも……」
「ほら、行くよ。そんな顔でミクと会わせたくないもの」
 動く気のないリコをモモカと一緒に引っ張り、部屋にいた人達が心配そうに見守る中、医務室の入り口へと歩いていく
「少し出ます。ミクのこと宜しくお願いします」
 無理矢理リコをモモカと一緒に部屋から出して、クルミが医師達にペコリと頭を下げた。三人の様子を見ていた医師達は頷き、看護師達は優しく微笑んだ
「もちろんです。何かあればすぐお呼びしますね」





「……どうぞ」
 その頃、カフカの部屋では誰かが訪ねていた。返事と共に、部屋の扉が開くと、ニコニコと笑うレイが部屋の中に入ってきた
「やあ、機嫌はどう?」
 何やらたくさんの荷物を持ってきたレイを見て、机に向かい何かを書いていた手を止め、ため息ついた
「最悪だな。怪我は直してもらったが、なかなか気分が上がらん」
「奇遇だねぇ。僕もなんだ」
 と、楽しそうに話をするレイ。ガサゴソと荷物から取り出したのは、カフカの好きなお酒。グラスに注ぐと、レイの様子を見てたカフカに差し出した
「一つ飲んで、気分を変えないかい?」
「本部内で飲むのは禁止だぞ」
 機嫌よく差し出すレイに呆れながら答えてると、無理矢理グラスを渡し、新しく取り出したグラスにもお酒を注ぎだした
「いいのいいの。どうせ書くものが、一つや二つの増えるくらい大差ないでしょ?」
「まあ、それはそうだな」
 レイの明るく話してくる様子と、好きなお酒に負けて、レイの向かいのソファーに座ったカフカ。先に一気に飲み干し、ふぅ。と一息ついた

「あの子はどうしている?」
「今も寝ているけれど、さっき一瞬だけ起きたらしいよ」
 レイも飲みながらカフカに返事をすると、レイに飲み干したグラスを手渡した
「そうか。まぁ、新たな魔術は私とて疲れるからな」
「本当だ。新たな魔術は迷惑なものだな」
 と、カフカとは違う声がレイのすぐ後ろから、突然聞こえてきた。声のする方に振り向くと、カフカよりも機嫌の悪そうなレグスが二人を見ていた
「あれ?いつからいたの?」
 レグスの姿を見るなり嬉しそうに話しかけるレイ。明るいレイの笑顔を見て、更に機嫌の悪そうな表情になった

「ずっといたよ。奥の部屋で寝ていたんだ」
「そうなんだ、早く言ってよ」
 カフカとレイが話をしていると、テーブルに置かれたレイのグラスを取り飲み干した
「おかわりを貰おうか……」
 グラスをレイに差し出して、まだ機嫌の悪そうに隣に座ったレグスを、呆れながらカフカが見ている。グラスを受け取り継ぎ足し、話しかけながらレグスにお酒が入ったグラスを渡した
「久々に三人ゆっくり揃ったんだから、反省会も兼ねて思い出話でもはじめようか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...