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第86話 自責と他責
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フラットバーのねじれを叩いて直す作者です。
現在時刻は深夜0時。
作りなおしたほうが安いのだけど、なんで僕に修正させるんでしょうかね?
かれこれ4時間叩いてやっと真っ直ぐになってきました。
まだ5本あるんだけど……
という経験のある作者がおくる品質管理ファンタジー。
それでは本編いってみましょう。
「アルトさん、郵便です」
またこのパターンか。
水島に対しては何もやってないぞ。
これで文句を言われたら、完全に誤解か逆恨みだな。
俺は受け取りのサインをすると、手紙を開封して中を見た。
「なんだ、カレンか」
カレンからの手紙には、今王都で人気の演劇があるから、ぜひ見に来いというものだった。
わざわざ手紙を出すほど面白いのか。
その演劇というのが、俺が原案でオーリスが執筆している『アストラ・バモスの大予言』って奴なので、わざわざ見に行かなくてもいいかなと思っている。
ストーリーは「MR2」の二人がアストラ・バモスが残した予言による、人類の滅亡を回避しようとするものだ。
女性調査員のスカラーと男性調査員のモルディーの恋愛も絡めて、大人気となっているのだが……
色々とごめんね……
さて、今日は食堂の迷宮鮟鱇の肝が美味しかったなと、昼の感想をシルビアと会話していたら相談者がやってきた。
「カイエンとナイトロじゃないか」
「実は相談がありまして」
二人が相談に来た内容なのだが、どうやら迷宮鮟鱇を倒すときに、ナイトロの矢が一番高価な肝の部分にあたってしまい、買取価格が下がってしまったということらしい。
正直そんな物を俺の所に相談に来られてもというのはあるが、悲しいけどこれ相談なのよね。
ちょうどよくシルビアも居ることだし、迷宮鮟鱇の肝を傷つけない倒し方を教えてもらおう。
「シルビア、迷宮鮟鱇の肝を傷つけない倒し方を教えてあげてほしい」
「わかったわ。でもその前にどうやって傷をつけたのか見てみたいわ」
「さっき、買取部門に買い取ってもらったばかりなので、ギャランがまだ持っていると思います」
カイエンがそう言うので、みんなで買取部門へと向かった。
「ああ、まだ残っているよ。業者が来たら売っちまうから、あんまり長くは見せられんがな」
ギャランは俺達を買い取ったあん肝のある場所に案内してくれた。
「ほら、こいつだよ」
「これって、随分と傷がついているわね」
「ひでぇだろ。こいつらには傷が酷いから安くなるって言ってやったんだよ」
ギャランとシルビアがあん肝を見ながら会話する。
「ナイトロの矢があたったから、買取価格が下がったんですよね」
カイエンがナイトロを非難する。
が、どうもそれは間違いのようだ。
「は?違うぞ。肝の切り取り方が酷くて価値が下がっているんだ。矢の傷なんて小さくて料理しちまえば気にならなくなるだろ。迷宮鮟鱇の体から肝をバラすときに、傷つけたから駄目なんだ」
ギャランが買取価格が下がった理由を説明した。
「そうよ。こんな下手な解体はないわね」
シルビアも追い打ちをかける。
そうするとカイエンの顔が青くなる。
「そんな……」
つまりはナイトロは無罪だったと。
「じゃあ、解体したカイエンが悪かったんじゃねーかよ」
ナイトロ、激おこである。
最初の目的から少し変わってきたな。
「ごほん」
俺はわざとらしく咳払いをする。
「えー、カイエン。不具合を見つけた時は、まずは自責を疑うべきです。君の作業は最終工程であり、そこで傷を付ける可能性がある以上は、まずそこを疑いましょう。そこで傷を付ける可能性がなければ、その時初めて前工程を疑って、不具合の検証を行うように」
「――はい」
これはよくあることだ。
人間誰しも自分の責任など認めたくないし、不具合があるとまず他人を疑う。
だが、やらなければならないのは自分の作業において、その不具合を作っていないかを確認することだ。
前工程を攻めてみたら何の問題もなく、よくよく調べてみたら自分のところで傷をつけていたなんてことは沢山ある。
寸法不良だと完成品メーカーから言われて調べてみたら、他社の類似品を間違って払い出しており、それをサプライヤーの責任にしようとしていたなんてのもあったな。
作ってもいない製品で、対策書を書けと言われて困ったもんだ。
どんなに弊社の製品ではないと説明しても、間違った寸法で類似品を作ったと言われては、こちらも対処のしようがない。
メイド・イン・ジャパンの幻想だな。
なので、経験からもカイエンのしたことはよくわかる。
特にギャランの言い方も勘違いさせるようなものであったのだろう。
ま、悪くないのに責められたナイトロは可哀想だがな。
「ナイトロ」
カイエンは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と冒険する資格さえ無いのだ。殴れ。」
セリヌンティウスじゃなかったナイトロは、買取部門の倉庫いっぱいに響くほど強くカイエンの頬を殴った。
折れた歯が床に落ちる。
「やるじゃないか。じゃあ、次は俺の番だな」
そういって拳を振りかぶるカイエン。
「え、なんで俺が殴られるの?」
驚く様子のナイトロ。
そりゃそうだ。
別にナイトロはカイエンが妹の結婚式を見届けるまでの身代わりになったわけではない。
一方的に疑われていた身だ。
殴られる意味がわからない。
その後、俺、シルビア、ギャラン、ナイトロからこっぴどく叱られたカイエンは、人を疑う前にまずは自分を疑うようになったのである。
めでたしめでたし。
.
.
.
.
.
いや、そうじゃない。
迷宮鮟鱇から肝を商品価値を損なわないように解体する方法の確認だ。
「迷宮鮟鱇の肝は右胸付近にあるから、こうして腹を縦に捌いてだな。この時あんまり刃を深くまでいれないのがコツだ」
ギャランがあん肝を使って説明してくれる。
迷宮鮟鱇は海に住んでいる鮟鱇と違って、ろっ骨がしっかりとしているから、吊るし切りをする必要がない。
まあ、陸上で生息しているのだから当然だな。
いや、ファンガスやスライムはちがうな。
流石異世界だ、地球の常識が通用しない。
俺がそんなことを考えているうちに、ギャランによる迷宮鮟鱇の解体のレクチャーが終了した。
そして、俺の作業標準書に迷宮鮟鱇の解体が加わることとなったのである。
※作者の独り言
自責を認めず、他責にしようとすると真の対策にはならないのですが、どうなんでしょうかね〇〇さん。
○○は誰もが知っている自動車メーカーです。
現在時刻は深夜0時。
作りなおしたほうが安いのだけど、なんで僕に修正させるんでしょうかね?
かれこれ4時間叩いてやっと真っ直ぐになってきました。
まだ5本あるんだけど……
という経験のある作者がおくる品質管理ファンタジー。
それでは本編いってみましょう。
「アルトさん、郵便です」
またこのパターンか。
水島に対しては何もやってないぞ。
これで文句を言われたら、完全に誤解か逆恨みだな。
俺は受け取りのサインをすると、手紙を開封して中を見た。
「なんだ、カレンか」
カレンからの手紙には、今王都で人気の演劇があるから、ぜひ見に来いというものだった。
わざわざ手紙を出すほど面白いのか。
その演劇というのが、俺が原案でオーリスが執筆している『アストラ・バモスの大予言』って奴なので、わざわざ見に行かなくてもいいかなと思っている。
ストーリーは「MR2」の二人がアストラ・バモスが残した予言による、人類の滅亡を回避しようとするものだ。
女性調査員のスカラーと男性調査員のモルディーの恋愛も絡めて、大人気となっているのだが……
色々とごめんね……
さて、今日は食堂の迷宮鮟鱇の肝が美味しかったなと、昼の感想をシルビアと会話していたら相談者がやってきた。
「カイエンとナイトロじゃないか」
「実は相談がありまして」
二人が相談に来た内容なのだが、どうやら迷宮鮟鱇を倒すときに、ナイトロの矢が一番高価な肝の部分にあたってしまい、買取価格が下がってしまったということらしい。
正直そんな物を俺の所に相談に来られてもというのはあるが、悲しいけどこれ相談なのよね。
ちょうどよくシルビアも居ることだし、迷宮鮟鱇の肝を傷つけない倒し方を教えてもらおう。
「シルビア、迷宮鮟鱇の肝を傷つけない倒し方を教えてあげてほしい」
「わかったわ。でもその前にどうやって傷をつけたのか見てみたいわ」
「さっき、買取部門に買い取ってもらったばかりなので、ギャランがまだ持っていると思います」
カイエンがそう言うので、みんなで買取部門へと向かった。
「ああ、まだ残っているよ。業者が来たら売っちまうから、あんまり長くは見せられんがな」
ギャランは俺達を買い取ったあん肝のある場所に案内してくれた。
「ほら、こいつだよ」
「これって、随分と傷がついているわね」
「ひでぇだろ。こいつらには傷が酷いから安くなるって言ってやったんだよ」
ギャランとシルビアがあん肝を見ながら会話する。
「ナイトロの矢があたったから、買取価格が下がったんですよね」
カイエンがナイトロを非難する。
が、どうもそれは間違いのようだ。
「は?違うぞ。肝の切り取り方が酷くて価値が下がっているんだ。矢の傷なんて小さくて料理しちまえば気にならなくなるだろ。迷宮鮟鱇の体から肝をバラすときに、傷つけたから駄目なんだ」
ギャランが買取価格が下がった理由を説明した。
「そうよ。こんな下手な解体はないわね」
シルビアも追い打ちをかける。
そうするとカイエンの顔が青くなる。
「そんな……」
つまりはナイトロは無罪だったと。
「じゃあ、解体したカイエンが悪かったんじゃねーかよ」
ナイトロ、激おこである。
最初の目的から少し変わってきたな。
「ごほん」
俺はわざとらしく咳払いをする。
「えー、カイエン。不具合を見つけた時は、まずは自責を疑うべきです。君の作業は最終工程であり、そこで傷を付ける可能性がある以上は、まずそこを疑いましょう。そこで傷を付ける可能性がなければ、その時初めて前工程を疑って、不具合の検証を行うように」
「――はい」
これはよくあることだ。
人間誰しも自分の責任など認めたくないし、不具合があるとまず他人を疑う。
だが、やらなければならないのは自分の作業において、その不具合を作っていないかを確認することだ。
前工程を攻めてみたら何の問題もなく、よくよく調べてみたら自分のところで傷をつけていたなんてことは沢山ある。
寸法不良だと完成品メーカーから言われて調べてみたら、他社の類似品を間違って払い出しており、それをサプライヤーの責任にしようとしていたなんてのもあったな。
作ってもいない製品で、対策書を書けと言われて困ったもんだ。
どんなに弊社の製品ではないと説明しても、間違った寸法で類似品を作ったと言われては、こちらも対処のしようがない。
メイド・イン・ジャパンの幻想だな。
なので、経験からもカイエンのしたことはよくわかる。
特にギャランの言い方も勘違いさせるようなものであったのだろう。
ま、悪くないのに責められたナイトロは可哀想だがな。
「ナイトロ」
カイエンは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。力いっぱいに頬を殴れ。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と冒険する資格さえ無いのだ。殴れ。」
セリヌンティウスじゃなかったナイトロは、買取部門の倉庫いっぱいに響くほど強くカイエンの頬を殴った。
折れた歯が床に落ちる。
「やるじゃないか。じゃあ、次は俺の番だな」
そういって拳を振りかぶるカイエン。
「え、なんで俺が殴られるの?」
驚く様子のナイトロ。
そりゃそうだ。
別にナイトロはカイエンが妹の結婚式を見届けるまでの身代わりになったわけではない。
一方的に疑われていた身だ。
殴られる意味がわからない。
その後、俺、シルビア、ギャラン、ナイトロからこっぴどく叱られたカイエンは、人を疑う前にまずは自分を疑うようになったのである。
めでたしめでたし。
.
.
.
.
.
いや、そうじゃない。
迷宮鮟鱇から肝を商品価値を損なわないように解体する方法の確認だ。
「迷宮鮟鱇の肝は右胸付近にあるから、こうして腹を縦に捌いてだな。この時あんまり刃を深くまでいれないのがコツだ」
ギャランがあん肝を使って説明してくれる。
迷宮鮟鱇は海に住んでいる鮟鱇と違って、ろっ骨がしっかりとしているから、吊るし切りをする必要がない。
まあ、陸上で生息しているのだから当然だな。
いや、ファンガスやスライムはちがうな。
流石異世界だ、地球の常識が通用しない。
俺がそんなことを考えているうちに、ギャランによる迷宮鮟鱇の解体のレクチャーが終了した。
そして、俺の作業標準書に迷宮鮟鱇の解体が加わることとなったのである。
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