ストラグルガールズ

シャオえる

文字の大きさ
23 / 136

23. 記憶にある想い出の場所

しおりを挟む
「ない!ないっ!どこにもない!」
 朝も早くから、学園の役員室をガサゴソと探し回るサクナ。あっという間に部屋は本で埋め尽くされて、様子を生徒達が部屋の入り口で呆然と見ている
「サクナさん、どうしたんですか?」
「本がないの!昨日まではあったのに!」
 振り向くことなく探し続けながら返事をしたサクナの言葉を聞いて、周りにいた生徒達が目を合わせながら首をかしげた
「本?」
「まさかあの本が……」
「そうよ、アードルド学園の生徒会長しか持つことの出来ないあの本がないの!」
 と、サクナが廊下まで聞こえるほどの大声で叫ぶと、ちょうど役員室に行こうと階段を上っていたクリスにも聞こえて、足を止めた

「でもあの本は、サクナさんしか持つことが出来ないはずじゃ……」
 と、一人の生徒が呟くと、急にざわめきはじめた役員室。すると、サクナがくるりと勢いよく振り向き、近くにいた女子生徒に向かって睨みながら話しかける
「ミコトとノエルさんは?」
「さっき、休みで来てないと聞きましたが……」
 睨まれ答えられずにいた女子生徒の隣にいた生徒が恐る恐る答えると、その生徒の方にくるりと振り向いて、今度は入り口の方へとカツカツと足音をたてながら歩きだした
「二人を探しに行きましょう!勝手に持っていったのかもしれません!」
 そう言うと、バタバタと数名の生徒を引き連れ役員室から出ていったサクナ。残った生徒達がその後ろ姿を呆然と見ている



「そうか、本が勝手にか……」
 サクナ達の様子を階段で隠れて聞いていたクリスがクスッと笑い、階段をゆっくりと降りはじめた
「本の意思なら仕方ない。これからが大変になるな……」
 そうまた一人呟くと、授業開始のチャイムが学園に響き渡った



「ノエル!ちょっと待って!」
 その頃、出掛けてきたミコト達は、息を切らしながら走り続けるノエルを追いかけていた
「何で急に走り出したの?」
「知らないよ、ノエルに聞いて」
 ミコトやノアよりも大分遅れているナギとモカが、話をしながら追いかける。人混みを掻き分けながらどんどん進むノエル。建物の曲がり角を曲がり姿が見えなくなった。慌てたミコトがパンッと両手を合わせ叩くと一冊の本が現れた
「ノエルを探して!」
 本に向かってそう言うと、本がふわりと浮かび独りでにページがパラパラとめくられ、ふわふわと浮かんだままノエルの後を追うように動き出した




「……あれ?」
 その後も一人見知らぬ場所を走り続けていたノエルがたどり着いた場所は、学園から程近い公園の丘。天気も良く心地良いそよ風が吹いている
「やっと追いついた……」
 はぁ。と疲れた声がノエルの後ろから聞こえてきて振り向くと、疲れた顔をしたノエル達がいた
「相変わらずノエル、足早いね……」
 ナギと一緒にペタンと座り込むモカがエヘヘと苦笑いしながら話しかけるが、ノエルは返事をせず声がするまで見つめていた先をまた振り向き見つめだした
「どうしたの?」
 ミコトが優しく声をかけると、ノエルが辺りを見渡しながら首をかしげた
「ここに用事があった気がするんだけど……」
 そう少し不安げに話すノエルにミコトがぎゅっと抱きついた
「ここは、ノエルが好きな場所だったからねぇ」
 と、ミコトがクスッと笑ってそう言うと、そよ風がまた吹いて、ミコトの髪がノエルの顔に当たりぎゅっと目を閉じたその時、ミコトがノエルの手をつかんでグイッと少し強めに引っ張った
「行こう。今日はここに用事はないから、また今度ゆっくり来よう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...