デスパレートレアス

シャオえる

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85. 手遅れになるその前に

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「レアス、早く帰ろう。本がもう……」
 ぐいぐいとレアスの手を引っ張って、メルガの背中に乗せようとするツムギ。だが、すぐバッと手を振りほどかれてしまった
「まだ大丈夫。ここの部分は覚えているから」
「でも、本がないと術は発動しないんじゃ」
 濡れていく本をぎゅっと抱きしめるレアスの服も少し濡れていく。困ったツムギがまたレアスに何か言おうとした時、ポツリと誰かが呟いく声が聞こえてきた
「レアス。あなたのために……」
「……えっ?」
 ヒカリが言葉がツムギ達にも聞こえて、ヒカリがいる方に振り向くとツムギをニコッと笑っていた。その笑顔に一瞬、顔が強ばり足を一歩後退りしていると、肩に乗っていたルトが、突然力なくグラッと倒れてしまった
「ルト!」
 傍に倒れ落ちたルトを慌てて抱きしめるツムギ。何度も名前を呼んだり体を揺らしても、ルトはぐったりしたまま動かない
「ララもメルガも……どうしたの?」
 ふとララとメルガの方を見ると、ルトと同じくメルガやララも体を寄せ合い、力なくぐったりとしていた
「……お母様の魔術のせい」
 と、レアスがヒカリに目線を向けたまま呟くと、ツムギが不安げな顔をしてレアスを見た
「あの魔方陣を知っている。魔力を奪う術のためのもの」
「えっ、ルト達の魔力を奪っているの?」
「そうだと思う」
「そんな……。私、ルトがいないと魔術を使えないよ。メルガも辛そうだし、どうしよう……」
「私だって、ララがいないと……」
 と、ツムギの泣きそうな声が聞こえて、レアスがツムギに振り向くと、ルトと一緒にぎゅっと抱きしめている本に気づいた
「あなた、その本」
 と、大声でツムギを指差すレアスに、ツムギが驚いてバサッと本を落としてしまった。レアスがすぐに本を取り、パラパラと本の中を確認すると、ツムギに本を差し出した

「早くこの本を読んで!」
「え、でも……」
「この本も雨に濡れて本が読めなくなる前に、早く!」
「う、うん……」
 レアスの勢いに負けて、恐る恐る本を受け取ると、ルトをメルガに寄り添うララの隣にそっと置いて、ふぅ。と深呼吸をした
「ルト。苦しいだろうけど、頑張って」
 頭を撫でながらそう言うと、本を読みはじめるが、ページいっぱいに書かれた魔術にすぐ戸惑い困った顔になったツムギ。すぐに一ページ目を読むことを諦めて、取り敢えずページをめくり本の中身を確認していく

「えー……。滅茶苦茶難しい魔術……」
 学園でも習わないような難しすぎる魔術に、本を地面に置いて、じっくりと読みはじめたツムギ。すると、ヒカリもツムギを見て、ニコッと微笑むと持っていた本が、ふわりと浮かびページがめくられると、小さな  魔方陣が現れて、ヒカリがまたニコッと微笑むと目の前にいる小さなレアスに話しかけた
「この本と魔術はレアス、あなたのために……。必ず成功させるからね」
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