月夜、リコレクション

シャオえる

文字の大きさ
10 / 48

10. まだその時じゃない

しおりを挟む
 次の日の朝、ノエルが通う学校の近くの食堂で、アオイが朝ご飯を美味しそうにたくさん食べていた
「このご飯、とても美味しいです」
「それは良かった。またおかわりするかい?」
 ニコニコと食べる姿につられて笑顔になった店主の叔母さんが、アオイのテーブルにたくさん重ね置かれたお皿を見ながら問いかける。アオイもおかわりをするか悩みつつ重ねたお皿を見ると、ふと食堂の窓から見える道路にアクビをして面倒に歩くノエルの姿が見えて、ガタンと椅子から立ち上がった
「いえ、おかわりは今度にします!」
 店主の叔母さんに大声で言うと、パタパタと走って食堂を出た。ノエルの後ろ姿を見失わないように、早足で追いかけていく。曲がり角に入ったノエルに付いていくようにアオイも曲がった瞬間、ドンッと何かにぶつかった

「あっ、えっと……。こ、こんにちは……」
「まだおはようの時間だよ」
 目の前にいるノエルにあわてふためきながら挨拶をするアオイに、ノエルがため息混じりに返事をすると、アオイが少し恥ずかしそうに顔を背け両手を胸の前に置いてぎゅっとつかんだ
「話ししたくても、今は話せないよ。それに、今一緒に居たら、もう会えなくなるから一旦帰って」
 会って早々、帰るように言われ悲しげな顔でノエルを見た
「話しは今度聞くから。ほら、早く帰って」
「……またね」
 バタバタと走って帰っていくアオイ。すぐに足音が人混みに消えて聞こえなくなると、ノエルも学校へと向かうため一歩踏み出した時、今度はメアがノエルの前に突然現れた

「ノエルちゃん、こんにちは」
「まだおはようの時間ですけれど……」
「ああ、そうね」
 ノエルの返事を聞いてノアがクスクスと笑う。その笑う姿にノエルはムッとした表情になった
「それで、私になにか用事ですか?」
「ええ、ちょっと大変なことになってね。あなたの記憶を管理している魔術師達の魔力が大分無くなってきたようで、管理が出来ないと騒いでいるのよ」
 ノエルの質問に、ため息混じりに答えるメア。その様子がノエルにはわざとらしく見えて、ノエルも不機嫌そうに、ため息をついて聞き返した
「記憶といっても基本は食べて寝てばかりの記憶だから別に無くなっても……」
 そうノエルが言った時、メアの後を追いかけていた魔術師達がノエルを囲うように現れた
「あなたは良くても、大人の世界じゃそれはダメなのだから、ちょっと付いてきてくれる?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...