ぱすてるランページ

107. 会いたい人に、出会う前に

「アマネ……。おはよう」
　ベッドで寝ていて目覚めたアマネにライが優しい声で話しかけると、顔をゆっくり動かして、辺りを見渡した
「君の部屋だよ。あれから、大分日にちが経っているよ」
　と、ライが言うとゆっくりと体を動かし起きようとするアマネを支えるライ。座ろうと少し顔を上げた時、グラッと眩暈が起きてそのまま倒れてしまった。慌てて体を強く支えるライに抱かれて、また横になった
「ライさん……ミクはどこ？」
「今は、魔術本部にいるよ。ミクの魔力の許容範囲をかなり越えて魔術を無理矢理発動させたから、かなり危険な状態で……」
　ライの話に驚き、起き上がろうとするアマネを、そっと肩をつかんで止めると、またアマネをベッドに寝かして頭を撫でた
「本部の人達が頑張ってくれたおかけで、今は落ち着いている。あの日、来ていた女の子達がずっとミクを見てくれていると……」
　眠りを誘うように優しく撫でられ、ウトウトし目を閉じたアマネに、ライが布団をかけ直して、そっとアマネの頬に触れた
「君ももう少し休んで……。慣れない魔術で、まだ回復してないようだ」
「でも……」
「起きるまで、隣にいるよ」
　不安そうなアマネの手を握ると、少し安心したのか、小さく頷くと、すぐに眠ってしまったアマネ。そのまま、手を握ったまま、アマネの寝姿を見ていると、ガチャと扉の開く音がなった

「ライ様、お飲み物をお持ちしました」
　と、二人の部屋に執事と家政婦が入ってくると、ライの近くにあるテーブルで、家政婦が紅茶を淹れはじめた。手際よく、温かい紅茶がライに手渡されると、一口飲んで一息ついた。その様子を部屋の入り口付近にいた執事や家政婦に気づいて、少し顔を背けた
「君たちも悪いな。呼び戻して……」
「いえ。私達はライ様、アマネ様。そして、ミク様とまた一緒に過ごせることを嬉しく思っていますので……」
　そう話す執事に顔を向けると、微笑む執事とその側で家政婦達も頷き微笑んでいた。その笑顔を見て、レイも少し顔が綻び、執事や家政婦達に声をかけた
「そうか。ありがとう……」




「ところで、あの子の魔力はどうなっている？」
　その頃、カフカの部屋では、大分お酒や話が進んで楽しく時間が過ぎ、ふとカフカがレイにミクの様子を聞いてた
「それはまだ、起きて元気にならないと分かんないからねぇ。調べられるのも、まだまだ先だし……」
　二人の話を聞いて、レグスがグラスに残ってたお酒を一気に飲み干した
「レグス、ちょっと飲みすぎだよ。これから、副本部長として大事な仕事あるんでしょ？」
「……ああ、ある。だからこそレイ……！」
　バンッとテーブルにグラスを強く置いて、立ち上がったレグス。カフカとレイがその勢いにちょっとビックリしていると、突然コンコンと扉が叩く音が聞こえてきた

「失礼します。あの……」
　と、ゆっくりと扉を開けると三人の姿を見た隊員が驚いて一歩後退りした
「あっ、レイさん。やっと見つけましたよ」
　一緒に来ていた隊員が、レイの姿を見つけ、ホッとした様子で声をかけた
「ミクさんが起きました。今は、お会いしますか？」
　隊員の報告に三人の酔いが少し覚めて、顔を見合う。すると、レイがまだ入り口にいる隊員達に、少し困った顔で話しかけた
「そうだなぁ……リコ達は？」
「休息のためミクさんの部屋に戻っていたので、今呼びにいっています」
　返事を聞いて、少し考え出したレイ。隊員達だけでなく、カフカとレグスもレイの反応を待っていると、突然立ち上がり、背伸びをはじめた。レイの行動を見ていた隊員達に、レイがクスッと笑って声をかけた
「それじゃあ、リコ達が来る前に、会いに行ってみようかな……」