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第24話 ロストテクノロジー火花試験
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俺の前に太幼女がいた。
「うちの人を説得して下さい」
そう訴えるのは、デボネアさんの細くない細君だ。
なんでも、鍛冶で材質が違うのに気が付かず、鍛えた剣が納品して直ぐに折れてしまったそうだ。
剣が折れただけなら、使用者の腕が悪いんじゃないかと思ったが、相手は青銅等級の剣士であり、技能が不足しているということはないんだとか。
冒険の最中に簡単に折れてしまい、命を落とす可能性もあったため、デボネアさんは責任を感じて、仕事を辞めると言っているのだとか。
困った細君が俺の所に相談に来たというわけだ。
「アルト、あんたなら解決できるんでしょ」
一緒に聞いていたシルビアが無責任に言う。
材質間違いなら、俺が選別するなら間違いないのだが、それをすると毎回俺が材質確認をすることになる。
そもそも、どうしてデボネアさんが材質を間違ったのだろうか。
「ここは現物の確認をしてみないとですね」
俺と細君とシルビアはデボネアさんの店に向かった。
デボネアさん本人は昼から酒を飲んで引きこもっているそうだ。
気持ちは判るぞ。
俺も前世で散々失敗した時は酒に逃げたからな。
異世界でもお目にかかれるとは思わなかった。
デボネアさんに若干の同情を覚えつつ、何ができるだろうかと向かう道すがら考えていた。
そうこうしているうちに、デボネアさんの店に到着する。
臨時閉店しているので、客は店の中にはいなかった。
店の中に入ると、カウンターで酒を飲んでいるデボネアさんがいた。
とても酒臭い。
「あんた、アルトとシルビアが来てくれたよ」
「あーん?もういいんだ」
無気力に答えるデボネアさん。
それにシルビアが切れた。
「歯ぁ食いしばれ!」
ゴキャっという鈍い音がして、デボネアさんが吹っ飛ぶ。
シルビアが思いっきり殴ったのだ。
俺はハラハラしたが、細君も当然という顔なので、この世界では普通のことでいいのかな?
頬をおさえつつデボネアさんが立ち上がる。
「随分と腑抜けたものね」
シルビアが彼を睥睨する。
「ワシのせいで人が死ぬ所だったんじゃ、責任を感じてしまってな」
「あんたが仕事をしなかったら、刃こぼれしたままで冒険をしなきゃいけない人がでてくるのよ」
シルビアにそう言われると、デボネアさんは黙ってしまった。
いざそうなったら、俺が刃を研ぐんだろうな。
「長年鍛冶屋として仕事をしていながら、材質間違いに気が付かないんだから、引退時だと思ったんだよ」
「本当に間違ったの?」
「ああ、売ったショートソードがそこに買い戻してある。ポッキリと折れてるだろ。レイピアじゃないんだから、新品がそんなに簡単に折れるわけがない。ワシのミスだよ」
「ちょっと見せていただけますか」
折れたショートソードを手にとって確認する。
破断面には塑性変形からの破断に至った事を示す波模様があった。
確かに新品なので、靱性が低くて簡単に折れてしまったのだろう。
だとすると、化学成分が通常の材料と違ったのだろうか。
ここは新規に取得したスキルの【蛍光X線分析】の出番だな。
俺は折れたショートソードと自分のショートソードをカウンターに並べて、その成分を分析した。
どうやら元素は地球のそれと一緒らしい。
この世界特有のオリハルコンとかだと、どうなっていたか判らなかったが、一先ず分析できて安心した。
「こちらのショートソードは炭素が多いですね」
俺は分析結果を伝えた。
デボネアさん以外は不思議な顔をする。
「鋼を作るのに木炭を鉄に混ぜるんですよ。木炭の量が多ければ固くなるけど、その代わり折れやすくなるんです。今回折れたショートソードは前にここで俺が作ったショートソードに比べて、木炭の量が多いから折れたというわけですね」
「叩けばわかりそうなもんじゃが、どうして見逃したのかのう……」
確かにそれは疑問だ。
毎日同じ材料を使っていれば、異材が混入しても発見できる。
ベテランの加工者になると、同じ規格の材料でも、メーカーの違いを見分けるくらいに、金属加工職人は材質に敏感なのだ。
ひょっとして……
「店にある最近作った武器、防具を教えてもらえますか。できれば作った順番に」
俺はデボネアさんにお願いして、店に残っていた武器と防具の材質を調べた。
新しいものから徐々に遡っていくと、炭素量が次第に減っていくのが判った。
つまり、意図的に炭素量を増やしていったのだ。
少しずつなので、デボネアさんも気が付かなかったのだろう。
さて、こちらは後回しにするとして、材質間違いの対策だな。
俺は紙に部品と組立図を書き始める。
それを作成できるかデボネアさんに聞いてみた。
「これがどう役に立つかはわからんが、作ることは可能じゃよ」
「わかりました。完成したら呼んで下さい。使い方を説明します」
そう約束して、一先ずデボネアさんの店を出る。
ここからはシルビアに相談だな。
「デボネアさんの店に金属を卸している業者が怪しい。今からそいつに話を聞きに行こうと思うんだが、一緒に来てくれるかい?」
「もちろんよ。あんた一人だと心配だからね」
シルビアは二つ返事で同行してくれることになった。
向かった先はソレント商会。
商会とはいうが、個人商店である。
店内にはソレントがいた。
「いらっしゃい。何をお探しですか」
ソレントは俺達を客だと思って対応してくる。
「実はデボネアさんの所に収めているインゴットの件で聞きたいことがあるんですよね」
俺がそう言うとあからさまに動揺する。
やはり判ってやっていたって事だな。
「その様子だと、インゴットの材質を毎日少しずつ変えて納品していたようですね」
「な、何のことだ?」
「しらばっくれても駄目ですよ。私には材質鑑定のスキルがあるんですから。貴方が知っていながら異材を納品したと言いふらすこともできるんですよ」
俺がそう言うと、ソレントは観念したように全てを話してくれた。
「新しい冒険者ギルドが鍛冶屋もやるっていうの」
シルビアが驚く。
やはりそんな事だろうと思った。
デボネアさんに嫌がらせをして得をする冒険者などいない。
ソレント商会にしたって、客であるデボネアさんを陥れても、売上が減るからメリットがないのだ。
ならば、メリットが有るのはどういう事か。
それを考えれば、商売敵が現れるということに簡単にたどり着く。
「交換条件があったのでしょう」
「新しい鍛冶屋へのインゴットの独占卸しだ」
「こいつを衛兵に突き出して、新しい冒険者ギルドの悪事を糾弾しましょう」
シルビアが提案してくるが、それは無理だろうな。
「どうせその条件を出した相手が、本当に冒険者ギルドの職員だという証拠が無いのでしょう」
「ああ」
俺の予想をソレントが肯定した。
やはりな。
「アルト、どうするのよ」
「どうにもならないな。糾弾するだけの証拠もない。デボネアさんにこれからはまともな物を納品してもらいたいが、一度こうやって不正を働いたんだ。信用できないね」
「インゴットが無ければ仕事が出来ないじゃない」
「それは俺がなんとかするよ」
「できるの?」
「さしあたっての材料は俺が作る。先々はギルド長にお願いして、ギルドと付き合いのある業者を選定してもらうよ」
そう、俺には【ブロックゲージ作成】スキルがある。
文字通りブロックゲージを作成することができるのだが、ブロックゲージの材質を指定できるのだ。
これなら、ばね鋼だろうがゲージ鋼だろうが自由に作り出せるのだ。
それでもいつまでも俺がブロックゲージを作り続ける訳にもいかないので、正規の調達ルートを確保してもらうのだ。
ソレントから迷惑料をふんだくり、それをデボネアさんに届けに行ったが、受け取りを拒否されたため、シルビアと分けることにした。
デボネアさんからしたら、今回の俺達の仕事料という事らしい。
それにしても、ソレントが犯人だと知った時のデボネアさんは少し寂しそうな顔をしたな。
信じていた人に裏切られたからか。
後味悪く店を後にする。
「折角だし、この金でご飯でも食べて帰ろうか」
「そうね」
その日はシルビアと食事をして帰った。
後日デボネアさんから俺の図面通りのものが完成したと言われたので、再び店を訪れた。
そこでブロックゲージを作成して、組み上がった機械の動作確認を行う。
機械はグラインダーだ。
足踏み旋盤の主軸部分に砥石を付けてあり、ペダルを踏むことでそれが回転するのだ。
空運転してみると、非常にスムーズに動く。
ここいら辺の技術は流石だな。
そこに俺が作ったインゴットと、ソレントから仕入れたインゴットを当てる。
火花が飛び散るのだが、化学成分が違うので、発生した火花も形が違う。
「これは火花試験といって、火花の形で材質が判るのです」
「確かに、二つのインゴットから出る火花の形が違うのう」
デボネアさんが食い入るように見る。
この火花試験は昭和の頃は現場で材質を確認するために行われていたが、近年では蛍光X線分が主流だ。
判断できるようになるまで時間がかかるのと、判断を間違った時のリスクが大きいため、今どきは流行らない。
火花で材質が判るベテランの職人もどんどん引退している。
俺だって研修の時に一度確認方法を学んだだけで、実際の業務で使用することは無かったな。
まさか異世界で使うことになるとは思いもしなかった。
「当面の材料は俺が作りますが、その後はギルドが紹介するところから仕入れて下さい。インゴットは作業前に今のように火花を確認するようにお願いします。それと、砥石が回転しているので、刃を研ぐのも楽になるでしょう」
「何から何まですまんな」
デボネアさんが俺に頭を下げてくれた。
こちらも秘伝の鍛冶を教えてもらっているのだ、お互い様だろう。
それに、グラインダーが出来たことで、旋盤も作成できることが判った。
いよいよこの世界にも加工機械が誕生するのだ。
俺のスキルが活きる可能性が出てきたぞ。
――品質管理の経験値+5,300
――品質管理のレベルが16に上がりました
おお、今回は随分と経験値が入ったな。
何が原因なのだろうか。
それにしても、今回のことで冒険者ギルドもサプライチェーンを確認しておく必要があるな。
嬉しそうにグラインダーのペダルを踏むデボネアさんを見ながら、相手の妨害工作にどう備えるべきかを考えていた。
アルトのステータス
品質管理レベル16
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
蛍光X線分析
シックネスゲージ作成
ブロックゲージ作成
ピンゲージ作成
品質偽装
※作者の独り言
今どき火花試験なんて見たこと無いですよね。
70歳以上の職人が使っているくらいです。
僕も出来ませんw
「うちの人を説得して下さい」
そう訴えるのは、デボネアさんの細くない細君だ。
なんでも、鍛冶で材質が違うのに気が付かず、鍛えた剣が納品して直ぐに折れてしまったそうだ。
剣が折れただけなら、使用者の腕が悪いんじゃないかと思ったが、相手は青銅等級の剣士であり、技能が不足しているということはないんだとか。
冒険の最中に簡単に折れてしまい、命を落とす可能性もあったため、デボネアさんは責任を感じて、仕事を辞めると言っているのだとか。
困った細君が俺の所に相談に来たというわけだ。
「アルト、あんたなら解決できるんでしょ」
一緒に聞いていたシルビアが無責任に言う。
材質間違いなら、俺が選別するなら間違いないのだが、それをすると毎回俺が材質確認をすることになる。
そもそも、どうしてデボネアさんが材質を間違ったのだろうか。
「ここは現物の確認をしてみないとですね」
俺と細君とシルビアはデボネアさんの店に向かった。
デボネアさん本人は昼から酒を飲んで引きこもっているそうだ。
気持ちは判るぞ。
俺も前世で散々失敗した時は酒に逃げたからな。
異世界でもお目にかかれるとは思わなかった。
デボネアさんに若干の同情を覚えつつ、何ができるだろうかと向かう道すがら考えていた。
そうこうしているうちに、デボネアさんの店に到着する。
臨時閉店しているので、客は店の中にはいなかった。
店の中に入ると、カウンターで酒を飲んでいるデボネアさんがいた。
とても酒臭い。
「あんた、アルトとシルビアが来てくれたよ」
「あーん?もういいんだ」
無気力に答えるデボネアさん。
それにシルビアが切れた。
「歯ぁ食いしばれ!」
ゴキャっという鈍い音がして、デボネアさんが吹っ飛ぶ。
シルビアが思いっきり殴ったのだ。
俺はハラハラしたが、細君も当然という顔なので、この世界では普通のことでいいのかな?
頬をおさえつつデボネアさんが立ち上がる。
「随分と腑抜けたものね」
シルビアが彼を睥睨する。
「ワシのせいで人が死ぬ所だったんじゃ、責任を感じてしまってな」
「あんたが仕事をしなかったら、刃こぼれしたままで冒険をしなきゃいけない人がでてくるのよ」
シルビアにそう言われると、デボネアさんは黙ってしまった。
いざそうなったら、俺が刃を研ぐんだろうな。
「長年鍛冶屋として仕事をしていながら、材質間違いに気が付かないんだから、引退時だと思ったんだよ」
「本当に間違ったの?」
「ああ、売ったショートソードがそこに買い戻してある。ポッキリと折れてるだろ。レイピアじゃないんだから、新品がそんなに簡単に折れるわけがない。ワシのミスだよ」
「ちょっと見せていただけますか」
折れたショートソードを手にとって確認する。
破断面には塑性変形からの破断に至った事を示す波模様があった。
確かに新品なので、靱性が低くて簡単に折れてしまったのだろう。
だとすると、化学成分が通常の材料と違ったのだろうか。
ここは新規に取得したスキルの【蛍光X線分析】の出番だな。
俺は折れたショートソードと自分のショートソードをカウンターに並べて、その成分を分析した。
どうやら元素は地球のそれと一緒らしい。
この世界特有のオリハルコンとかだと、どうなっていたか判らなかったが、一先ず分析できて安心した。
「こちらのショートソードは炭素が多いですね」
俺は分析結果を伝えた。
デボネアさん以外は不思議な顔をする。
「鋼を作るのに木炭を鉄に混ぜるんですよ。木炭の量が多ければ固くなるけど、その代わり折れやすくなるんです。今回折れたショートソードは前にここで俺が作ったショートソードに比べて、木炭の量が多いから折れたというわけですね」
「叩けばわかりそうなもんじゃが、どうして見逃したのかのう……」
確かにそれは疑問だ。
毎日同じ材料を使っていれば、異材が混入しても発見できる。
ベテランの加工者になると、同じ規格の材料でも、メーカーの違いを見分けるくらいに、金属加工職人は材質に敏感なのだ。
ひょっとして……
「店にある最近作った武器、防具を教えてもらえますか。できれば作った順番に」
俺はデボネアさんにお願いして、店に残っていた武器と防具の材質を調べた。
新しいものから徐々に遡っていくと、炭素量が次第に減っていくのが判った。
つまり、意図的に炭素量を増やしていったのだ。
少しずつなので、デボネアさんも気が付かなかったのだろう。
さて、こちらは後回しにするとして、材質間違いの対策だな。
俺は紙に部品と組立図を書き始める。
それを作成できるかデボネアさんに聞いてみた。
「これがどう役に立つかはわからんが、作ることは可能じゃよ」
「わかりました。完成したら呼んで下さい。使い方を説明します」
そう約束して、一先ずデボネアさんの店を出る。
ここからはシルビアに相談だな。
「デボネアさんの店に金属を卸している業者が怪しい。今からそいつに話を聞きに行こうと思うんだが、一緒に来てくれるかい?」
「もちろんよ。あんた一人だと心配だからね」
シルビアは二つ返事で同行してくれることになった。
向かった先はソレント商会。
商会とはいうが、個人商店である。
店内にはソレントがいた。
「いらっしゃい。何をお探しですか」
ソレントは俺達を客だと思って対応してくる。
「実はデボネアさんの所に収めているインゴットの件で聞きたいことがあるんですよね」
俺がそう言うとあからさまに動揺する。
やはり判ってやっていたって事だな。
「その様子だと、インゴットの材質を毎日少しずつ変えて納品していたようですね」
「な、何のことだ?」
「しらばっくれても駄目ですよ。私には材質鑑定のスキルがあるんですから。貴方が知っていながら異材を納品したと言いふらすこともできるんですよ」
俺がそう言うと、ソレントは観念したように全てを話してくれた。
「新しい冒険者ギルドが鍛冶屋もやるっていうの」
シルビアが驚く。
やはりそんな事だろうと思った。
デボネアさんに嫌がらせをして得をする冒険者などいない。
ソレント商会にしたって、客であるデボネアさんを陥れても、売上が減るからメリットがないのだ。
ならば、メリットが有るのはどういう事か。
それを考えれば、商売敵が現れるということに簡単にたどり着く。
「交換条件があったのでしょう」
「新しい鍛冶屋へのインゴットの独占卸しだ」
「こいつを衛兵に突き出して、新しい冒険者ギルドの悪事を糾弾しましょう」
シルビアが提案してくるが、それは無理だろうな。
「どうせその条件を出した相手が、本当に冒険者ギルドの職員だという証拠が無いのでしょう」
「ああ」
俺の予想をソレントが肯定した。
やはりな。
「アルト、どうするのよ」
「どうにもならないな。糾弾するだけの証拠もない。デボネアさんにこれからはまともな物を納品してもらいたいが、一度こうやって不正を働いたんだ。信用できないね」
「インゴットが無ければ仕事が出来ないじゃない」
「それは俺がなんとかするよ」
「できるの?」
「さしあたっての材料は俺が作る。先々はギルド長にお願いして、ギルドと付き合いのある業者を選定してもらうよ」
そう、俺には【ブロックゲージ作成】スキルがある。
文字通りブロックゲージを作成することができるのだが、ブロックゲージの材質を指定できるのだ。
これなら、ばね鋼だろうがゲージ鋼だろうが自由に作り出せるのだ。
それでもいつまでも俺がブロックゲージを作り続ける訳にもいかないので、正規の調達ルートを確保してもらうのだ。
ソレントから迷惑料をふんだくり、それをデボネアさんに届けに行ったが、受け取りを拒否されたため、シルビアと分けることにした。
デボネアさんからしたら、今回の俺達の仕事料という事らしい。
それにしても、ソレントが犯人だと知った時のデボネアさんは少し寂しそうな顔をしたな。
信じていた人に裏切られたからか。
後味悪く店を後にする。
「折角だし、この金でご飯でも食べて帰ろうか」
「そうね」
その日はシルビアと食事をして帰った。
後日デボネアさんから俺の図面通りのものが完成したと言われたので、再び店を訪れた。
そこでブロックゲージを作成して、組み上がった機械の動作確認を行う。
機械はグラインダーだ。
足踏み旋盤の主軸部分に砥石を付けてあり、ペダルを踏むことでそれが回転するのだ。
空運転してみると、非常にスムーズに動く。
ここいら辺の技術は流石だな。
そこに俺が作ったインゴットと、ソレントから仕入れたインゴットを当てる。
火花が飛び散るのだが、化学成分が違うので、発生した火花も形が違う。
「これは火花試験といって、火花の形で材質が判るのです」
「確かに、二つのインゴットから出る火花の形が違うのう」
デボネアさんが食い入るように見る。
この火花試験は昭和の頃は現場で材質を確認するために行われていたが、近年では蛍光X線分が主流だ。
判断できるようになるまで時間がかかるのと、判断を間違った時のリスクが大きいため、今どきは流行らない。
火花で材質が判るベテランの職人もどんどん引退している。
俺だって研修の時に一度確認方法を学んだだけで、実際の業務で使用することは無かったな。
まさか異世界で使うことになるとは思いもしなかった。
「当面の材料は俺が作りますが、その後はギルドが紹介するところから仕入れて下さい。インゴットは作業前に今のように火花を確認するようにお願いします。それと、砥石が回転しているので、刃を研ぐのも楽になるでしょう」
「何から何まですまんな」
デボネアさんが俺に頭を下げてくれた。
こちらも秘伝の鍛冶を教えてもらっているのだ、お互い様だろう。
それに、グラインダーが出来たことで、旋盤も作成できることが判った。
いよいよこの世界にも加工機械が誕生するのだ。
俺のスキルが活きる可能性が出てきたぞ。
――品質管理の経験値+5,300
――品質管理のレベルが16に上がりました
おお、今回は随分と経験値が入ったな。
何が原因なのだろうか。
それにしても、今回のことで冒険者ギルドもサプライチェーンを確認しておく必要があるな。
嬉しそうにグラインダーのペダルを踏むデボネアさんを見ながら、相手の妨害工作にどう備えるべきかを考えていた。
アルトのステータス
品質管理レベル16
スキル
作業標準書
作業標準書(改)
ノギス測定
三次元測定
マクロ試験
振動試験
電子顕微鏡
塩水噴霧試験
引張試験
硬度測定
蛍光X線分析
シックネスゲージ作成
ブロックゲージ作成
ピンゲージ作成
品質偽装
※作者の独り言
今どき火花試験なんて見たこと無いですよね。
70歳以上の職人が使っているくらいです。
僕も出来ませんw
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