ストラグルガールズ

シャオえる

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77. 止めた時間が動きはじめたら

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「ちょっと待って!私、対戦するなんて言ってないし、ミコト達にも影響が!」
 そう叫び慌てるノエルに対し、聞いていないのかニコニコと楽しそうに本を開いて読みはじめたモカ。そんな二人からクリスが少しずつ離れていく
「モカ、ちょっと待って!」
 ずっと呼び止める声も無視続けたモカがとあるページに目を止め、そのページに書かれた術を詠みはじめると、モカの周りに炎が現れ、そのまま炎と共にノエルに向かって飛んできた

「なんでこんな好戦的なの……」
 逃げても追いかけてくるモカに、戸惑うノエル。ちらりとナギ達を見るとまだ動かずにいた
「ノアは止まってる……。ミコトもナギも。また動かして、助けてもらうか、それとも……」
 と、どうしようか悩み少し移動していた速度が落ち、いつの間にか目の前にモカが立っていた。慌ててまた逃げようと背を向けたノエルに向かってモカが手を広げると、大量の炎がノエルに向かって飛んでいく。その炎こら逃げようにも逃げられないノエルが慌てて本を開くと、ノエルの周りに大量の水が現れ、一気に炎を消した


「ノエルさん、どうしますか?まだ戦います?」
「だから、対戦許可した覚えない……」
 遠くからクリスの問いかける声が聞こえ、少しイラついた様子で返事をしていると、ノエルの後ろに誰かが近づいてきた
「ノエル……」
 すぐ後ろから小声で名前を呼ばれ、驚き振り向くと、疲れた顔をしたノアが立っていた
「……ノア」
 体が動くノアを見て、胸を撫で下ろすノエル。そんな二人を見て、モカが少し首をかしげながら、本をパラパラとめくりはじめた
「あの人、本に載ってない人だ。どちら様でしょうか」
「ノエルさんのお友達ですよ。あの人も強い魔力の持ち主みたいですね」
「なら、せっかくなら一緒に対戦を」
 モカの疑問にクリスが答えると、ニコニコと嬉しそうな顔になったモカ。その笑顔を見て、ノアがこそっとノエルに問いかけた
「モカ、なんでいるの?」
「いや、それが大変なことになって……」
 ノアに説明をしようとしたその時、モカが二人に近づいてニコッと微笑み、ノエルが身構えた。そんな二人にノアが少し戸惑っているとモカがまたノエルに向かって手を広げると、今度は強風が吹き荒れ、二人ともぎゅっと目を閉じた
「ノア、ナギを!」
 ノエルの声に、薄目を開けて強風の中、ナギの所へとゆっくりと向かうノア。ノエルもゆっくりとミコトとサクナの所へ行き二人をぎゅっと抱きしめると、開いたままだった本がバタンと勢いよく閉じた。それと同時にモカが起こした風も止んだ

「……あれ?」
 風が止まりノエル達の所へ行こうとしていたモカが辺りを見渡すが、ノエル達の姿は見当たらず、モカの真下の地上では、またガヤガヤと騒がしく人々の声が聞こえはじめていた
「みなさん、どこに行ったんでしょうか……」
「どうやら帰ったみたいですね」
「えー、残念です……。もう少し戦いたかったのに」
 しょんぼりするモカに、クリスがクスッと笑って答えた
「大丈夫ですよ、きっとすぐにみなさん戻ってきますから」
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