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第97話 アルトと40人の迷宮盗賊
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「MMR第二回目の調査は冒険者からの要望が多い迷宮盗賊対策よ」
「迷宮盗賊?」
冒険者ギルドのキバヤシこと、シルビアに呼び出され、俺とレオーネは冒険者ギルドの会議室にいた。
今度の調査はアストラ・バモスではなく、迷宮盗賊だという。
過去に何度か大規模な討伐隊を組織して、迷宮内の掃除を試みたが、未だにその被害は継続している。
品質管理的に言えば、慢性不良だな。
いずれ大きな事故に繋がると思われるので、このまま放置するわけにはいかない。
そう、慢性不良はついつい放置しがちだが、流出不良を分析してみると、慢性不良を放置していたというのがかなりある。
例えば、クリーンルームでの蒸着のコンタミ問題。
クリーンルームでコンタミが原因の不良が出てはお手上げだ。
仕方がないので、外観検査で流出を防ごうとするが、人の目では限界がある。
客先に不具合が流出してしまい、原因を確認していたら、慢性的に不良が出ていたが、クリーンルームの作り直しとなると、現場レベルでは無理であり、何度も会社に訴えたが、そんな予算もなく、そのままにされていた。
なんてことは珍しくない。
解決が困難な不良は放置されるのは、何も異世界だからというわけではないのだ。
なので、この迷宮盗賊の討伐などというのは、被害者が冒険者に限定されているので、対応は後回しにされるのも不思議ではない。
「被害者が冒険者だけだからと放置されているけど、ステラが他の都市に比べて裕福なのは、冒険者が迷宮から持ち帰る素材のお陰なのよ。それを掠めとる輩を放置なんてできないわ」
「そうですわ」
熱く語るシルビアと、相槌を打つレオーネ。
「迷宮盗賊は冒険者から奪った素材の換金はどうしてるんだ?冒険者ギルドに持ち込んだら足がつくだろ」
疑問に思ったので、シルビアに訊いた。
「闇オークションに流すのよ。訳有り品だから安く買い叩けるので、商人達の需要も在るみたいね」
闇オークションという中二心を擽るワードに若干興奮しつつも、話を脱線させないように気を使う。
「じゃあ、闇オークションを摘発すればいいじゃないか」
「どこで行われているかわからないのよ」
「そうか。そういうのは、将軍やクイントの方が詳しそうだよね」
「そうかもしれないわね」
「早速聞きに行ってみよう」
本家に負けないフットワークで、聞き込みに向かう俺達。
本家?
官邸では将軍とクイントが対応してくれた。
応接室に案内され、そこで今回ここを訪ねた目的を話す。
「成程、迷宮盗賊を探すなら、闇オークションが手っ取り早いか」
「はい、将軍。俺達だけで迷宮を歩き回っても、迷宮盗賊に出会えるかわかりませんからね」
どこで発生しているかわからない不良も、確実に検出できる場所があるならそこに検査工程をもうけるべきだ。
本来は発生工程を突き止める事が望ましいが、全てがそうできるわけでもない。
傷や錆びなどは、発生工程を突き止められなければ、梱包前に流出を防ぐ為の検査工程を設定するのだ。
そんなわけで、闇オークション会場に乗り込んで台無しにするか、そこで出品者を捕まえるかして、迷宮盗賊を懲らしめるのだ。
「残念ながら、闇オークションは開催場所を特定できていない」
クイントがそう答えた。
街の治安を守るものとしてどうかとは思うが、だからこそ今でも迷宮盗賊が蔓延っているのだろう。
「ゴロツキを締め上げてみたら?」
シルビアは短絡的だな。
でも、日本の警察も犯人を容赦なく殴って自白させていたな。
西部の警察だったか?
ワンダフルなガイ達の集団だった気がする。
「関係ない奴を締め上げても仕方ないだろ。誰が関係者かわからないんだからな」
「それもそうね」
クイントにダメ出しされて引き下がるシルビア。
こんなとき、どうすればいいのだろうか。
考えていたら、前世で観た時代劇を思い出した。
「元犯罪者で改心した連中を手下にしてたりしませんか?時間はかかるかもしれないけれど、昔の仲間から情報を聞き出して、それを元に犯罪者の摘発を行う。こちらに寝返る連中は刑を減刑すれば褒美になるでしょう」
火付盗賊改方のあの人は、元罪人を密偵として多数抱えていたぞ。
そういう手駒が有るんじゃないかと期待して訊いてみた。
「あ、それいいな」
クイントが食いついた。
「クイント、犯罪者の中から改心した連中を組織して、密偵として犯罪組織の情報を探らせようか」
将軍も乗り気である。
これから仕込みなので、慢性不良の迷宮盗賊退治の先は長いな。
だからこその慢性不良なんだけどさ。
その後、協力者を確保するために、中小の犯罪組織がいくつか壊滅させられ、ステラの街の治安が少しだけよくなった。
もう少ししたら、道端の屋台とか、居酒屋なんかが情報源になるのかもしれない。
※作者の独り言
慢性不良なので簡単には解決しません。
慢性不良って会社の体質に起因することが多いから、解決は不可能なんですよね。
偉い人の息子がルールを守らずに不良を生産するのですが、抜本的な対策などできないので慢性不良となっております。
そんなもん、サラリーマンにどないせーと。
「迷宮盗賊?」
冒険者ギルドのキバヤシこと、シルビアに呼び出され、俺とレオーネは冒険者ギルドの会議室にいた。
今度の調査はアストラ・バモスではなく、迷宮盗賊だという。
過去に何度か大規模な討伐隊を組織して、迷宮内の掃除を試みたが、未だにその被害は継続している。
品質管理的に言えば、慢性不良だな。
いずれ大きな事故に繋がると思われるので、このまま放置するわけにはいかない。
そう、慢性不良はついつい放置しがちだが、流出不良を分析してみると、慢性不良を放置していたというのがかなりある。
例えば、クリーンルームでの蒸着のコンタミ問題。
クリーンルームでコンタミが原因の不良が出てはお手上げだ。
仕方がないので、外観検査で流出を防ごうとするが、人の目では限界がある。
客先に不具合が流出してしまい、原因を確認していたら、慢性的に不良が出ていたが、クリーンルームの作り直しとなると、現場レベルでは無理であり、何度も会社に訴えたが、そんな予算もなく、そのままにされていた。
なんてことは珍しくない。
解決が困難な不良は放置されるのは、何も異世界だからというわけではないのだ。
なので、この迷宮盗賊の討伐などというのは、被害者が冒険者に限定されているので、対応は後回しにされるのも不思議ではない。
「被害者が冒険者だけだからと放置されているけど、ステラが他の都市に比べて裕福なのは、冒険者が迷宮から持ち帰る素材のお陰なのよ。それを掠めとる輩を放置なんてできないわ」
「そうですわ」
熱く語るシルビアと、相槌を打つレオーネ。
「迷宮盗賊は冒険者から奪った素材の換金はどうしてるんだ?冒険者ギルドに持ち込んだら足がつくだろ」
疑問に思ったので、シルビアに訊いた。
「闇オークションに流すのよ。訳有り品だから安く買い叩けるので、商人達の需要も在るみたいね」
闇オークションという中二心を擽るワードに若干興奮しつつも、話を脱線させないように気を使う。
「じゃあ、闇オークションを摘発すればいいじゃないか」
「どこで行われているかわからないのよ」
「そうか。そういうのは、将軍やクイントの方が詳しそうだよね」
「そうかもしれないわね」
「早速聞きに行ってみよう」
本家に負けないフットワークで、聞き込みに向かう俺達。
本家?
官邸では将軍とクイントが対応してくれた。
応接室に案内され、そこで今回ここを訪ねた目的を話す。
「成程、迷宮盗賊を探すなら、闇オークションが手っ取り早いか」
「はい、将軍。俺達だけで迷宮を歩き回っても、迷宮盗賊に出会えるかわかりませんからね」
どこで発生しているかわからない不良も、確実に検出できる場所があるならそこに検査工程をもうけるべきだ。
本来は発生工程を突き止める事が望ましいが、全てがそうできるわけでもない。
傷や錆びなどは、発生工程を突き止められなければ、梱包前に流出を防ぐ為の検査工程を設定するのだ。
そんなわけで、闇オークション会場に乗り込んで台無しにするか、そこで出品者を捕まえるかして、迷宮盗賊を懲らしめるのだ。
「残念ながら、闇オークションは開催場所を特定できていない」
クイントがそう答えた。
街の治安を守るものとしてどうかとは思うが、だからこそ今でも迷宮盗賊が蔓延っているのだろう。
「ゴロツキを締め上げてみたら?」
シルビアは短絡的だな。
でも、日本の警察も犯人を容赦なく殴って自白させていたな。
西部の警察だったか?
ワンダフルなガイ達の集団だった気がする。
「関係ない奴を締め上げても仕方ないだろ。誰が関係者かわからないんだからな」
「それもそうね」
クイントにダメ出しされて引き下がるシルビア。
こんなとき、どうすればいいのだろうか。
考えていたら、前世で観た時代劇を思い出した。
「元犯罪者で改心した連中を手下にしてたりしませんか?時間はかかるかもしれないけれど、昔の仲間から情報を聞き出して、それを元に犯罪者の摘発を行う。こちらに寝返る連中は刑を減刑すれば褒美になるでしょう」
火付盗賊改方のあの人は、元罪人を密偵として多数抱えていたぞ。
そういう手駒が有るんじゃないかと期待して訊いてみた。
「あ、それいいな」
クイントが食いついた。
「クイント、犯罪者の中から改心した連中を組織して、密偵として犯罪組織の情報を探らせようか」
将軍も乗り気である。
これから仕込みなので、慢性不良の迷宮盗賊退治の先は長いな。
だからこその慢性不良なんだけどさ。
その後、協力者を確保するために、中小の犯罪組織がいくつか壊滅させられ、ステラの街の治安が少しだけよくなった。
もう少ししたら、道端の屋台とか、居酒屋なんかが情報源になるのかもしれない。
※作者の独り言
慢性不良なので簡単には解決しません。
慢性不良って会社の体質に起因することが多いから、解決は不可能なんですよね。
偉い人の息子がルールを守らずに不良を生産するのですが、抜本的な対策などできないので慢性不良となっております。
そんなもん、サラリーマンにどないせーと。
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