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第324話 応力は応用力とは違うんやで
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この前読んだ異世界系の小説ですが、怪力を持ったキャラクターが焼きの入った硬い剣を、握力で曲げる描写がありましたが、硬い剣は靭性が無いから折れるんじゃないかと思いました。
まあ、それすらも超越した力なのかも知れませんが。
それでは本編いってみましょう。
「まったく、どうして魔法使いっていうのはあんなに体力がないのかしらね」
俺の目の前でプリプリ怒っているのはシルビアだ。
訳を訊いたところ、最近魔法使いや魔術師の新人が多くて、彼等を教育をしているのだが、基礎体力が低すぎて中々進まない事に腹を立てているとか。
適性考えたらそうだよね。
間接部門の現場応援って言っても、普段体を動かしていない社員は、4時間(休憩時間除く)の業務ですら辛いからな。
因みに、とある家電メーカーは経営が傾いた時に、完成車両メーカーに社員を派遣したのだが、ほぼ全員が業務に耐えられないと言ってたとか聞いたことがある。
フロントガラス組み付け工程とか大変そうですね。
他の工程はよく知りませんけど。
僕がやるなら、工場内を自転車で走る係がいいです。
走るだけで仕事はしませんけど。
話がそれました。
「それにしても、どういう訳かそういうジョブの新人が増えたよね」
俺が言うと、シルビアが呆れた顔でこちらを見た。
「何?」
「あんた理由を知らないの?」
再び呆れ顔のシルビア。
「知らないよ」
「あんたの友達が部屋の温度を快適にするやつ売っているから、いままで貴族に雇われていた炎や氷の魔法の使い手が失業しているのよ」
「あー」
エアコンの売れ行きが良いのはいいことだが、そのせいで既存の職業の立場が奪われているわけか。
昔はコピー技師なんてのもありましたね。
そういえば、第三話でコピー技師じゃなくて良かったとか言った気もするが、転生前でもコピー技師じゃなくてよかったな。
その流れで行くと、今後は自動運転の技術が確立すると、タクシードライバーなんかも失業しちゃいますね。
「みんな無職になっちゃうの?」、「それがサダメならね」って感じですか?
どこの谷だかわかりませんが、僕は鶯谷がいいです。
ちょっと暗い話になったので、ここでこの話題を打ち切った。
シルビアはまた訓練所に戻っていき、俺は暇になったのでコーヒーを飲んで時間を潰す。
すると、今度はホーマーとシャレードが相談にやってきた。
なんでも、新商品を開発しているのだが、寸法不良が出てしまい、うまくいかないのだとか。
それは品質管理じゃなくて、生産技術案件じゃないのかと言ったが、オッティに相談すると金がかかるうえに、アイデアを持っていかれる可能性があるから駄目なんだとか。
確かに、オッティにアイデアを相談したら、こちらよりもはるかにいい物を作りそうだよな。
スキルがチートなんだから。
「で、どんな不具合が出ているんだ?」
俺がホーマーに訊ねると、
「パイプの端部をフォーミング加工して、反対側を溶接してから、フォーミングした側の組み付けをしようとしたら嵌合できなかったんです」
と答えた。
フォーミング加工とは線材や板材の塑性加工のことであるが、管材でもフォーミング加工をしている。
「まずは現物を見てみたいんだけど」
「それじゃあ工房に移動しましょう」
そんなわけで、三人で工房に移動する。
そこで見せられた試作品は雨どいだった。
漏斗のように広げた端部のすぐ近くに別のパイプがL字に溶接してある。
そいつに蓋をつけたいそうなのだが、その蓋がどうしても嵌らないのだ。
蓋の目的は落ち葉避けである。
「家の壁にとって雨水は大敵だからな。屋根から垂らすのではなくて、一か所に集めて地面に流したい」
とシャレードが説明してくれた。
なんでも、大陸の東方にある国で商人が見かけたのだという。
まあ、こんなものは瓦屋根がないと発達しないだろうな。
最近の日本の住宅でも、雨どい無いのもあるし。
あれだと、雨水が壁に湿気を与えるからよくないんだけどね。
その辺は素材でカバーできているのかな?
おっと、前世の住宅についてはまあいいか。
「あー、蓋に対して雨どいの方が歪んでいるな」
渡された現物は測定するまでも無く歪んでいる。
蓋に対してのクリアランスが無さ過ぎるってのもあるのだろうな。
少しの変形があると、こうして嵌めあいに問題がでるのだから。
「クリアランスが無さ過ぎだよ」
俺の指摘に対して、ホーマーは少し怒ったような表情になる。
「ドワーフなら、これくらいのクリアランスで十分だと思ったんですよね。それに溶接前に確認するとキチンとはまっていますから」
「溶接前は嵌るの?」
「はい」
だとすると、溶接の熱で残留応力が除去されて、寸法に変化があったのかな。
樹脂成形だとアニール処理なんて言われたりもするが、残留応力のある製品に熱を加えると寸法が変化する。
特に加工部位なんかだと顕著だ。
水分を除去する乾燥炉に入れただけで、かなり寸法が変化するものもあるしな。
というか、それで問題になった事がある。
図面寸法から逸脱していると言われたが、どんなに検査をしても不良は見つからない。
それなのに、客先ではほぼ全てが寸法不良になっているのだ。
後工程を確認したら、弊社の製品に熱が加わる工程があり、そこで変形が発生していたのである。
そんなもん、こちらとしてはわかりようもないですがな。
こちらとしては、客先での受け入れ時に図面スペックを満足しているので、勿論なんの対応もしませんでしたよ。
というか、なんで試作時にその不具合が出なかったのか不思議ですね。
似たような話は、当然自社でもあって、工程の流れをぶったぎって、途中に熱処理を入れて対応してます。
多分見積り間違って、利益は出ていないと思うんだけど、不良品を納品するわけにはいかないから、仕方のない事ですよね。
前世の話だから、今どうなったかはわかりません。
「一度熱を加えて、残留応力を除去してから仕上げをすればいいかな」
そこで閃く。
「熱処理用に魔法使いを雇わないか?」
熱処理のための温度管理をするのに、そんな便利な設備が無いので、どうしても感覚によるものでしか出来ないが、仕事がない魔法使いが世の中に余っているので、熱処理の仕事を与えたらいいんじゃないだろうか。
温度計と時間のわかるタイマーは必要だけど。
むしろ、その辺もスキルで何とかならないものか。
賢者の学院でマジックアイテムとして作ってくれてもいいけどね。
「熱処理か、確かに他のドワーフと違って、溶接工ってジョブだと焼き入れなんかもスキルがないんだよね。ただ、自分だけの稼ぎだと無理かな」
「そこは他の工房からも仕事を受ければいいさ。熱処理は種類が多いからな。素材の焼鈍をしてもいいし」
そう提案してみる。
まあ、俺のスキルなら焼鈍材を作るのも可能なのだが、一般の工房向けに材料は作ってないからな。
需要を掘り起こすことが出来るかもしれないぞ。
「それが出来るなら、雇ってみようかな」
「人の手配は任せてくれ。あとは、熱処理の条件も確認しておく」
まあ、ネットスーパーもどきのスキルで、電気炉購入も出来るから、それに熱処理のプログラム組んでもいいんだけどね。
それだと失業対策にならないからやらないだけで。
蛍光エックス線分析機といい、誰がそんなもんネット通販で買うんだよと思うんだけど、需要あるんだろうな。
そうして、シルビアから魔法使いを紹介してもらい、熱処理の仕事を始めることになった。
それについては、またの機会で。
※作者の独り言
溶接の熱で応力に変化がというのは経験ありませんが、話の都合でそうしました。
炉中ロウ付けにしたかったけど、そんなシチュエーションが思い浮かばなかったので。
まあ、それすらも超越した力なのかも知れませんが。
それでは本編いってみましょう。
「まったく、どうして魔法使いっていうのはあんなに体力がないのかしらね」
俺の目の前でプリプリ怒っているのはシルビアだ。
訳を訊いたところ、最近魔法使いや魔術師の新人が多くて、彼等を教育をしているのだが、基礎体力が低すぎて中々進まない事に腹を立てているとか。
適性考えたらそうだよね。
間接部門の現場応援って言っても、普段体を動かしていない社員は、4時間(休憩時間除く)の業務ですら辛いからな。
因みに、とある家電メーカーは経営が傾いた時に、完成車両メーカーに社員を派遣したのだが、ほぼ全員が業務に耐えられないと言ってたとか聞いたことがある。
フロントガラス組み付け工程とか大変そうですね。
他の工程はよく知りませんけど。
僕がやるなら、工場内を自転車で走る係がいいです。
走るだけで仕事はしませんけど。
話がそれました。
「それにしても、どういう訳かそういうジョブの新人が増えたよね」
俺が言うと、シルビアが呆れた顔でこちらを見た。
「何?」
「あんた理由を知らないの?」
再び呆れ顔のシルビア。
「知らないよ」
「あんたの友達が部屋の温度を快適にするやつ売っているから、いままで貴族に雇われていた炎や氷の魔法の使い手が失業しているのよ」
「あー」
エアコンの売れ行きが良いのはいいことだが、そのせいで既存の職業の立場が奪われているわけか。
昔はコピー技師なんてのもありましたね。
そういえば、第三話でコピー技師じゃなくて良かったとか言った気もするが、転生前でもコピー技師じゃなくてよかったな。
その流れで行くと、今後は自動運転の技術が確立すると、タクシードライバーなんかも失業しちゃいますね。
「みんな無職になっちゃうの?」、「それがサダメならね」って感じですか?
どこの谷だかわかりませんが、僕は鶯谷がいいです。
ちょっと暗い話になったので、ここでこの話題を打ち切った。
シルビアはまた訓練所に戻っていき、俺は暇になったのでコーヒーを飲んで時間を潰す。
すると、今度はホーマーとシャレードが相談にやってきた。
なんでも、新商品を開発しているのだが、寸法不良が出てしまい、うまくいかないのだとか。
それは品質管理じゃなくて、生産技術案件じゃないのかと言ったが、オッティに相談すると金がかかるうえに、アイデアを持っていかれる可能性があるから駄目なんだとか。
確かに、オッティにアイデアを相談したら、こちらよりもはるかにいい物を作りそうだよな。
スキルがチートなんだから。
「で、どんな不具合が出ているんだ?」
俺がホーマーに訊ねると、
「パイプの端部をフォーミング加工して、反対側を溶接してから、フォーミングした側の組み付けをしようとしたら嵌合できなかったんです」
と答えた。
フォーミング加工とは線材や板材の塑性加工のことであるが、管材でもフォーミング加工をしている。
「まずは現物を見てみたいんだけど」
「それじゃあ工房に移動しましょう」
そんなわけで、三人で工房に移動する。
そこで見せられた試作品は雨どいだった。
漏斗のように広げた端部のすぐ近くに別のパイプがL字に溶接してある。
そいつに蓋をつけたいそうなのだが、その蓋がどうしても嵌らないのだ。
蓋の目的は落ち葉避けである。
「家の壁にとって雨水は大敵だからな。屋根から垂らすのではなくて、一か所に集めて地面に流したい」
とシャレードが説明してくれた。
なんでも、大陸の東方にある国で商人が見かけたのだという。
まあ、こんなものは瓦屋根がないと発達しないだろうな。
最近の日本の住宅でも、雨どい無いのもあるし。
あれだと、雨水が壁に湿気を与えるからよくないんだけどね。
その辺は素材でカバーできているのかな?
おっと、前世の住宅についてはまあいいか。
「あー、蓋に対して雨どいの方が歪んでいるな」
渡された現物は測定するまでも無く歪んでいる。
蓋に対してのクリアランスが無さ過ぎるってのもあるのだろうな。
少しの変形があると、こうして嵌めあいに問題がでるのだから。
「クリアランスが無さ過ぎだよ」
俺の指摘に対して、ホーマーは少し怒ったような表情になる。
「ドワーフなら、これくらいのクリアランスで十分だと思ったんですよね。それに溶接前に確認するとキチンとはまっていますから」
「溶接前は嵌るの?」
「はい」
だとすると、溶接の熱で残留応力が除去されて、寸法に変化があったのかな。
樹脂成形だとアニール処理なんて言われたりもするが、残留応力のある製品に熱を加えると寸法が変化する。
特に加工部位なんかだと顕著だ。
水分を除去する乾燥炉に入れただけで、かなり寸法が変化するものもあるしな。
というか、それで問題になった事がある。
図面寸法から逸脱していると言われたが、どんなに検査をしても不良は見つからない。
それなのに、客先ではほぼ全てが寸法不良になっているのだ。
後工程を確認したら、弊社の製品に熱が加わる工程があり、そこで変形が発生していたのである。
そんなもん、こちらとしてはわかりようもないですがな。
こちらとしては、客先での受け入れ時に図面スペックを満足しているので、勿論なんの対応もしませんでしたよ。
というか、なんで試作時にその不具合が出なかったのか不思議ですね。
似たような話は、当然自社でもあって、工程の流れをぶったぎって、途中に熱処理を入れて対応してます。
多分見積り間違って、利益は出ていないと思うんだけど、不良品を納品するわけにはいかないから、仕方のない事ですよね。
前世の話だから、今どうなったかはわかりません。
「一度熱を加えて、残留応力を除去してから仕上げをすればいいかな」
そこで閃く。
「熱処理用に魔法使いを雇わないか?」
熱処理のための温度管理をするのに、そんな便利な設備が無いので、どうしても感覚によるものでしか出来ないが、仕事がない魔法使いが世の中に余っているので、熱処理の仕事を与えたらいいんじゃないだろうか。
温度計と時間のわかるタイマーは必要だけど。
むしろ、その辺もスキルで何とかならないものか。
賢者の学院でマジックアイテムとして作ってくれてもいいけどね。
「熱処理か、確かに他のドワーフと違って、溶接工ってジョブだと焼き入れなんかもスキルがないんだよね。ただ、自分だけの稼ぎだと無理かな」
「そこは他の工房からも仕事を受ければいいさ。熱処理は種類が多いからな。素材の焼鈍をしてもいいし」
そう提案してみる。
まあ、俺のスキルなら焼鈍材を作るのも可能なのだが、一般の工房向けに材料は作ってないからな。
需要を掘り起こすことが出来るかもしれないぞ。
「それが出来るなら、雇ってみようかな」
「人の手配は任せてくれ。あとは、熱処理の条件も確認しておく」
まあ、ネットスーパーもどきのスキルで、電気炉購入も出来るから、それに熱処理のプログラム組んでもいいんだけどね。
それだと失業対策にならないからやらないだけで。
蛍光エックス線分析機といい、誰がそんなもんネット通販で買うんだよと思うんだけど、需要あるんだろうな。
そうして、シルビアから魔法使いを紹介してもらい、熱処理の仕事を始めることになった。
それについては、またの機会で。
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