シンフォニー・レイ

101. 後悔してでも、幸せならば

「君のお母さんは、その親子の共鳴の話を聞いて悲しんだ。そして、悩みに悩んだ……。誰も話しかけられないほど……」
　ポツリポツリと語りだした自分の知らない母親の話に、更に戸惑うツミキ。一人うろたえている間も、話は進んでく
「そして、決めたんだ……。手放すことを……。一緒に居れば、何かの拍子で明日にでも、共鳴が起こるかもしれない。助けられるほどの力は無いと分かっているから」
　か細く悲しい声で話す内容に、シンクの服をギュッとつかんでいたシキが、ツミキ達をそーっと見る。ミオリに寄り添う二人を見つけて、思わず目をそらすと、顔を上げてシンクの顔を見る。その視線に気づいて、シキの気持ちが不安にならないようにシンクは優しく微笑む

「だから、ツミキは一人で暮らしていたの……」
「でも、私お母さんは死んじゃったって……」
　そんなシキ達の側では、話を聞いてカエデがツミキを見ていた。ツミキも不安げな顔でカエデを見ていると、カエデの言葉で止まっていた昔話が、再び始まりだす
「手放したあとは、毎日泣いて後悔した。でも、何も起こらず平和に暮らせるならと、言い聞かせていた」

「ミオリさん！大丈夫ですか？」
　突然、カエデが叫んだ。フラフラと倒れそうなミオリを支えていた
「ゼフドさん！救護はまだですか？ミオリさんが……！」
「着いているんだが……さっきの崩れた衝撃で、入り口が塞がれている。すまないが、もう少し待ってくれ」
　カエデの問いかけに答えているゼフドの周りでは、ツミキ達のいる建物に到着した護衛の連絡により、また慌ただしく動き出していた

「お姉さま……」
「大丈夫よ、シキ。私はいつもあなたと一緒……きっとお母様も同じ……」
　ポツリ小声で話すシキとシンクの話が聞こえたのか、悲しい表情で話しかける
「大切な娘達……。少し悲しい話をすることを許しておくれ」
「いえ、お父様。知らない話を聞けて嬉しいですわ……」
　そう話すシンクの後ろで、シキも小さく頷いている。その二人の側で、ミオリを支えているツミキとカエデに、また少しずつ近づきながら、今度はツミキ達に向かって話しかけていく
「それじゃあ、続きを話そうか……」