冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
53 / 439

第52話 計測間違いを防ごう

しおりを挟む
 その日はミゼットが俺を呼びに来た。

「エランがまた失敗して、親方に怒られているの」
「またか」

 俺はミゼットに袖を引かれて、ポーション生産部門にやってきた。
 見るとエランが親方に怒られている。
 取り敢えず訳を聞いてみよう。

「どうしました」
「アルトか。またエランがミスをしてよ」
「どんなミスですか」
「鍋に入れるマンドラゴラの量を間違えたんだよ。2キロ入れるところが少なくて、効果が薄いポーションが大量に出来ちまったんだ」
「ふむ」

 話を聞くと、原料の配分を間違ったということか。
 何故間違ったのかは本人に聞いてみないとわからないな。

「エラン、ちょっといいか。どうして間違ったのか教えて欲しい。親方は席を外して下さい」
「わかったよ」

 親方は察してくれて、どこかへ行ってくれた。
 エランが萎縮して本当のことを言えないかもしれないからな。

「エラン、まずは標準作業を教えてくれないか」
「標準作業?」
「いつもの作業ってことだよ」
「マンドラゴラを箱から出して、天秤に乗せて2キロになったら鍋に入れるんだ」
「どうして2キロにならないで、鍋に入れたんだい?」
「天秤が安定していないのに、2キロだと勘違いして天秤の皿からマンドラゴラを下ろしたんだよ」
「成程ね」

 2キロだと勘違いしたのは天秤が動いている内に判断してしまったからなのか。
 そして、次工程に流出したのは、2キロ未満でも皿からおろせたと。

「いつも失敗ばかりで、親方には怒られっぱなし。もう故郷に帰ろうかと思うんだ」
「エランのバカ!」

 弱気な発言をするエランをミゼットが叱った。
 小さな女の子に怒られて、エランが目を丸くしている。

「ミゼットの言う通りだよ。失敗して逃げていたら成長しないぜ」

 俺もエランに言う。

「でも、俺失敗ばかりしているから……」
「失敗してしまう環境にも問題があるのさ。まあ、暫くは仕事を続けて見ようじゃないか。その間にミスしないような仕組みを作ってみせるよ」

 そう約束して、エランの辞職を思いとどまらせた。
 そして、その日はそこまでで終わる。

「とはいってもなー。電子部品の無いこの世界でどうやってポカヨケを作ろうか」

 俺は自分の席で悩んでいた。
 重量間違いであれば、電子秤に連動したインターロックが有ればいい。
 が、そんな物がどこにもないのだ。
 困ったね。

「上皿天秤ならなんとかなるかな?」

 なんとなくイメージが湧いたのは、上皿天秤を使ったポカヨケだ。
 早速デボネアに相談してみよう。
 急いでデボネアの店に向かう。

「こんなイメージなんだけど、なんとかなりそうかな?」
「まあ、問題ないじゃろ。皿が水平になったら、皿を固定している爪が外れればええんじゃろ」
「はい」

 俺はポカヨケの大まかなデザインを書いた紙をデボネアに手渡し、ポカヨケの作成を依頼した。
 明日には完成するというので、また明日ここに来る約束をする。
 そして翌日。

「出来たぞ」
「早速試させてもらいますね」

 2キロのブロックゲージを2個スキルで作成し、一つを片側の皿に乗せる。
 そして、反対の皿がロックされるのを確認した。
 今度はロックされた皿にブロックゲージを乗せる。
 皿が下がることで、ロックしていた爪が解除される。

「ロックが見事に解除されましたね」
「当然じゃよ。それから、皿を取ろうとするとまたロックされてしまうから、反対の皿の下につっかえ棒を用意しておいた」
「これですね」

 つっかえ棒で皿が下がるのを防ぐわけだ。
 よく出来ているな。
 本当は2キロ以上乗せないような対策もしたかったのだが、流石にそこまでは考えつかなかった。

「じゃあ、早速これを冒険者ギルドに持っていくよ。代金はここに置いておくからね」
「あいよ」

 俺は出来たばかりのポカヨケを持って、冒険者ギルドのポーション生産部門に向かった。
 そこでは今日も従来の天秤を使って、エランが重量を計測していた。

「エラン、こいつを使ってみてくれ」
「これは?」
「2キロになったら皿のロックが外れて、取り外せるようになる装置だよ。こうやって使うんだ」

 俺はエランの前でポカヨケの使い方を実演してみせた。

「おお、これなら2キロ未満で鍋に入れることはなさそうだ」
「そうだろう」
「ありがとう、アルト。これでもう親方に怒鳴られなくて済むよ」
「そうそう、2キロ以上乗せるのは防げないからな」
「ええ、じゃあ間違っちゃうじゃないか」

 おいおい、そこまでは面倒見きれないよ。
 と言ってしまうのも可哀想か。
 どんなプワワーカーがやっても不良が発生しない環境が理想だ。
 エランがプアワーカーでいいのかとも思うが。

「ロボットみたいなのが有ればいいんだけどな」
「なんだそのロボットっていうのは」

 ポカヨケを見ていた親方が訊いてきた。
 そうか、ロボットなんて無いものな。
 この世界に在るもので例えるならなんだろう?

「ゴーレムみたいなものかな」

 と俺は答えた。

「ゴーレムなら賢者の学院で研究している奴がいたと思うぞ」
「本当ですか!?」

 親方から意外な言葉が返ってきた。
 ゴーレム研究者がいるのか。
 上手く行けば産業用ロボットみたいなのが作れるかもしれないな。

「まあ、奴らはちょっと変わっているからな。誰かの紹介がないと面会出来ないと思うぞ」
「そうかー。まあ希望が持てたので、あとはなんとかします」

 賢者の学院については、ギルド長にでも相談してみようか。
 気になることがもう一つ、ミゼットがこの職場で親方のサブみたいな動きをしているのが気になる。
 俺を呼びに来たのも、自分の判断だというし、エランの辞職を思いとどまらせていたり、他の職員への指示を出していたりと、まだジョブが判明していない子供なのに、既にここを仕切っている感じだ。
 遠くない将来、ここの責任者になっていそうだな。

※作者の独り言
重量計で重さを測ったから大丈夫と思いがちですが、測る行為を間違うこともあるので、全ての重量計にインターロックを設置していただきたいですね。
規定重量で解除されるやつが欲しい。
多品種少量生産だと、難しいとは思いますが。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...