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第323話 勘違いしやすいものって有るよね
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「ハーフダークエルフヴァンパイアの退治を依頼されたけど、偶々近くにいたダークエルフハーフヴァンパイアをボコボコにして、結果的に依頼の日数以内にハーフダークエルフヴァンパイアを退治できなかったのか」
俺は自分で言っている事を理解するのが大変だった。
相談にやってきたのはカイエンだ。
冒頭の俺の台詞の通りの失敗なのだが、討伐対象と間違った相手が本当にややこしい。
ハーフダークエルフヴァンパイアは人間とダークエルフの混血がヴァンパイア化したアンデッドモンスターだ。
ダークエルフハーフヴァンパイアはダークエルフとヴァンパイアの混血で、こちらはアンデッドモンスターではないので、種類はまったくの別物である。
どちらも滅多に遭遇するもんじゃないな。
外観はよく似ている。
耳の尖り具合とか、色見とか。
「まずは依頼内容を聞こうじゃないか」
俺は項垂れるカイエンに説明を求めた。
「ステラ近郊の村で神隠しが立て続けに発生したんだ。それを別の冒険者が調査したんだけど、一人を残して全滅してしまったんだよ。残った冒険者の情報でハーフダークエルフヴァンパイアの存在がわかったんだ。そこからそいつの討伐依頼が出たってわけだ」
「なるほどね」
そうは言ったものの、やや納得がいかない。
ヴァンパイアの真祖ではないのだが、それなりの強敵だと思うぞ。
ましてや、ハーフダークエルフだったころのスキルも使えるはずだ。
「そうでもないよ。俺達だって鉄等級をもうすぐ卒業できそうな実力はあるんだから」
カイエンはそう胸を張って主張した。
「それならこんな間違いするなよ……」
六角ボルトと六角穴付ボルトを勘違いする新人か!
これは前世の経験だがな。
六角ボルトというのはその名の通り六角形の頭をしたボルトだ。
スパナで締め付けるやつだな。
それに対して六角穴付ボルトは丸い頭の中心に六角形の穴が空いている。
六角レンチで締め付けるのだ。
六角穴付ボルトは座繰りといって、板からボルトが出ない締め付けに使う事が多い。
■……板
□……ボルト
・六角ボルト
□
■■□■■
■■□■■
■■□■■
□□□
・六角穴付ボルト
■■□■■
■■□■■
■■□■■
■□□□■
こんな感じの締め付け姿になる。
ボルト締め付け後に、ボルトの頭が飛び出さないから、板を平らに置く事が出来るのだ。
名前が似ているから、知らないと違う方を持ってきちゃうんだよね。
新人が職人のおじいちゃんに怒られてたわ。
「で、ハーフダークエルフヴァンパイアだと思って倒したダークエルフハーフヴァンパイアから、周辺で誘拐計画を立てていたっていう自白を引き出したから、俺達はこれで依頼は達成だと勘違いしたんだ」
「ダークエルフハーフヴァンパイアも誘拐計画をたてていたのか」
「そうなんだよ。これがピクニックに来ただけっていうなら、俺達も間違いに気が付いたんだけど、偶然にも誘拐計画の準備で村の周囲をうろついていたんだ。依頼主の衛兵隊につき出して、依頼終了のサインを貰おうとしたら、実は犯人じゃなかった事がわかって、期日内の依頼達成が出来なくて失敗扱いになったってわけさ」
ピクニックに来ていた奴をぼこって、別人でしただとそれはそれで問題だけどな。
あ、弊社と似た名前の会社が出した不具合で、客先から弊社に連絡が来たなんてのもあったな。
不具合出した品番の図面がどこを探しても無くて、出荷履歴も存在しない。
大騒ぎした挙句、別の会社でしたとかね。
こっちから対策書依頼しようかと思いました。
逆もあるので我慢したけど。
客先の部署で同じ苗字いると困るよね。
あのメーカーとか特に困る。
「衛兵隊からは事件を未然に防いだってことで、少しの金を貰う事が出来たんだけど、昇級試験の条件達成に影響が出るから、アルトにもみ消しをお願いしに来たんだ。ちょっと冒険者ギルドの記録を改ざんしてくれないか」
とんでもないことをさらっというカイエン。
世間的に品質管理が問題になっている今はとても危険なセリフだ。
異世界だけどね!
「それは無理な相談だから、せめて再発防止策を考えようか」
流石に改ざんには付き合えないので、改善をすることにした。
「まずは、相手の鑑定はしたのか?」
これはコンピューターRPGだとあまりなじみがないが、TRPGではわりとよくある知識判定だ。
相手が何者なのかを鑑定する行為があれば今回の問題は防げたんじゃないだろうか。
まあ、判定に失敗すると「あれはモケケピロピロだ」とか言っちゃうんだけど。
「それはしなかったな。やや尖った耳と黒っぽい肌に、発達した犬歯だったから間違いないと思ったんだ」
カイエンの話すのは一般的な特徴ではあるが、両者に共通するものであり、それで判断は出来ない。
A5052とA7075を一般的なアルミ合金として、比較してるようなもんだな。
まあ、見ればわかるんだけど、それは経験から来るものなので、やはり初見だと勘違いはするだろうな。
そして、これも間違うと大変なことになる。
異材加工やると後が大変だぞ。
取り敢えずの使用に問題はないって判断するくらいなら作り直した方がまし。
市場に出ちゃってるとそうも言ってられませんけど。
そう、そこのお前。
その判断は正しいのか?
材質の確認はしたんだよな?
水平展開で何社も同じ対策させられるんだぞ。
いかん、つい感情的になってしまった。
「それだとどちらの特徴も兼ね揃えているから、鑑定したとはいえないな。アンデッドモンスターなら昼間の行動に制限がかかってたりするのを見ないと」
「確かに、ダークエルフハーフヴァンパイアなんて居ないっていう思い込みは良くなかった。これからは気を付けるよ」
「気を付けるだけじゃ駄目だ。鑑定が間違いないことを第三者に確認してもらい、エビデンスを残さないと」
「エビデンス?」
つい前世の癖で余計な事をくちばしってしまった。
冒険途中に鑑定確認チェックシートへの記入はないよな。
最低限のルール追加だというのは前世での話である。
確実に実行したことを確認して記録を残したいところではあるな。
気を付けますなんて対策書出されても却下するし。
そういうの管理する魔法開発されないかな?
付与魔法でチェックシートに記録しないと、インターロックがかかって先に進めないとか。
目の前にモンスターがいるのにそれはどうなのっていうのはあるが。
異世界の品質管理手ごわいですね。
俺は自分で言っている事を理解するのが大変だった。
相談にやってきたのはカイエンだ。
冒頭の俺の台詞の通りの失敗なのだが、討伐対象と間違った相手が本当にややこしい。
ハーフダークエルフヴァンパイアは人間とダークエルフの混血がヴァンパイア化したアンデッドモンスターだ。
ダークエルフハーフヴァンパイアはダークエルフとヴァンパイアの混血で、こちらはアンデッドモンスターではないので、種類はまったくの別物である。
どちらも滅多に遭遇するもんじゃないな。
外観はよく似ている。
耳の尖り具合とか、色見とか。
「まずは依頼内容を聞こうじゃないか」
俺は項垂れるカイエンに説明を求めた。
「ステラ近郊の村で神隠しが立て続けに発生したんだ。それを別の冒険者が調査したんだけど、一人を残して全滅してしまったんだよ。残った冒険者の情報でハーフダークエルフヴァンパイアの存在がわかったんだ。そこからそいつの討伐依頼が出たってわけだ」
「なるほどね」
そうは言ったものの、やや納得がいかない。
ヴァンパイアの真祖ではないのだが、それなりの強敵だと思うぞ。
ましてや、ハーフダークエルフだったころのスキルも使えるはずだ。
「そうでもないよ。俺達だって鉄等級をもうすぐ卒業できそうな実力はあるんだから」
カイエンはそう胸を張って主張した。
「それならこんな間違いするなよ……」
六角ボルトと六角穴付ボルトを勘違いする新人か!
これは前世の経験だがな。
六角ボルトというのはその名の通り六角形の頭をしたボルトだ。
スパナで締め付けるやつだな。
それに対して六角穴付ボルトは丸い頭の中心に六角形の穴が空いている。
六角レンチで締め付けるのだ。
六角穴付ボルトは座繰りといって、板からボルトが出ない締め付けに使う事が多い。
■……板
□……ボルト
・六角ボルト
□
■■□■■
■■□■■
■■□■■
□□□
・六角穴付ボルト
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こんな感じの締め付け姿になる。
ボルト締め付け後に、ボルトの頭が飛び出さないから、板を平らに置く事が出来るのだ。
名前が似ているから、知らないと違う方を持ってきちゃうんだよね。
新人が職人のおじいちゃんに怒られてたわ。
「で、ハーフダークエルフヴァンパイアだと思って倒したダークエルフハーフヴァンパイアから、周辺で誘拐計画を立てていたっていう自白を引き出したから、俺達はこれで依頼は達成だと勘違いしたんだ」
「ダークエルフハーフヴァンパイアも誘拐計画をたてていたのか」
「そうなんだよ。これがピクニックに来ただけっていうなら、俺達も間違いに気が付いたんだけど、偶然にも誘拐計画の準備で村の周囲をうろついていたんだ。依頼主の衛兵隊につき出して、依頼終了のサインを貰おうとしたら、実は犯人じゃなかった事がわかって、期日内の依頼達成が出来なくて失敗扱いになったってわけさ」
ピクニックに来ていた奴をぼこって、別人でしただとそれはそれで問題だけどな。
あ、弊社と似た名前の会社が出した不具合で、客先から弊社に連絡が来たなんてのもあったな。
不具合出した品番の図面がどこを探しても無くて、出荷履歴も存在しない。
大騒ぎした挙句、別の会社でしたとかね。
こっちから対策書依頼しようかと思いました。
逆もあるので我慢したけど。
客先の部署で同じ苗字いると困るよね。
あのメーカーとか特に困る。
「衛兵隊からは事件を未然に防いだってことで、少しの金を貰う事が出来たんだけど、昇級試験の条件達成に影響が出るから、アルトにもみ消しをお願いしに来たんだ。ちょっと冒険者ギルドの記録を改ざんしてくれないか」
とんでもないことをさらっというカイエン。
世間的に品質管理が問題になっている今はとても危険なセリフだ。
異世界だけどね!
「それは無理な相談だから、せめて再発防止策を考えようか」
流石に改ざんには付き合えないので、改善をすることにした。
「まずは、相手の鑑定はしたのか?」
これはコンピューターRPGだとあまりなじみがないが、TRPGではわりとよくある知識判定だ。
相手が何者なのかを鑑定する行為があれば今回の問題は防げたんじゃないだろうか。
まあ、判定に失敗すると「あれはモケケピロピロだ」とか言っちゃうんだけど。
「それはしなかったな。やや尖った耳と黒っぽい肌に、発達した犬歯だったから間違いないと思ったんだ」
カイエンの話すのは一般的な特徴ではあるが、両者に共通するものであり、それで判断は出来ない。
A5052とA7075を一般的なアルミ合金として、比較してるようなもんだな。
まあ、見ればわかるんだけど、それは経験から来るものなので、やはり初見だと勘違いはするだろうな。
そして、これも間違うと大変なことになる。
異材加工やると後が大変だぞ。
取り敢えずの使用に問題はないって判断するくらいなら作り直した方がまし。
市場に出ちゃってるとそうも言ってられませんけど。
そう、そこのお前。
その判断は正しいのか?
材質の確認はしたんだよな?
水平展開で何社も同じ対策させられるんだぞ。
いかん、つい感情的になってしまった。
「それだとどちらの特徴も兼ね揃えているから、鑑定したとはいえないな。アンデッドモンスターなら昼間の行動に制限がかかってたりするのを見ないと」
「確かに、ダークエルフハーフヴァンパイアなんて居ないっていう思い込みは良くなかった。これからは気を付けるよ」
「気を付けるだけじゃ駄目だ。鑑定が間違いないことを第三者に確認してもらい、エビデンスを残さないと」
「エビデンス?」
つい前世の癖で余計な事をくちばしってしまった。
冒険途中に鑑定確認チェックシートへの記入はないよな。
最低限のルール追加だというのは前世での話である。
確実に実行したことを確認して記録を残したいところではあるな。
気を付けますなんて対策書出されても却下するし。
そういうの管理する魔法開発されないかな?
付与魔法でチェックシートに記録しないと、インターロックがかかって先に進めないとか。
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異世界の品質管理手ごわいですね。
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