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第98話 安けりゃいいってもんじゃない
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「刀身が柄から抜けたねぇ……」
その日持ち込まれた相談は、ショートソードの刀身が戦闘中に柄から抜けてしまったというものだった。
話を持ち込んできたのはカイエンだ。
「原因は柄と刀身を留めるピンが無かったと」
「はい」
日本刀で云うところの目釘が無いから抜けた。
それはわかる。
じゃあ、どこで目釘が無くなったのかが重要だな。
最初から無かったのか、それとも途中で抜けてしまったのか。
それによって対策内容が変わってくる。
※カイエンは今回に限って剣士となっています。
理由は作者がこれ以上初心者キャラの名前を考えるのが面倒だったから……
「そのショートソードはある?」
「ここにあります」
カイエンはショートソードを取り出した。
「随分と新しいな」
「丁度前に使っていたのが寿命だったので、この前買い替えたばかりなんですよ」
「で、留めピンのところだが……」
柄にある留めピン圧入部を確認してみると、圧入した痕跡が無かった。
圧入時の当たりが見当たらないのだ。
どうやら最初から無かったと思われる。
「どうも最初から無かったっぽいな。素振りはしてみたのか?」
「いや、握った感触と重さだけ確認して終わってた」
そこはちゃんと確認しようぜ。
これがベテランと新人の差か。
自分のところのパーティーメンバーのナイトロが、動作確認しなくて、俺に相談しに来たのを忘れたのかと言いたかったが、ここはグッと飲み込む。
手入れしたときも、留めピンを入れ忘れる可能性があるから、これは始業点検に入れる必要があるな。
ただ、発生工程はここではないので、そちらの対策が必要だ。
「どこで買ったんだ?」
俺はカイエンに訊いた。
「カイロン伯爵の冒険者ギルドで……」
「あそこか」
ばつの悪そうなカイエンだが、値段が安いので割りきって買う冒険者もいるので責められない。
しかし、それは自分でなんとか出来るならという条件がつく。
流石に鋳造は無理でも、一般的な手入れが出来るなら、手間賃が取られない分お得だ。
カイエンみたいに、自分でなんとか出来ないと、諸々の不具合で立ち往生することになる。
自作パソコンか!
「流石に留めピンがないのはクレーム入れないとな」
「一緒に来てもらえますか?」
「仲間と行けばいいだろ」
「この前の一件で、皆ナイトロの方に行っちゃって。頼みづらいんですよ」
自業自得だな。
この前の一件とは、迷宮鮟鱇の肝を傷つけて、買い取り価値を下げたのを、ナイトロの責任だと勘違いした件だ。
職場の雰囲気が悪くなるので、責任区分がはっきりする迄は、強気でいかない方がいいぞ。
そんなわけで、俺はカイエンと一緒にカイロン伯爵の冒険者ギルドに向かった。
ドアを開けると、ロビーにいた冒険者達がこちらを見る。
俺達を確認した後は、興味がなさそうに元の場所に視線を戻した。
やはり、少女四人組でないと、興味を引かないか。
「あら、どうしたの?」
その場にいたオーリスが俺達に気が付き声をかけてきた。
「オーリスこそ何でここに」
「人手不足だから、時々こうして手伝いをしていますのよ」
親の経営する冒険者ギルドだ。
俺達よりもいる理由はあるな。
聞き方を間違えた。
「で、何しに来たの?こちらに転職?」
「いや、このカイエンが買ったショートソードの留めピンが無くて、クレームを言いに来たんだ」
「またか……」
またかとため息をつくところを見ると、何度もやっているようだな。
再発防止対策しないのだろうか?
「安さが売りだから、余計な事はしないわ」
清々しい言葉だ。
同じことを前世で、とある外国企業で言われたな。
品質管理したら値段高くなるよってね。
自社の購買もその通りみたいな顔していたので、転がっていたセンタレスで殴ってやろうかと思いました。
センタレスだと勿体無いので思いとどまったけどね。
じゃあ、ピーリングなら殴ってたんかいと言われるとその通り。
暴力反対。
前世の事はおいておこう。
相手が品質を保証するつもりがないなら、これ以上は無駄だな。
留めピンだけもらって帰ろう。
「そんなわけで、留めピンだけください」
「え、ガツンと言わないの?」
俺の言葉に驚くカイエン。
「まあ、言ったところで改善しないなら無意味だ。諦めよう」
「だけど……」
何か言いたそうなカイエン。
気持ちはよくわかるが、世の中正論だけじゃないんだ。
不良を出しても選別に来ない業者だっているんだぞ。
俺達は敗北感を抱いて、カイロン伯爵の冒険者ギルドを後にした。
カイエンには始業点検で、留めピンの状態を確認するように指導し、あそこで物を買うときは自己防衛するように伝えた。
「もう懲りました。安ければいいってもんじゃないですね」
とカイエンは言った。
その言葉を値段しか見ない購買担当者に伝えてやりたい。
俺は届かぬと知りながらも、元いた世界にその念を送ってみた。
※作者の独り言
安くするために不良が出ても対策しませんとか、選別しませんとか普通にあるので注意しましょう。
ティア3、ティア4あたりになると特にね。
自分も偉い人に「選別したら赤字だから断れ」って言われた事があります。
その日持ち込まれた相談は、ショートソードの刀身が戦闘中に柄から抜けてしまったというものだった。
話を持ち込んできたのはカイエンだ。
「原因は柄と刀身を留めるピンが無かったと」
「はい」
日本刀で云うところの目釘が無いから抜けた。
それはわかる。
じゃあ、どこで目釘が無くなったのかが重要だな。
最初から無かったのか、それとも途中で抜けてしまったのか。
それによって対策内容が変わってくる。
※カイエンは今回に限って剣士となっています。
理由は作者がこれ以上初心者キャラの名前を考えるのが面倒だったから……
「そのショートソードはある?」
「ここにあります」
カイエンはショートソードを取り出した。
「随分と新しいな」
「丁度前に使っていたのが寿命だったので、この前買い替えたばかりなんですよ」
「で、留めピンのところだが……」
柄にある留めピン圧入部を確認してみると、圧入した痕跡が無かった。
圧入時の当たりが見当たらないのだ。
どうやら最初から無かったと思われる。
「どうも最初から無かったっぽいな。素振りはしてみたのか?」
「いや、握った感触と重さだけ確認して終わってた」
そこはちゃんと確認しようぜ。
これがベテランと新人の差か。
自分のところのパーティーメンバーのナイトロが、動作確認しなくて、俺に相談しに来たのを忘れたのかと言いたかったが、ここはグッと飲み込む。
手入れしたときも、留めピンを入れ忘れる可能性があるから、これは始業点検に入れる必要があるな。
ただ、発生工程はここではないので、そちらの対策が必要だ。
「どこで買ったんだ?」
俺はカイエンに訊いた。
「カイロン伯爵の冒険者ギルドで……」
「あそこか」
ばつの悪そうなカイエンだが、値段が安いので割りきって買う冒険者もいるので責められない。
しかし、それは自分でなんとか出来るならという条件がつく。
流石に鋳造は無理でも、一般的な手入れが出来るなら、手間賃が取られない分お得だ。
カイエンみたいに、自分でなんとか出来ないと、諸々の不具合で立ち往生することになる。
自作パソコンか!
「流石に留めピンがないのはクレーム入れないとな」
「一緒に来てもらえますか?」
「仲間と行けばいいだろ」
「この前の一件で、皆ナイトロの方に行っちゃって。頼みづらいんですよ」
自業自得だな。
この前の一件とは、迷宮鮟鱇の肝を傷つけて、買い取り価値を下げたのを、ナイトロの責任だと勘違いした件だ。
職場の雰囲気が悪くなるので、責任区分がはっきりする迄は、強気でいかない方がいいぞ。
そんなわけで、俺はカイエンと一緒にカイロン伯爵の冒険者ギルドに向かった。
ドアを開けると、ロビーにいた冒険者達がこちらを見る。
俺達を確認した後は、興味がなさそうに元の場所に視線を戻した。
やはり、少女四人組でないと、興味を引かないか。
「あら、どうしたの?」
その場にいたオーリスが俺達に気が付き声をかけてきた。
「オーリスこそ何でここに」
「人手不足だから、時々こうして手伝いをしていますのよ」
親の経営する冒険者ギルドだ。
俺達よりもいる理由はあるな。
聞き方を間違えた。
「で、何しに来たの?こちらに転職?」
「いや、このカイエンが買ったショートソードの留めピンが無くて、クレームを言いに来たんだ」
「またか……」
またかとため息をつくところを見ると、何度もやっているようだな。
再発防止対策しないのだろうか?
「安さが売りだから、余計な事はしないわ」
清々しい言葉だ。
同じことを前世で、とある外国企業で言われたな。
品質管理したら値段高くなるよってね。
自社の購買もその通りみたいな顔していたので、転がっていたセンタレスで殴ってやろうかと思いました。
センタレスだと勿体無いので思いとどまったけどね。
じゃあ、ピーリングなら殴ってたんかいと言われるとその通り。
暴力反対。
前世の事はおいておこう。
相手が品質を保証するつもりがないなら、これ以上は無駄だな。
留めピンだけもらって帰ろう。
「そんなわけで、留めピンだけください」
「え、ガツンと言わないの?」
俺の言葉に驚くカイエン。
「まあ、言ったところで改善しないなら無意味だ。諦めよう」
「だけど……」
何か言いたそうなカイエン。
気持ちはよくわかるが、世の中正論だけじゃないんだ。
不良を出しても選別に来ない業者だっているんだぞ。
俺達は敗北感を抱いて、カイロン伯爵の冒険者ギルドを後にした。
カイエンには始業点検で、留めピンの状態を確認するように指導し、あそこで物を買うときは自己防衛するように伝えた。
「もう懲りました。安ければいいってもんじゃないですね」
とカイエンは言った。
その言葉を値段しか見ない購買担当者に伝えてやりたい。
俺は届かぬと知りながらも、元いた世界にその念を送ってみた。
※作者の独り言
安くするために不良が出ても対策しませんとか、選別しませんとか普通にあるので注意しましょう。
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