デスパレートレアス

92. 誰にも分からない思い

「ララはいないようね。ちょうど良いわ。魔力の調整をされたら、レアスの為にならないものね」
　ニコニコと話すヒカリの言葉をレアスが少しうつ向いて聞いている
「お母様……」
　ゆっくりと顔を上げながら、レアスがヒカリに声をかけると、一冊の本がふわりと浮かんで、レアスの側にパタンと落ちた
「ほら、レアス。その本を読むのよ」
「お母様。私、本を読んでも……」
「大丈夫、私と一緒だもの。失敗はしないわ」
　本を見つめ、ヒカリの話を聞いていたレアス。すると、本がふわりと浮かんで目の前でパラパラとページがめくられはじめた
「……分かりました。本を読みます」
「ありがとう。少し苦しいだろうけど頑張って」
　ヒカリの言葉を聞いて、レアスがふぅ。と一つ深呼吸をして、目の前に浮かぶ本にそっと手を伸ばし、本を取ろうとしているとヒカリの足元にあった本達がバラバラと凄い勢いでページがめくられだした
「頑張ってレアス。後少し……」
　ヒカリの足元に現れていた本が速度を上げて増えていく。そんな中、まだ本を手に取ろうとしていたレアスが少し本に触れた瞬間、バタンと倒れてしまった
「レアス！」
　倒れた瞬間、レアスの元に戻ってきたツムギが叫び、慌てて駆け寄り抱きしめた
「あら、ツムギちゃんも帰ってきてくれたの？」
　ツムギの声を聞いて嬉しそうにクスッと微笑むヒカリを一瞬見たツムギ。だが、すぐ目を背けて側で心配そうにレアスを見つめるメルガの背中を擦った　

「メルガ、レアスを……」
　ツムギがそう言いながら、レアスを床にゆっくりと置くと、寄り添うようにメルガも寝そべる。すると背中で休んでいたルトとララに気づいたレアスが、ゆっくりと体を起こし、まだ少しぐったりしているララをそっと抱きしめた
「うーん、ツムギちゃんね……。レアスとはあまり魔力が似ていないから、やっぱりさっきの本よりかは……」
　二人の様子を気にもせず、沢山の本を探りだすヒカリ。何冊か手に取り、険しい顔をして読みはじめた。そんなヒカリの姿を見てツムギが恐る恐る声をかけた
「あの、なんでこんなことを……」
「言ったでしょ？レアスのためよ」
　ツムギにニコッと微笑み本をパタンと音を立てて閉じたヒカリ。その音にツムギが一瞬ビクッと目を閉じた
「……でも、こんな苦しそうなのに、なんでレアスのためなの？」
「ツムギちゃんには分からないわ。この本と共に歩むということが……」
　と、ちょっと怒り気味に言い返していると、ツムギの後ろから、呆れたようにはぁ。とため息ついた音と足音が聞こえてきた。驚いて振り向くとリンがヒカリに聞こえるような声で、ため息まじりに声をかけた
「うーん、確かにそうかもしれませんが、こう面倒なことをするのはダメですね」