33 / 71
調味料と株式市場
33 因縁
しおりを挟む
エルマーの店の株価は上昇を続けていた。
理由はマクシミリアンとオットマーが買っているから。
そして、それを嗅ぎつけた貴族や市場参加者が加わり、上げ足を早めていた。
「株式の総数が少ないから、買うとすぐに値が上がってしまいますねえ」
ヨーナスは株を集めるのに苦労していた。
元々株券は100万株しか発行されておらず、時価総額も1億マルクしかない小型株だ。
これが船団を保有する海運会社などであれば、もっと簡単に買い集めが出来るのだが、過小資本の会社などあっという間に値上がりするし、簡単には売り物が出てこない。
既に買い集めの時期は終わろうとしていた。
マクシミリアンの計画ではもうすぐ株価を吊り上げにはいる。
既にオットマーも買い集めを始めており、売りが出ると強気で買ってきているのだ。
そして、値上がりを期待した他の株主は中々売りを出してこない。
仕手戦の肝は先ずは種株を如何に低い株価で仕込めるのかだ。
売り抜ける時にも建値が低ければ、値崩れを気にせず一気に売り抜けることができる。
しかし、仕入れ価格が高ければ、値崩れしないように最新の注意をはらいながらの売り抜けとなる。
今回はマクシミリアンの計画では売り抜けは心配しなくても良いのだが、利益に関わってくる。
元々時価総額が小さいので、塩相場のときのような資金が動く期待は小さい。
マクシミリアンからの注文を受ける手数料ビジネス以外に、自分も自己資金で手張りするのだが、利益を伸ばしたいので安く仕込みたいのであった。
「ヒンデンブルク様の資金力から考えたら、100億マルクは望めないでしょうね」
ヨーナスが調べたところでは、ヒンデンブルク家の資産はそんなに多くはない。
元々歴代の近衛騎士団長を排出してきた名門で、その功績を認められて侯爵の爵位を賜った。
領地は豊かとは言えず、ローエンシュタイン家やシェーレンベルク家と比べると資金力は劣っているのだ。
ヨーナスが買い占めに苦労しているのと同時刻、オットマーも株の買い集めに苦労していた。
もっとも、オットマーには近衛騎士としての仕事があり、マクシミリアン同様に市場に張り付いているわけにはいかない。
なので、株の買い付けは他の者に任せている。
それが、なんの因果かハーバーであった。
ブリュンヒルデと組んで塩の買い占めを画策したハーバーは、マクシミリアンに敗れて破産した。
しかし、王都で再起を図ろうとしていたのである。
シェーレンベルク家に顔を出すわけにもいかず、他の貴族をパトロンにと考えていたところ、ヒンデンブルク家の目に止まったのだった。
そして、エルマーの店の株を買いたいというオットマーの思惑から、ハーバーに仕事が与えられたのだった。
「復活の足がかりにさせてもらいますよ」
ハーバーはそうひとりごちる。
今はまだ商会を立ち上げておらず、オットマーから取引を任されて商会に注文を出している状態だ。
商会側もヒンデンブルク家がバックについているので、安心してハーバーの注文を受けている。
「ハーバーさん、既に株価は2,000マルクを超えてますよ。まだ買うんですか?」
商会の従業員がハーバーに確認をする。
「構わんよ。それがオットマー様の要望だからな。ただ、集まりが悪いよなあ。もっと売りが出ても良さそうなもんだが」
「うち以外にも買ってる連中が多いですからね。ちょっと無理に買いすぎたのか、注目を集めちゃいましたね。一週間で株価が倍になったのだから仕方ありませんが」
小型株に買いが集まったので、一気に株価が上がってしまった。
株価は上がってしまったが、経営権を握れる程の株券は集まっていない。
まだまだ買わなければならないのだが、このままではいくら使うかわからない。
オットマーは親に黙って株を買い集めているのはハーバーも知っていた。
オットマーも貴族の長男であるので、それなりに金は持っていた。
なので、ハーバーにも5億マルクの予算をつけてくれたのだ。
しかし、既にエルマーの店の時価総額は20億マルクを超えてしまった。
こうなると経営権を握るには5億マルクでは足りない。
さらなる資金をとなると、家の資金を使うことになるだろう。
今回の株の買い付けが、女性絡みであることはハーバーも知っていた。
それも、カール王子の婚約者ときている。
そんなものに金をつぎ込むのをヒンデンブルク侯爵が許可するとは思えない。
ない金を捻り出すにはどうすればよいか、それがハーバーの腕の見せ所であった。
そして、一度マクシミリアンに敗北して破産したとはいえ、ハーバーは百戦錬磨の老獪な相場師であり、その方法を知っていた。
「さて、さらなる買い増しには御主人様の許可が必要ですからね。いまの予算での買い増しをお願いしますよ。そのうち、貴方にはもっと大きな取引をお願いすることになりますからね」
「お待ちしておりますね」
従業員に笑顔で送り出され、ハーバーはヒンデンブルク家の屋敷に向かう。
オットマーが帰宅したら、次の手段に出るための許可をもうつもりだった。
そして、それが叶えばハーバーは復活できると考えていた。
「運が回ってきましたかね?」
ハーバーはニヤリと笑い、通りを歩いていく。
もう一度表舞台に立つ事を想像しながら。
理由はマクシミリアンとオットマーが買っているから。
そして、それを嗅ぎつけた貴族や市場参加者が加わり、上げ足を早めていた。
「株式の総数が少ないから、買うとすぐに値が上がってしまいますねえ」
ヨーナスは株を集めるのに苦労していた。
元々株券は100万株しか発行されておらず、時価総額も1億マルクしかない小型株だ。
これが船団を保有する海運会社などであれば、もっと簡単に買い集めが出来るのだが、過小資本の会社などあっという間に値上がりするし、簡単には売り物が出てこない。
既に買い集めの時期は終わろうとしていた。
マクシミリアンの計画ではもうすぐ株価を吊り上げにはいる。
既にオットマーも買い集めを始めており、売りが出ると強気で買ってきているのだ。
そして、値上がりを期待した他の株主は中々売りを出してこない。
仕手戦の肝は先ずは種株を如何に低い株価で仕込めるのかだ。
売り抜ける時にも建値が低ければ、値崩れを気にせず一気に売り抜けることができる。
しかし、仕入れ価格が高ければ、値崩れしないように最新の注意をはらいながらの売り抜けとなる。
今回はマクシミリアンの計画では売り抜けは心配しなくても良いのだが、利益に関わってくる。
元々時価総額が小さいので、塩相場のときのような資金が動く期待は小さい。
マクシミリアンからの注文を受ける手数料ビジネス以外に、自分も自己資金で手張りするのだが、利益を伸ばしたいので安く仕込みたいのであった。
「ヒンデンブルク様の資金力から考えたら、100億マルクは望めないでしょうね」
ヨーナスが調べたところでは、ヒンデンブルク家の資産はそんなに多くはない。
元々歴代の近衛騎士団長を排出してきた名門で、その功績を認められて侯爵の爵位を賜った。
領地は豊かとは言えず、ローエンシュタイン家やシェーレンベルク家と比べると資金力は劣っているのだ。
ヨーナスが買い占めに苦労しているのと同時刻、オットマーも株の買い集めに苦労していた。
もっとも、オットマーには近衛騎士としての仕事があり、マクシミリアン同様に市場に張り付いているわけにはいかない。
なので、株の買い付けは他の者に任せている。
それが、なんの因果かハーバーであった。
ブリュンヒルデと組んで塩の買い占めを画策したハーバーは、マクシミリアンに敗れて破産した。
しかし、王都で再起を図ろうとしていたのである。
シェーレンベルク家に顔を出すわけにもいかず、他の貴族をパトロンにと考えていたところ、ヒンデンブルク家の目に止まったのだった。
そして、エルマーの店の株を買いたいというオットマーの思惑から、ハーバーに仕事が与えられたのだった。
「復活の足がかりにさせてもらいますよ」
ハーバーはそうひとりごちる。
今はまだ商会を立ち上げておらず、オットマーから取引を任されて商会に注文を出している状態だ。
商会側もヒンデンブルク家がバックについているので、安心してハーバーの注文を受けている。
「ハーバーさん、既に株価は2,000マルクを超えてますよ。まだ買うんですか?」
商会の従業員がハーバーに確認をする。
「構わんよ。それがオットマー様の要望だからな。ただ、集まりが悪いよなあ。もっと売りが出ても良さそうなもんだが」
「うち以外にも買ってる連中が多いですからね。ちょっと無理に買いすぎたのか、注目を集めちゃいましたね。一週間で株価が倍になったのだから仕方ありませんが」
小型株に買いが集まったので、一気に株価が上がってしまった。
株価は上がってしまったが、経営権を握れる程の株券は集まっていない。
まだまだ買わなければならないのだが、このままではいくら使うかわからない。
オットマーは親に黙って株を買い集めているのはハーバーも知っていた。
オットマーも貴族の長男であるので、それなりに金は持っていた。
なので、ハーバーにも5億マルクの予算をつけてくれたのだ。
しかし、既にエルマーの店の時価総額は20億マルクを超えてしまった。
こうなると経営権を握るには5億マルクでは足りない。
さらなる資金をとなると、家の資金を使うことになるだろう。
今回の株の買い付けが、女性絡みであることはハーバーも知っていた。
それも、カール王子の婚約者ときている。
そんなものに金をつぎ込むのをヒンデンブルク侯爵が許可するとは思えない。
ない金を捻り出すにはどうすればよいか、それがハーバーの腕の見せ所であった。
そして、一度マクシミリアンに敗北して破産したとはいえ、ハーバーは百戦錬磨の老獪な相場師であり、その方法を知っていた。
「さて、さらなる買い増しには御主人様の許可が必要ですからね。いまの予算での買い増しをお願いしますよ。そのうち、貴方にはもっと大きな取引をお願いすることになりますからね」
「お待ちしておりますね」
従業員に笑顔で送り出され、ハーバーはヒンデンブルク家の屋敷に向かう。
オットマーが帰宅したら、次の手段に出るための許可をもうつもりだった。
そして、それが叶えばハーバーは復活できると考えていた。
「運が回ってきましたかね?」
ハーバーはニヤリと笑い、通りを歩いていく。
もう一度表舞台に立つ事を想像しながら。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる