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19. 今日も綺麗な月のまま
しおりを挟む「今日も月が綺麗だねぇ。魔力もとても感じるし、私みたい」
青い髪がそよ風でユラユラと小さく揺らし、満月の夜空に手を伸ばしクスクスと笑うその姿をノエルが呆れたようにため息をついた
「ちょっと自画自賛が過ぎるんじゃない?」
「だってこの世界では私が一番強いってノエルが言ってくれたでしょ?自画自賛でもいいじゃん」
「まあ、そっか」
返事を聞いたノエルが苦笑いをして、空を見上げた。少し雲に隠れた月のせいで、二人の間にほんの少し影が出来た
「ねぇ本当に良いの?」
「もちろん。これからが楽しみだね。見れないのが残念なくらいだよ」
そう言うと、隣にいるノエルから少し離れた。満月を背に、くるりと振り向くと、逆光で見えにくく なった微笑む姿を見たノエルが悲しげに顔をうつ向くと、頬に青く長い髪と顔を包むように手がノエルの頬にそっと触れた
「心配しないで、特別な魔術をかけておくから」
「夢か……」
そう呟きながらソファーからゆっくりと体を起こす。リビングの中を見渡すと、少し開いていたカーテンから月明かりが見えて、窓を開けた。そよ風がふわりと吹いて、リビングにあった本がパラパラとめくられた。ノエルがちらりと振り向いて、本がある方に振り向くと、足跡を立てないようにそーっと近づいていたアオイの足元が見えた
「起きたの?」
ノエルの隣に立ちコクリと頷くアオイ。ノエルの顔を見ようと上目遣いをした時、空が見えて嬉しそうにエヘヘと笑った
「今日、月が綺麗……」
雲一つもなく、眩い程の月明かりにアオイが目を輝かせ見ていると、ノエルがポツリと呟くように声をかけた
「ねぇ……」
ノエルの声を聞いて、アオイが微笑みながら振り向いた。だが、月明かりで見えたノエルの少し悲しげな顔を見てすぐうつ向いて胸の前に両手を置きぎゅっとつかんだ
「今、アオイの魔力はどう?」
「特には……変わらずで、私は元々魔力も魔術も得意じゃないので、それで……」
あたふたと答えていると、ずっとノエルが見つめていることに気づいて、ちらりと顔を見ると目線が合い、それを振り払うように何度も顔を横に振った
「ごめんなさい、失礼します!」
バタバタと足音をたてて寝室へと走っていったアオイ。バタンと勢いよく寝室の扉が閉まる音が聞こえると、ノエルがため息をつきながら、また夜空を見上げた
「月が綺麗だってさ。もしもアオイが教えたんなら、ちょっとだけ意地悪だね」
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