クローバーホリック

シャオえる

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29. もう少し、思い出を紡いで

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「何を見たと言われても、初めて見た夢から、もう大分経っているから……」
 お菓子を頬張りながら、少し顔を傾けて、夢の内容を思い出すミツバ。テーブルには食べ終えたお菓子の袋がたくさん積まれている
「夢で見たのは、サクラだけなの?」
 キッチンから追加のお菓子を持ってきたユリが問いかけると、どっさりとテーブルにお菓子を置いた。そのお菓子に手を伸ばしながら、またミツバが夢の内容を思いだし、悩みはじめた
「いえ、みなさんもいたような……。今日見たサクラさんのお母さんも見た気がしますが……内容が……」
 ナツメ達に少し慣れてきたのか、朝よりも三人の顔を見て話をするミツバ。だが、その後は特に会話もなく、黙々とお菓子を食べ続け、追加で持ってきたお菓子も半分ほど食べ終えた頃、ふと、ミツバがナツメ達三人に声をかけた

「みなさん以外に、本を書いている人はいるのですか?」
「今はいない。私達だけ……」
 ミツバの質問に答えるように、ツバキがポツリと呟いた
「少し前まではいたけど……書かなくなったの」
「まあ、書けなくなったが正しいけどね」
 ユリとナツメも交互にそう返事をすると、昔を思い出して二人が少し苦笑いをしていると、ミツバがまた質問をしてきた
「あの、みなさんが本を書くのはどうして……」
「アルノさんに頼まれたから」
「サクラも困っていたからね。本を書くのに苦労してたから」
 恐る恐る質問したミツバにユリとツバキが答えると、全部無くなりそうなお菓子を探し取りながら、ツバキがミツバに話しかけた
「ミツバ、いつもサクラと一緒にいて本を書いていたんだよ」
「そうそう。サクラの分も書くって言って、毎日たくさん本を持って飛び回っていたのに……」
「私が?いつから?」
「私達が本を書きはじめる、ずっと前から」
「そうなの?」
 三人の話に驚き、少しでも思い出そうと、一人頭を抱え悩みはじめたミツバ。だが、しばらく待っても全く思い出せない様子にナツメが、はぁ。とため息ついた

「まあ、サクラの分も無理矢理書いていた結果が忘れたとかなら分かるけど……」
「そうじゃなさそうだよね……なんとなく」
 と、ユリが苦笑いで話返していると、結局思い出せなかったミツバが、ガバッと顔を上げ、ナツメ達の顔をキョロキョロと見渡した
「もう少し、話を聞かせてください」
 三人に、ペコリと少し頭を下げるミツバ。すると、ナツメが立ち上がりミツバにコップを渡すと、手を引いて無理矢理立たせた。急な出来事に驚くミツバ。それでも、ナツメは手を引いて、一緒にキッチンの方へと歩きはじめた
「いいよ、話してあげる。その代わり、もう少しお茶とお菓子を食べてからにしようっか」
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