アリアノート

29. 時には違う一日を

「アリア、いつまで眠るの？そろそろ起きない？」
　ミオが寝ているアリアの体をユラユラと体を揺らし起こす。何度揺らしても起きないアリアの体をだんだんと大きく揺らし続けていると、やっとアリアが目を覚まし、寝ぼけながらミオを見た
「あれ？今、何時？」
「もうお昼過ぎだよ。そろそろ起きて」
「えっ、お昼……。レポートお昼までに出さないといけなかったのに」
　ミオの言葉に驚いてガバッと体を起こし、部屋の中を見渡すと窓から眩しい光が入っていた
「もうムリだね。明日出したら？」
「そうするー……」
　力なくミオに返事をしながらまたベッドに倒れ布団を被った
「まだ眠るの？」
「うん。遅くまでレポート書いていたから。今日、レポートを出せないならもう少し眠る」
「本当は薬草作ってたんじゃないの？」
「違うよー。ちゃんと書いてたよ。途中までだけど」
　エヘヘと笑って言うアリアにミオもつられてフフッと笑い、顔まで布団を被り眠りに入ったアリアを見て、残していた食器の洗い物をするためにキッチンへと向かった




「アクア、何をしているの？」
　その頃、元に戻った稽古場でアクアが隣で浮かぶ本を睨んで立っていた。杖を持ち杖の先をトントンと地面に叩いて苛立ちを表すアクアにクリアが声をかけた
「術の練習をしたいけれど、うまく出来なくて。お父様に教えてもらいたいけれど、お父様はいるの？」
「さっき散歩に行ったみたいよ。教えてもらうのは後になるかな」
　ユーノが居ないと聞いて、少し残念そうに本をめくると、クリアも本を見て、アクアが練習をしていた魔術のページを読み、うんと一度頷いた
「私が使ってみる？」
「えっ、お母様が？」
　クリアの発言にアクアが驚いていると、本がふわふわと動きだし、クリアの隣に止まった。魔術をじっくりと読み確認すると、ふぅ。と一つ深呼吸をした。アクアや家政婦達がクリアの様子を見守る中、クリアの目の前に現れた魔術を唱えるための杖を手に持ち、コツンと地面に杖の先を当てた。杖の先の地面にクリアの魔方陣が現れ、アクアが出来なかった魔術を使いはじめた。魔方陣から出てくる風に髪の毛がヒラヒラと揺れて、アクアだけでなく、稽古場の入り口付近にいた家政婦や警備の人達もクリアに見とれて動けなくなった。魔術を唱え終えると、クリアの魔方陣や杖も消え、にこりと微笑んだクリアに、アクアがぎゅっと抱きついた


「お母様、スゴい！」
「まだまだアクアに負けなさそうね」
「お母様、対戦しよう！」
「仕方ないわね」
　グイグイと腕を捕まれ引っ張るアクアに困った顔をしつつも少し嬉しそうなクリア。少し歩いて稽古場の真ん中付近まで来ると、アクアがあれこれと使う魔術を指定しはじめた
「おや、珍しいな」
　ちょうど散歩から戻ってきたユーノが二人のやり取りを見て驚きつつも笑っていると、ニコニコとしていたアクアの表情が変わり険しくなり、ふぅ。と一つ深呼吸をした。一方、クリアは微笑んだままアクアを見ていると、トンっと杖の先を地面に鳴らしてアクアがクリアの方へと向かって飛びたした。それをニコニコと微笑みつつも避けたクリア。二人の対戦を家政婦達がハラハラとした様子で見ている中、その不安を払うようにユーノがクスクスと笑いながら一人呟いた
「アクアはまだ勝てないかもしれないだろうが、楽しく見させてもらうかな」