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第325話 モンキーレンチ
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「静まれ俺の右腕」って言いながら、成績書を偽装するネタを書こうと思っていましたが、とあるメーカーがとても大きな品質偽装をやってくれたおかげで没になりました。
残念です。
それでは本編いってみましょう。
「静まれ……俺の……右腕」
左手で右腕の手首付近を持って、俺はそう呟いた。
そこを丁度やってきたシルビアに見られた。
「アルト……何をやって……」
ドン引きされているのがわかる。
「カフェインが切れたらしく、右腕が震えていたのでちょっと……」
「コーヒーの飲み過ぎには注意しなさい」
「はい……」
なんて気まずいんだ。
みんな、カフェイン中毒にならないように気を付けてね。
「ところで何の用?」
シルビアが俺のところにやってくるのは大体時間つぶしなのだが、念のため確認をしてみた。
「さっきデボネアのところに行ったんだけど、アルトを呼んできて欲しいって言ってたわよ」
「急ぎかな?」
「そんな雰囲気じゃなかったわね。急ぎなら自分から来るでしょ」
「それもそうか」
確かに、いつもトラブルがあるとこちらに来ていたな。
まあ、何もすることが無いから、今から行ってみるか。
「行ってくるよ」
「お土産買ってきてね」
「お土産!?」
なんでステラの街から出ないのにお土産が必要なんだよ。
面倒なので、冒険者ギルドの入り口で子供たちが販売しているドラ焼きにしよう。
直ぐに渡せるから温かいしね。
そんなわけで、デボネアの工房にレッツラゴー。
「こんにちはー」
店には誰もいなかったので、大きな声を出して挨拶をした。
「アルトか。早かったのう」
奥の工房の方からデボネアの声が聞こえた。
俺は工房に向かう。
「こいつの相談をしたかったんじゃが」
デボネアがそう言って指を指したのは、壁に立てかけてある金属のシャフトだ。
多分鉄系の材料だな。
その端部にはオスネジが切ってある。
「あれがどうしたの?」
「ネジっちゅーのは便利なもんで、部品を交換するのが楽なんじゃが、丸棒に相手物を締めこむ時に、抑えが効かなくてしっかりと締めこむのが大変なんじゃよ」
さて、ネジのない世界での結合方法をもう一度見てみよう。
まずはロウ付け、そして鋳掛、それに接着、あとは釘。
どれも部品が破損や摩耗した時に交換するのが大変だ。
まあ、ロウ付けなんてロウの融点まで加熱してやれば、接合した部品を外すことは出来るのだが。
試作品で一個しかない部品を逆付けしたときなど、試作部門がよくやっているぞ。
母材を溶かさないから出来る技だな。
まあ、慣れる程度には逆付けしているのは問題だろうが。
溶接になると母材が溶けているので、簡単にはいかない。
まあ出来ないわけじゃないのだが。
点付け溶接などは、サンダーで溶接部を削って剥がしている。
なにせ、治具などの位置決めを溶接で行ったりするので、位置決めしてあるピンやセクションに問題が発生した時は、そうやって分解するしかないのだ。
それが出来ないと、全部作り直しになるからね。
釘ならなんとかなるのだが、それでも穴は空いてしまう。
あ、くさびなんてのもあるけど、使える場所が限られるな。
そんなわけで、ネジの登場は画期的なのである。
ネジに欠点が無いかというとそうでもないので、必ずしもネジがいいという訳でもないんだが。
なにせ、ネジは緩みやすいというのがあるから。
ネジ用の接着剤を使っても、その能力を超える力が加えられたら結局は緩むので。
それでもネジが選ばれているのだから、やはり接合はネジがいいんだろう。
さて、そんなネジのノウハウがまだないこの世界では、丸棒の端部にあるネジを締めこむためのノウハウも無い。
丸い棒なので、掴んでいても滑ってしまうので、大きなトルクをかけようとしても、中々うまくいかないわけだ。
じゃあ、どうしたらってなるが、
「スパナ掛けを追加工しましょう」
「スパナ掛け?」
デボネアはオウム返しに訊いてくる。
スパナ掛けとは丸棒の一部を削って平面にし、そこにスパナを掛けるための加工である。
これで丸棒を押さえながらネジを締めこんでいくのだ。
なお、スパナを使わずにモンキーレンチを使う事が多いのだが、何故か呼び名はスパナ掛けである。
余談ではあるが、モンキーレンチはJIS B4604で規定されている。
規格名称はモンキレンチで、英語名称はアジャスタブルレンチなので、どの辺がモンキーレンチなんだよと言いたくなるな。
発明したのがモン・キーという人物であると民明書房で読んだ気がする。
いや、文季亥だったかな?
モンキーレンチの起源は中国だと思います。
詳しくはWikipediaを見てください。
設備屋で仕事をしていたときに、若い設計者がスパナ掛けの設計をしなくて、旋盤屋から入ってきたシャフトを、職人が追加工してましたね。
スパナ掛けを知らなかったのが原因でした。
最初は可哀想だと思ったけど、何度もやらかしていたので、同情も無くなりましたがね。
最後は自分で追加工させられていましたよ。
さて、そんなわけで俺の指示でデボネアが丸棒を削って平らな面を作る。
フライス加工をハンドワークで行うとは、やはりドワーフ凄い。
そこにネットスーパー的なアレで購入したモンキーレンチを掛けて固定した。
「これなら動かんわい」
こうしてスパナ掛けが導入されることとなった。
※作者の独り言
男塾名物『門季亥廉恥』の方が良かったかな?
残念です。
それでは本編いってみましょう。
「静まれ……俺の……右腕」
左手で右腕の手首付近を持って、俺はそう呟いた。
そこを丁度やってきたシルビアに見られた。
「アルト……何をやって……」
ドン引きされているのがわかる。
「カフェインが切れたらしく、右腕が震えていたのでちょっと……」
「コーヒーの飲み過ぎには注意しなさい」
「はい……」
なんて気まずいんだ。
みんな、カフェイン中毒にならないように気を付けてね。
「ところで何の用?」
シルビアが俺のところにやってくるのは大体時間つぶしなのだが、念のため確認をしてみた。
「さっきデボネアのところに行ったんだけど、アルトを呼んできて欲しいって言ってたわよ」
「急ぎかな?」
「そんな雰囲気じゃなかったわね。急ぎなら自分から来るでしょ」
「それもそうか」
確かに、いつもトラブルがあるとこちらに来ていたな。
まあ、何もすることが無いから、今から行ってみるか。
「行ってくるよ」
「お土産買ってきてね」
「お土産!?」
なんでステラの街から出ないのにお土産が必要なんだよ。
面倒なので、冒険者ギルドの入り口で子供たちが販売しているドラ焼きにしよう。
直ぐに渡せるから温かいしね。
そんなわけで、デボネアの工房にレッツラゴー。
「こんにちはー」
店には誰もいなかったので、大きな声を出して挨拶をした。
「アルトか。早かったのう」
奥の工房の方からデボネアの声が聞こえた。
俺は工房に向かう。
「こいつの相談をしたかったんじゃが」
デボネアがそう言って指を指したのは、壁に立てかけてある金属のシャフトだ。
多分鉄系の材料だな。
その端部にはオスネジが切ってある。
「あれがどうしたの?」
「ネジっちゅーのは便利なもんで、部品を交換するのが楽なんじゃが、丸棒に相手物を締めこむ時に、抑えが効かなくてしっかりと締めこむのが大変なんじゃよ」
さて、ネジのない世界での結合方法をもう一度見てみよう。
まずはロウ付け、そして鋳掛、それに接着、あとは釘。
どれも部品が破損や摩耗した時に交換するのが大変だ。
まあ、ロウ付けなんてロウの融点まで加熱してやれば、接合した部品を外すことは出来るのだが。
試作品で一個しかない部品を逆付けしたときなど、試作部門がよくやっているぞ。
母材を溶かさないから出来る技だな。
まあ、慣れる程度には逆付けしているのは問題だろうが。
溶接になると母材が溶けているので、簡単にはいかない。
まあ出来ないわけじゃないのだが。
点付け溶接などは、サンダーで溶接部を削って剥がしている。
なにせ、治具などの位置決めを溶接で行ったりするので、位置決めしてあるピンやセクションに問題が発生した時は、そうやって分解するしかないのだ。
それが出来ないと、全部作り直しになるからね。
釘ならなんとかなるのだが、それでも穴は空いてしまう。
あ、くさびなんてのもあるけど、使える場所が限られるな。
そんなわけで、ネジの登場は画期的なのである。
ネジに欠点が無いかというとそうでもないので、必ずしもネジがいいという訳でもないんだが。
なにせ、ネジは緩みやすいというのがあるから。
ネジ用の接着剤を使っても、その能力を超える力が加えられたら結局は緩むので。
それでもネジが選ばれているのだから、やはり接合はネジがいいんだろう。
さて、そんなネジのノウハウがまだないこの世界では、丸棒の端部にあるネジを締めこむためのノウハウも無い。
丸い棒なので、掴んでいても滑ってしまうので、大きなトルクをかけようとしても、中々うまくいかないわけだ。
じゃあ、どうしたらってなるが、
「スパナ掛けを追加工しましょう」
「スパナ掛け?」
デボネアはオウム返しに訊いてくる。
スパナ掛けとは丸棒の一部を削って平面にし、そこにスパナを掛けるための加工である。
これで丸棒を押さえながらネジを締めこんでいくのだ。
なお、スパナを使わずにモンキーレンチを使う事が多いのだが、何故か呼び名はスパナ掛けである。
余談ではあるが、モンキーレンチはJIS B4604で規定されている。
規格名称はモンキレンチで、英語名称はアジャスタブルレンチなので、どの辺がモンキーレンチなんだよと言いたくなるな。
発明したのがモン・キーという人物であると民明書房で読んだ気がする。
いや、文季亥だったかな?
モンキーレンチの起源は中国だと思います。
詳しくはWikipediaを見てください。
設備屋で仕事をしていたときに、若い設計者がスパナ掛けの設計をしなくて、旋盤屋から入ってきたシャフトを、職人が追加工してましたね。
スパナ掛けを知らなかったのが原因でした。
最初は可哀想だと思ったけど、何度もやらかしていたので、同情も無くなりましたがね。
最後は自分で追加工させられていましたよ。
さて、そんなわけで俺の指示でデボネアが丸棒を削って平らな面を作る。
フライス加工をハンドワークで行うとは、やはりドワーフ凄い。
そこにネットスーパー的なアレで購入したモンキーレンチを掛けて固定した。
「これなら動かんわい」
こうしてスパナ掛けが導入されることとなった。
※作者の独り言
男塾名物『門季亥廉恥』の方が良かったかな?
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