288 / 439
第287話 同業者が撤退した事業に食いつく営業ってさ
しおりを挟む
消えるメーカーの後始末って大変ですよね。
自動車のライト業界みたいに寡占化されているところは、一社抜けたらどうなっちゃうんでしょうかね?
最近話題になっている、カーエアコンなんかもどうなるのか今後に注目ですね。
企業再生なら、不採算部門は真っ先に切られそうなもんですが、実際には赤字事業なんて買い手を見つけるのが大変ですからね。
とある店長が強姦事件を起こした外食企業も、利益の出ている事業を売却して、再建資金を作ったくらいですし。
それでは本編いってみましょう。
本日も疲れた顔のシャレードがやってきた。
今日も眉間のしわが深い。
そのせいだろうか、いつもよりも余計に年齢を感じるな。
「すまん、相談があるんだが。というか引き抜きだな」
「随分と正直に言いますよね」
引き抜きとは穏やかじゃないな。
俺を商業ギルドにヘッドハンティングして、品質管理でもやらせようというのか?
冒険者ギルドの品質管理部長は、車両メーカーからの呼び出しが無くて快適なので、しばらくこのままがいいのだけどな。
「商品のクレーム対応でもさせるつもりですか?」
俺がそう訊くと、シャレードは首を横に振った。
「そうじゃない。この前の酷い馬車メーカーが倒産したのだが、今動いている馬車の修理に支障が出ていてな。どこで作らせたかがわからないから、自分達で違う工房に部品を発注するしかないんだが、寸法が全くわからないんだ。なにせ破損した部品から元の寸法なんて測定できんからな」
シャレードはそういうと、大きなため息をついた。
「なるほど、それで俺に元の寸法を推測させたいというわけですね」
そういうと、シャレードは無言で首肯した。
かなりお疲れの様子だな。
不具合の対策品を夜中までかかって作ったあとに、運送業者に手渡したときの品質管理みたいだ。
朝日を見ながら飲むコーヒーが美味しいんだよね。
そのままその日も仕事になるので、思わず労基に駆け込みたくなるけど。
それにしても、ここでもこんなことになるとはな。
ここでもというのは現世のことであり、思い出しているのは前世の事だ。
倒産なり事業撤退なりで、同業者が部品の生産を止めることがある。
そうなると、車両メーカーは部品調達が出来なくなって困るので、同業者で生産が出来そうなところを探すのである。
生産を止める部品メーカーも当然事業の売却先を探すのだが、そこに車両メーカーが入ってくることもあるな。
で、利益が出ないから撤退するのが殆どなのに、営業が売り上げが伸びるとか言って飛びついちゃう。
問題は機械の生産能力もあるのだが、自社での開発を行っていないことにある。
引き継いだ製品で設計不良が見つかった時に、どうしてそんな設計になっているのかというノウハウがないので、どう対処してよいのかがわからないことがあるのだ。
そんな時に設計は逃げる。
俺が設計でも逃げるから、文句を言いづらい。
気持ちはよくわかるぞ。
他人の図面に責任を持てと言われても困るからな。
それで、倒産ではなく事業撤退だった場合なんかは、元々の会社に問い合わせをしてみるのだが、けんもほろろに対応される。
曰く「当時の設計がいない」、「弊社にはもう関係がない」など。
まあ、弊社も事業を売却した立場ならそうするわな。
相手が倒産しているときは、それこそどうにもならない。
比較的近い住所の会社なら、そこの社員を採用するっていうのもありなんだろうけど。
そんなわけで、商権移管なんてろくなもんじゃない。
この話は断ったほうがよさそうだな。
「この話は断ろうかと思うんだが……」
「オーリスには既に前金を渡したからな」
俺が断ろうとしたら、シャレードはいやらしい笑みを浮かべやがった。
まさかオーリスが俺を売っていたとは!
結局諦めて、壊れた部品を測定したり、まだ壊れていない馬車を測定したりして、それを図面化してシャレードに渡した。
部品の手配はシャレードが行うのだ。
正直加工先まで見つけろと言われていたらまいっていたな。
全ての部品を測定して図面化したところでシャレードから解放された。
全部で一か月かかったぞ。
「これに懲りてもう安いものに飛びつくのはやめてくださいね」
最後にシャレードに嫌味のひとつも言ってやったのだが、
「その時はまた頼むよ」
どうも反省していなそうな返事が返ってきた。
※作者の独り言
同業者が撤退する仕事は地雷。
自動車のライト業界みたいに寡占化されているところは、一社抜けたらどうなっちゃうんでしょうかね?
最近話題になっている、カーエアコンなんかもどうなるのか今後に注目ですね。
企業再生なら、不採算部門は真っ先に切られそうなもんですが、実際には赤字事業なんて買い手を見つけるのが大変ですからね。
とある店長が強姦事件を起こした外食企業も、利益の出ている事業を売却して、再建資金を作ったくらいですし。
それでは本編いってみましょう。
本日も疲れた顔のシャレードがやってきた。
今日も眉間のしわが深い。
そのせいだろうか、いつもよりも余計に年齢を感じるな。
「すまん、相談があるんだが。というか引き抜きだな」
「随分と正直に言いますよね」
引き抜きとは穏やかじゃないな。
俺を商業ギルドにヘッドハンティングして、品質管理でもやらせようというのか?
冒険者ギルドの品質管理部長は、車両メーカーからの呼び出しが無くて快適なので、しばらくこのままがいいのだけどな。
「商品のクレーム対応でもさせるつもりですか?」
俺がそう訊くと、シャレードは首を横に振った。
「そうじゃない。この前の酷い馬車メーカーが倒産したのだが、今動いている馬車の修理に支障が出ていてな。どこで作らせたかがわからないから、自分達で違う工房に部品を発注するしかないんだが、寸法が全くわからないんだ。なにせ破損した部品から元の寸法なんて測定できんからな」
シャレードはそういうと、大きなため息をついた。
「なるほど、それで俺に元の寸法を推測させたいというわけですね」
そういうと、シャレードは無言で首肯した。
かなりお疲れの様子だな。
不具合の対策品を夜中までかかって作ったあとに、運送業者に手渡したときの品質管理みたいだ。
朝日を見ながら飲むコーヒーが美味しいんだよね。
そのままその日も仕事になるので、思わず労基に駆け込みたくなるけど。
それにしても、ここでもこんなことになるとはな。
ここでもというのは現世のことであり、思い出しているのは前世の事だ。
倒産なり事業撤退なりで、同業者が部品の生産を止めることがある。
そうなると、車両メーカーは部品調達が出来なくなって困るので、同業者で生産が出来そうなところを探すのである。
生産を止める部品メーカーも当然事業の売却先を探すのだが、そこに車両メーカーが入ってくることもあるな。
で、利益が出ないから撤退するのが殆どなのに、営業が売り上げが伸びるとか言って飛びついちゃう。
問題は機械の生産能力もあるのだが、自社での開発を行っていないことにある。
引き継いだ製品で設計不良が見つかった時に、どうしてそんな設計になっているのかというノウハウがないので、どう対処してよいのかがわからないことがあるのだ。
そんな時に設計は逃げる。
俺が設計でも逃げるから、文句を言いづらい。
気持ちはよくわかるぞ。
他人の図面に責任を持てと言われても困るからな。
それで、倒産ではなく事業撤退だった場合なんかは、元々の会社に問い合わせをしてみるのだが、けんもほろろに対応される。
曰く「当時の設計がいない」、「弊社にはもう関係がない」など。
まあ、弊社も事業を売却した立場ならそうするわな。
相手が倒産しているときは、それこそどうにもならない。
比較的近い住所の会社なら、そこの社員を採用するっていうのもありなんだろうけど。
そんなわけで、商権移管なんてろくなもんじゃない。
この話は断ったほうがよさそうだな。
「この話は断ろうかと思うんだが……」
「オーリスには既に前金を渡したからな」
俺が断ろうとしたら、シャレードはいやらしい笑みを浮かべやがった。
まさかオーリスが俺を売っていたとは!
結局諦めて、壊れた部品を測定したり、まだ壊れていない馬車を測定したりして、それを図面化してシャレードに渡した。
部品の手配はシャレードが行うのだ。
正直加工先まで見つけろと言われていたらまいっていたな。
全ての部品を測定して図面化したところでシャレードから解放された。
全部で一か月かかったぞ。
「これに懲りてもう安いものに飛びつくのはやめてくださいね」
最後にシャレードに嫌味のひとつも言ってやったのだが、
「その時はまた頼むよ」
どうも反省していなそうな返事が返ってきた。
※作者の独り言
同業者が撤退する仕事は地雷。
0
あなたにおすすめの小説
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる