シンフォニー・レイ

100. その秘密は、みんなの願い

「幸か不幸か、その子は共鳴が起こったことは覚えていなかった。そこで、僕やゼフド、施設の上層部達は、ただの事故として処理したんだ。いつかその子供が、事故の事を聞いたり調べたりした時の為に。僕が事故として手配したからね。あの時のことは、よく覚えているよ……」
　淡々と話すその内容に身動き出来ずに、ただ聞き入るツミキ達。ゼフド達、指令室にいる隊員達も静かに聞き入っている

「そして、僕らにはちょうど、子供が生まれていたんだ。可愛くて愛しい娘が……。そんな僕らにとって、その共鳴の事故は予想外だった」
　ポツリポツリと話続けていると、突然ミオリがガクッとへたり込んだ。慌ててカエデがミオリの隣に寄り添う。うつ向いている姿に、戸惑うツミキやシキとシンク達の様子を見ても止むことなく話は続いてく

「明日、この子にも共鳴が起こるかもしれないと……絶望したよ。うたの力がある親と、力を持つ可能性がある子供の共鳴による暴走があるなんて、記録になかったからね」

「ゼフドさん……この話は……」
　ノア隊員がゼフドに問いかけても、無言で答えないまま、モニターを見続けている
「ルモカさん、嘘ですよね？こんな話、聞いたことないです」
　メルナもルモカに問いかけても、ゼフドと同じく無言で、モニターに映るツミキ達の様子を黙って見ている

「ミオリちゃんの未来のために、私達はこの件の事は極秘……他言無用とするにすると決めたの……」
　ゆっくり語り始めたルモカの話を、ゼフドがため息一つついて、ノア隊員の側から少し離れて、部屋の奥へと歩いていく。ルモカの話は、ツミキ達が付けているイヤホンにも聞こえて、戸惑いと驚きでツミキとカエデが、お互い目を合わせていた

「一人残されたミオリちゃん、生まれて間もなかったカエデちゃん……。二人のこれからの未来のために、私はあの子達を守ると決めたの……希望あるうたを唄い続けてほしいと願っていたから。それは、ツミキちゃんのお母さんも一緒……」
「私のお母さん……」
　ツミキがルモカの話に反応して言った言葉は、悲しく昔話を思い出していたその人を笑顔にした
「そう……。それじゃあ次は、君のお母さんの話をしようか」