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第18話 例え適正は無いとても
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薬草の採取は地下2階層にあった。
ここであれば危険なモンスターに遭遇する可能性も低い。
そこまでの道中は、コンパーノが前衛として進んだ。
危険な罠など無いとは思うが、念の為俺も斥候の作業標準書で罠と索敵をしてみる。
自分でできるようになると、他人のあらがよく見える。
コンパーノは斥候としては未熟で、このまま深い階層に潜るようであれば、確実に命を落とすことになるだろう。
なんとか考えを改めさせないといけないな。
危なっかしいコンパーノの後ろ姿を見ながら進んでいたら、薬草が生えている場所に到達した。
「さて、この辺で採取を済ませてしまいましょうか」
改心させるきっかけがないままだが、俺は採取することにした。
「そうだな」
コンパーノも薬草を採取し始める。
このままだと何も無いまま終わってしまう。
何か話しかけないと。
そこで思いついたのが、
「コンパーノはどうして冒険者になろうと思ったんだ?」
「父さんに憧れていたからだ。その父さんが冒険の最中に命を落としたんだ。返ってきたのはこのショートソードだけ。だから俺はこのショートソードで冒険者として成功したいんだ」
「そうか。ジョブは剣士?」
「いや、運搬人だ」
形見のショートソードで冒険をしたいので、剣士に拘っているのか。
気持ちは判らないでもない。
「アルトはどうして冒険者なんてやっているんだ」
「俺のジョブじゃまともな仕事なんて出来ないからな。この世界に必要とされていないんだよ」
「確かに、品質管理なんてジョブは初めて聞いたよな。あ、気を悪くしないでくれよ」
大丈夫、そんなことを気にするのは2000年前に通過した。
「そんな俺からしてみたら、コンパーノがなんでわざわざ適正のない剣士として身を立てようとしているのかが判らないよ。運搬人でも冒険者として活躍できるじゃないか」
運搬人のスキルにアイテムボックスというのがある。
こいつは簡単に言えば、四次元ホ○ケットだ。
迷宮の中でゲットした素材や鉱石などをどれだけでも持ち帰ることができる。
それなので、上級のパーティーには運搬人は欠かせない存在だ。
「父さんが到達出来なかった金等級の冒険者に、俺はこのショートソードを使って上り詰めたいんだ。だから剣士じゃないと駄目なんだ。今は採取のクエストしか出来ないかも知れないけど、いつか地下100階層にだって到達できる冒険者になってやる」
空を見上げて、拳を強く握りしめる。
亡き父にでも誓っているのだろう。
眩しい……
こんな眩しい若者を説得するのは難しいな。
挫けるということを知らないかもしれない。
ほら、若さって振り向かないことさってよく言うじゃない。
もうこうなったら、コンパーノの事を理解して、パーティーを組んでくれる冒険者を見つける方がいいんじゃないか?
「――ん?」
俺がギルド長からの依頼を諦めかけていた時である、俺は周囲の異変に気がついた。
しまった、コンパーノとの会話に集中していて、周囲への気配りが出来ていなかったな。
迷宮蟻の群れに囲まれてしまった。
「コンパーノ、囲まれたぞ」
「え?」
コンパーノはまだ気がついていなかった。
俺がショートソードを抜いて構えると、コンパーノも同じ様に構えた。
迷宮蟻程度、この前の作業標準書があれば怖いことなど無い。
だが、俺がここで迷宮蟻を倒してしまってもよいのだろうか?
そんな事をしてしまったら、コンパーノが適正ジョブが無くてもやっていけると勘違いしないだろうか。
迷っている間にも、俺達を囲む包囲網は狭まってきていた。
「くるぞ!」
「うわあああああ」
コンパーノが目の前の迷宮蟻に向かって走り出した。
パニックになったか?
「あ、待って。飛び出すな!」
俺は慌ててコンパーノを追う。
コンパーノは型も何もなく、只闇雲にショートソードを振り回す。
後ろにいる俺も斬られそうで近寄れない。
そんな適当に振り回すだけでも、やはり刃物というのは武器である。
目の前の迷宮蟻はショートソードの一撃で、その頭部をかち割られた。
緑の血が噴き出して、コンパーノを頭から染める。
「うっ」
返り血が目に入り、コンパーノが怯んだ。
他の迷宮蟻はそれを見逃さず、コンパーノへと襲いかかる。
俺は咄嗟に飛び出して、襲いかかってきた迷宮蟻の頭を斬り飛ばした。
コンパーノはそれを見て呆然とする。
「ぼさっとしているな、次が来るぞ」
俺はそんな彼を叱咤した。
数分後、辺りは俺達に倒された迷宮蟻の死骸が転がっていた。
コンパーノはやはり戦力にはならず、殆ど俺が倒した。
体中が返り血でベトベトしていて気持ち悪い。
早くお家に帰りたいぞ。
「どうした、顔が青いぞ」
見ればコンパーノは顔から血の気が引いている。
数分前は死を覚悟していたのだから当然か。
生き残ったことでエンドルフィン分泌されてないかな?
この世界の人類に神経伝達物質があるのか知らないけど。
「――死ぬかと思った」
「一人なら死んでいただろうな」
そう俺が言うと黙ってしまった。
押すならここか。
「お父さんを越える冒険者になりたいという夢はわかる。でも、途中で死んじゃったら意味がないだろ。ソロで迷宮に潜るにはそれなりの技量が必要だ。今回の事でわかったんじゃないかな?」
「うっ……」
よし、怯んだな。
もう一押しだ。
「人には神から与えられたジョブがある。それをうまく使いこなす事で、神が与えた試練を乗り越えていくのが人生だろ。お父さんだって、コンパーノが剣士として成功するのを望んでいたわけじゃないだろ。運搬人だって立派なジョブだ。それを伸ばして金等級になってもいいんじゃないか」
まあ自分で言っておいてなんだが、神が俺に与えた試練は大きすぎる。
一度、どんな意図があって、品質管理なんてジョブをギフトしてくれたのか聞いてみたい。
さて、俺の事はいいとして、目の前のコンパーノは黙って俯いている。
「なに、ショートソードは運搬人でも装備していて問題ないだろ。前衛が戦闘不能になったら、自分の身を守らなきゃならないんだから」
それを聞いたコンパーノは黙ったままで頷いた。
これで納得してくれたならいいのだが。
その後薬草採取を続け、コンパーノが運搬人のスキルを使って、かなりの量を持ち帰る事になった。
薬草を冒険者ギルドで買い取ってもらい、報酬を二人で分け終えたところで、臨時パーティーを解散してコンパーノと別れた。
時間もかなり遅くなってしまったので、今日は仕事をしないで帰ろうと思ったところで、シルビアが物凄い勢いでこちらにやってきた。
「アルト、なんであんた護衛も付けずに迷宮に潜っているのよ!」
「薬草採取の簡単なお仕事だったから」
「適性のないあんたの事だから、どっかでモンスターに囲まれたら死んじゃうでしょ。ちょっとは考えなさいよ」
おや、心配してくれていたのかな。
そうだ、コンパーノだって心配してくれている人がいるんだ。
彼もその事に気が付いてくれたらいいな。
シルビアに胸倉をつかまれて、前後にガクガクと振られて、シェイクされる頭でそんな事を考えていた。
後日、コンパーノが他の冒険者とパーティーを組んでいるのを見かけた。
ギルド長に報告すると、彼は非常に満足そうに頷いた。
――品質管理の経験値+1,050
いつもの声が頭の中に響く。
今回の事が品質管理に関係するのか?
いや、考えようによっては、作業者のミスを事前に防いだとも考えられるな。
だからこそ、いつもよりも経験値も多いのかもしれない。
俺はいつものように自分の席に座ってコーヒーを飲みながら、仲間とどのクエストに挑戦するかを相談しているコンパーノを見つめていた。
アルトのステータス
品質管理レベル14
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
スキルの使い道は未定。
ここであれば危険なモンスターに遭遇する可能性も低い。
そこまでの道中は、コンパーノが前衛として進んだ。
危険な罠など無いとは思うが、念の為俺も斥候の作業標準書で罠と索敵をしてみる。
自分でできるようになると、他人のあらがよく見える。
コンパーノは斥候としては未熟で、このまま深い階層に潜るようであれば、確実に命を落とすことになるだろう。
なんとか考えを改めさせないといけないな。
危なっかしいコンパーノの後ろ姿を見ながら進んでいたら、薬草が生えている場所に到達した。
「さて、この辺で採取を済ませてしまいましょうか」
改心させるきっかけがないままだが、俺は採取することにした。
「そうだな」
コンパーノも薬草を採取し始める。
このままだと何も無いまま終わってしまう。
何か話しかけないと。
そこで思いついたのが、
「コンパーノはどうして冒険者になろうと思ったんだ?」
「父さんに憧れていたからだ。その父さんが冒険の最中に命を落としたんだ。返ってきたのはこのショートソードだけ。だから俺はこのショートソードで冒険者として成功したいんだ」
「そうか。ジョブは剣士?」
「いや、運搬人だ」
形見のショートソードで冒険をしたいので、剣士に拘っているのか。
気持ちは判らないでもない。
「アルトはどうして冒険者なんてやっているんだ」
「俺のジョブじゃまともな仕事なんて出来ないからな。この世界に必要とされていないんだよ」
「確かに、品質管理なんてジョブは初めて聞いたよな。あ、気を悪くしないでくれよ」
大丈夫、そんなことを気にするのは2000年前に通過した。
「そんな俺からしてみたら、コンパーノがなんでわざわざ適正のない剣士として身を立てようとしているのかが判らないよ。運搬人でも冒険者として活躍できるじゃないか」
運搬人のスキルにアイテムボックスというのがある。
こいつは簡単に言えば、四次元ホ○ケットだ。
迷宮の中でゲットした素材や鉱石などをどれだけでも持ち帰ることができる。
それなので、上級のパーティーには運搬人は欠かせない存在だ。
「父さんが到達出来なかった金等級の冒険者に、俺はこのショートソードを使って上り詰めたいんだ。だから剣士じゃないと駄目なんだ。今は採取のクエストしか出来ないかも知れないけど、いつか地下100階層にだって到達できる冒険者になってやる」
空を見上げて、拳を強く握りしめる。
亡き父にでも誓っているのだろう。
眩しい……
こんな眩しい若者を説得するのは難しいな。
挫けるということを知らないかもしれない。
ほら、若さって振り向かないことさってよく言うじゃない。
もうこうなったら、コンパーノの事を理解して、パーティーを組んでくれる冒険者を見つける方がいいんじゃないか?
「――ん?」
俺がギルド長からの依頼を諦めかけていた時である、俺は周囲の異変に気がついた。
しまった、コンパーノとの会話に集中していて、周囲への気配りが出来ていなかったな。
迷宮蟻の群れに囲まれてしまった。
「コンパーノ、囲まれたぞ」
「え?」
コンパーノはまだ気がついていなかった。
俺がショートソードを抜いて構えると、コンパーノも同じ様に構えた。
迷宮蟻程度、この前の作業標準書があれば怖いことなど無い。
だが、俺がここで迷宮蟻を倒してしまってもよいのだろうか?
そんな事をしてしまったら、コンパーノが適正ジョブが無くてもやっていけると勘違いしないだろうか。
迷っている間にも、俺達を囲む包囲網は狭まってきていた。
「くるぞ!」
「うわあああああ」
コンパーノが目の前の迷宮蟻に向かって走り出した。
パニックになったか?
「あ、待って。飛び出すな!」
俺は慌ててコンパーノを追う。
コンパーノは型も何もなく、只闇雲にショートソードを振り回す。
後ろにいる俺も斬られそうで近寄れない。
そんな適当に振り回すだけでも、やはり刃物というのは武器である。
目の前の迷宮蟻はショートソードの一撃で、その頭部をかち割られた。
緑の血が噴き出して、コンパーノを頭から染める。
「うっ」
返り血が目に入り、コンパーノが怯んだ。
他の迷宮蟻はそれを見逃さず、コンパーノへと襲いかかる。
俺は咄嗟に飛び出して、襲いかかってきた迷宮蟻の頭を斬り飛ばした。
コンパーノはそれを見て呆然とする。
「ぼさっとしているな、次が来るぞ」
俺はそんな彼を叱咤した。
数分後、辺りは俺達に倒された迷宮蟻の死骸が転がっていた。
コンパーノはやはり戦力にはならず、殆ど俺が倒した。
体中が返り血でベトベトしていて気持ち悪い。
早くお家に帰りたいぞ。
「どうした、顔が青いぞ」
見ればコンパーノは顔から血の気が引いている。
数分前は死を覚悟していたのだから当然か。
生き残ったことでエンドルフィン分泌されてないかな?
この世界の人類に神経伝達物質があるのか知らないけど。
「――死ぬかと思った」
「一人なら死んでいただろうな」
そう俺が言うと黙ってしまった。
押すならここか。
「お父さんを越える冒険者になりたいという夢はわかる。でも、途中で死んじゃったら意味がないだろ。ソロで迷宮に潜るにはそれなりの技量が必要だ。今回の事でわかったんじゃないかな?」
「うっ……」
よし、怯んだな。
もう一押しだ。
「人には神から与えられたジョブがある。それをうまく使いこなす事で、神が与えた試練を乗り越えていくのが人生だろ。お父さんだって、コンパーノが剣士として成功するのを望んでいたわけじゃないだろ。運搬人だって立派なジョブだ。それを伸ばして金等級になってもいいんじゃないか」
まあ自分で言っておいてなんだが、神が俺に与えた試練は大きすぎる。
一度、どんな意図があって、品質管理なんてジョブをギフトしてくれたのか聞いてみたい。
さて、俺の事はいいとして、目の前のコンパーノは黙って俯いている。
「なに、ショートソードは運搬人でも装備していて問題ないだろ。前衛が戦闘不能になったら、自分の身を守らなきゃならないんだから」
それを聞いたコンパーノは黙ったままで頷いた。
これで納得してくれたならいいのだが。
その後薬草採取を続け、コンパーノが運搬人のスキルを使って、かなりの量を持ち帰る事になった。
薬草を冒険者ギルドで買い取ってもらい、報酬を二人で分け終えたところで、臨時パーティーを解散してコンパーノと別れた。
時間もかなり遅くなってしまったので、今日は仕事をしないで帰ろうと思ったところで、シルビアが物凄い勢いでこちらにやってきた。
「アルト、なんであんた護衛も付けずに迷宮に潜っているのよ!」
「薬草採取の簡単なお仕事だったから」
「適性のないあんたの事だから、どっかでモンスターに囲まれたら死んじゃうでしょ。ちょっとは考えなさいよ」
おや、心配してくれていたのかな。
そうだ、コンパーノだって心配してくれている人がいるんだ。
彼もその事に気が付いてくれたらいいな。
シルビアに胸倉をつかまれて、前後にガクガクと振られて、シェイクされる頭でそんな事を考えていた。
後日、コンパーノが他の冒険者とパーティーを組んでいるのを見かけた。
ギルド長に報告すると、彼は非常に満足そうに頷いた。
――品質管理の経験値+1,050
いつもの声が頭の中に響く。
今回の事が品質管理に関係するのか?
いや、考えようによっては、作業者のミスを事前に防いだとも考えられるな。
だからこそ、いつもよりも経験値も多いのかもしれない。
俺はいつものように自分の席に座ってコーヒーを飲みながら、仲間とどのクエストに挑戦するかを相談しているコンパーノを見つめていた。
アルトのステータス
品質管理レベル14
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
スキルの使い道は未定。
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