冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

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第195話 黄色と赤は不良の印、24時間働けますか?

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 会議はまだまだ続く。
 まずは鉄道という名の通り、鉄を大量に使うことになる。
 ドワーフ代表のマイラーが挙手して発言する。

「鉄の生産が間に合わんぞ」

「それは鉄の加工ですか?」

 技官が聞き返した。

「いや、鉄鉱石から製鉄する工程だ。レン炉を増産するにもレンガも足りない。それに薪が沢山必要だから、木も切らにゃあならんぞ」

 そうだ、ここでは生産効率の悪いレン炉を使って鉄を取り出している。
 そこから生産される鉄は質も悪く、どうするつもりなのか。

「そこでアルトの出番だ。俺でもいいけどな」

 オッティがニヤつく。
 そういや、オッティはフォルテ公爵の元でトロッコ作っていたな。
 高炉をスキルで作り出せるのかな。
 俺の方はゲージを作り出して、それを溶かせばいい。
 特殊鋼だと溶かすために、2000度くらいまで上昇させるんだっけ?
 電気炉が必要ですね。
 確か、レール用の材質は鋼鐵だったよな。
 圧延仕上げだったはずだ。
 ダイスで成形したら楽なのだろうけど、耐磨耗はどうなんだろうな。
 初期の鉄道もレールについては試行錯誤していたと聞くしな。
 鋳鉄だったり、木だったりで作っていたのだとか。
 そんなもん、磨耗するに決まっている。
 長さや厚みに加えて、炭素量の管理も必要になる。
 レールひとつとっても、管理すべき項目は沢山ありそうだ。

「で、どれだけの鋼鐵が必要なんだ?」

「本来は複線化したいのだが、アルトと俺のスキル頼りでは、精々が単線だな。全ての路線が出来たら、徐々に複線化していくそうだ」

 運行本数見ながら、複線化の優先順位を決めていくのかな。
 二人でどんなに頑張っても、魔力切れで一日にそんなに多くの鋼鐵はできないから、最初から複線にするのは諦めたのだとか。

「ところで、国家機密の鉄道員がここにいないようだけど、打ち合わせに参加しないで何をやっているんだ?」

 それが不思議だった。
 なんで、そんな中心人物になりそうなのがここにいないのだろうか。
 サプライズゲストとして登場するんじゃないかと、俺は辺りをキョロキョロと見回した。
 しかし、どこにも隠れているような気配がない。

「なんでも、運行ダイヤを別室で描いているらしいぞ」

「あー、確かにあれはベテランの職員じゃないと難しいって謂うものな」

 臨時の運行ダイヤはベテランの職員が手書きで作ると聞いたぞ。
 過密ダイヤになると、コンピューターよりも人の手で描いた方が正確なんだとか。
 うーむ、奥が深い。
 ちなみに、運行ダイヤはダイヤに見えるからダイヤと呼ばれるというのは間違いだそうだ。
 ダイヤグラムの略でダイヤが正式だそうで。

「あれ?」

「どうした?」

 俺はあることに気がつき首を捻った。
 オッティがそんな俺を見る。

「鉄道員のジョブが見つかったから鉄道を敷くのだろ。蒸気機関車はそいつのスキルで作るんじゃなかったのか?」

 オッティは先ほどそう言ったと思ったが。

「言われてみればそうだよな」

 って、今気がついたんかい!!

「はい!」

 俺は挙手して発言の許可を求めた。
 技官は直ぐに許可をしてくれたので、俺は疑問をぶつけてみた。

「車両の製造はどうするのですか?」

「いい質問ですね」

 池◯彰か!
 いや、技官が池◯彰を知っているわけがない。
 これは偶然の一致だな。
 まてよ、ここには転生者が二人いる。
 グレイスを入れたら三人だ。
 もう一人増えないという保証はどこにもない。
 もしかしたら本人かもしれない。
 そんな池◯彰はオッティを指差す。

「オッティのスキルで蒸気機関車を作り出して、それを分解してリバースエンジニアリングで図面を製図する予定です」

 なるほどね。
 見本があればそれを模倣すればいいというわけか。
 火縄銃が日本に伝わったときみたいだな。

「なんだ、オッティのスキルで車両を作り出せるんじゃないか」

「それは正確ではないな」

 難しい顔で否定されてしまった。

「俺のスキルはそこまで解放されていない。これからレベルあげをして、レベルが上がったら作り出せるようになるんだ。今はまだ作ることは出来ない」

「ということは……」

「この前の製麺ラインみたいに、レベルあげを手伝ってもらうということだ。どのみち、車両製造はレールを敷いてからになる。鉄道は工場にレールが伸ばす必要がだろ。あんな重量物をトラックやクレーン車もないここでは納品できないからな」

 オッティの説明を聞いて納得する。
 列車の納入って、どうするのか気になっていたんだよね。
 確か、前世でも工場にレールが伸びていた気もする。

「聞いていて思ったのだが、この鉄道計画って、俺とオッティのスキル前提だよな。参加拒否したらどうするつもりだったのかね?」

「そんなもん、相手は国家だぞ。脅迫でも冤罪で牢屋にぶちこんででも俺達を従わせる方法なんてあるだろ。そんな手段に出られる前に、ここで大人しく従っていた方が利口というものだよ。どんなに強いスキルを持っていても、生身の人間は不眠不休で戦うことはできない。最後は数で押しきられるだけさ」

 最初から参加するしかなかったわけか。
 不眠不休で動くのも48時間が限界だったな。
 あのときは、車両メーカーのラインが止まるか止まらないかの瀬戸際で、異常な興奮状態だから起きていられただけだったが、三日目の朝、日の出を見てからの記憶がない。
 その時書いていた対策書は、あとで読み返したら意味不明だったな。
 暫定対策が出来た時点で寝るべきだった。
 「24時間戦えますか?」なんてCMがあったけど、炎上したラインではそれでは甘い。
 その倍は戦えないとね。
 そんなお薬は国から認可がおりないか。

 その後は駅や踏切の話をして、会議が終わった。
 踏切はゴーレムが上げ下げをすることになった。
 昔の踏切みたいだな。
 踏切を動かす人がいたんじゃよ。
 昭和の時代なんだけどな。
 
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