クローバーホリック

シャオえる

文字の大きさ
62 / 67

62. 楽しみはもう少し後で

しおりを挟む
「……はぁ」
「ナツメ、ため息つく暇ないよ。急いで片付けなきゃ」
 サクラの家で大掃除をしているナツメとユリ。やる気のないナツメの大きなため息が、リビングに響いて、ユリが注意をしても、ナツメの動きは鈍い
「んー。分かってるけどさぁ……。ここに気に入ってたのになぁ……」
「仕方ないよ。アルノさんが戻ってこいっていうんだもん」
 二人が話をしていると、お風呂掃除が終わったツバキもリビングに入ってきた。散らかっているリビングの中を掻き分けて、ソファーに座って、ふぅ。と一息ついて、飲み物を飲みはじめた。それを見たナツメもツバキの隣に座って一緒に飲み物を飲みはじめ、三人休憩がてらの会話がはじまった

「みなさん、休憩をされていますが、片付けは進んでるのですか?」
 楽しく会話が進んでいた途中、突然聞こえてきた声に、一瞬で楽しい雰囲気から緊迫した表情に変わっていくナツメ達。恐る恐る声のする方に振り向くと、家政婦達がまだ散らかっているリビングを見て呆れた様子でため息をついていた
「は、はい。一応……」
 苦笑いで答えるナツメ。だが、その答えを聞いて家政婦達の表情が余計に険しくなっていく
「……少しも進んでいないようですが」
 と言うと、側にある荷物を運びはじめた家政婦達。それを見てナツメとユリが慌てて掃除を再開しはじめた。玄関に荷物を運ぶ家政婦達をツバキが慌てて追いかけていった
「あの、サクラはどうしていますか?」
 不安そうな表情で家政婦達に問いかけるツバキにその不安を拭うように、家政婦達がクスッと笑って質問に答えた
「サクラ様は今……」





「はい。どうぞ」
 コンコンと部屋の扉の叩く音にアルノが返事をした。カチャと音を鳴らして、扉が開くと少し疲れているのか、ちょっとだけうつ向いているサクラが部屋に入ってきた
「あらサクラ。お菓子作りはどうしたの?」
「今、生地を焼いてて、少し時間が出来たから……」
「そう。サクラのお菓子は久し振りだから、楽しみね」
 機嫌よく椅子に座りなおすアルノ。その様子を少しうつ向いて見ていたサクラが、部屋の中をキョロキョロと見渡しはじめた。アルノの周りにはたくさんの本棚が並ぶ。だが、その本棚には、たくさんあったはずの本は一冊も無く、ほんの前とは違う殺風景な部屋に変わってる
「本は……」
「ミツバちゃんが来るまで秘密」
 クスッと笑ってサクラの話に誤魔化していると、アルノがクンクンと鼻を動かした
「あら、美味しそうな匂いしてきたわね」
「……もう出来たのかな」
 慌てて部屋を出てキッチンへ走っていくサクラ。後ろ姿をニコニコと笑って見ているアルノ。パタンと部屋の扉が閉じると、扉偽を向けると、ふぅ。と一つため息をついた。すると、アルノの前に一冊の本が現れた。その本をそっと手に取ると、次々とアルノの周りに新たな本が現れると、アルノを包み込むように、ゆっくりと周りを動きはじめた




「よし出来た……」
 アルノの動きに気づいていないサクラは、オーブンからお菓子を取り出して、美味しそうに焼き上がったお菓子を見て、ホッと胸を撫で下ろしお皿に盛り付けていた。作りすぎたお菓子を食堂までどう運ぼうか悩んでいると、キッチンの側の廊下をパタパタと足音が聞こえてきた
「サクラ。お菓子どう?出来た?」
 声が聞こえて振り向くと、美味しそうな匂いに誘われてキッチンに来たツバキとユリが機嫌良さげにサクラに声をかけた
「ちょうど今出来たよ」
 と、サクラが答えるとたくさんの美味しそうなお菓子がテーブルに並んでいる光景を見て、ユリとツバキのテンションが上がっていく
「出来立て食べる!」
 つまみ食いをしようと、今出来たばかりのお菓子にツバキが手を伸ばす
「ダメだよ。出来立てが美味しいけど、我慢してね」
 慌ててお皿を取り上げて、つまみ食いを阻止したサクラ。食べられずツバキが少しふてくされていると、パタパタとまたキッチンに来る足音が聞こえてきた

「……サクラ、ミツバは?」
 キッチンに来るなりナツメがサクラに問いかけた。だが、サクラはただ微笑むだけで何も答えずに、お菓子を盛り付けはじめた。明るかったキッチンが急に静かになって、ツバキとユリが目を合わせ困っていると、サクラが三人にお菓子を盛り付けたお皿を渡しはじめた
「……食堂に持っていこう。お母さんも食べるのを楽しみに待っているから……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...