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第328話 腐った迷宮ミカンの方程式 3年B組手直しフロー先生
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「呼んだ?」
唐突にカイエン隊がやってきた。
呼んでないぞ。
「残念ながら、今回カイエン隊の出番は無いぞ」
「そうなの……」
俺が否定すると、カイエン隊のメンバーはトボトボと帰っていった。
遠ざかる彼らの影が人ごみに消えた。
これ以上はどこかから怒られそうなので、やめておこう。
こら果糖ですよ。
みかんだけに。
そんなことを思って、独り相好を崩した。
若い人置いてけぼりなのはいつもの事か。
反省してません!
そんなオープニングがあったとか無かったとか。
ここは荒川土手じゃねえ!!
忘我耽溺?
「アルト、相談があるんだが……」
意気消沈した雰囲気でやってきたのはギャランだ。
どうしたのだろうか?
「迷宮ミカンってしっているか?」
「迷宮で採れるミカンだよな」
「そうだ。甘くておいしいので冒険者ギルドで常時買取をしている果物だ」
外見は普通のミカンだ。
味も前世のミカンにかなり近い。
とある完成車両メーカーに例えるなら矢島工場と北工場くらいの近さだ。
因みに、ミカンと夏ミカンは矢島工場と伊勢崎工場くらいの近さだな。
非常に自動車関係者にわかりやすい比喩だと自画自賛。
いや、三好工場と高岡工場っていう方が一般的だったかな。
さて、そんな迷宮ミカンがどうしたというのだろうか?
「実は迷宮ミカンは黒点病っていう病気にかかりやすくてな。こいつにかかっている奴が近くにあると、他の迷宮ミカンにもどんどん広がっちまうんだよ。だから、黒点病の箇所を除去して出荷しているんだ」
「腐ったミカンの方程式か」
「腐ったミカンの方程式?」
うっかり、前世の記憶に基づいた発言をしてしまった。
この世界に鉄也はいないんだった。
当然ギャランはわからない。
黒点病というのは、果物の表面に黒いカビが繫殖して腐らせてしまうという病気だ。
当然商品価値は失われる。
「腐ったミカンがあると、同じ箱の他のミカンも腐ってしまうから、早めに腐ったミカンを取り出さないといけないってことだな」
「そう、まさしくそれなんだよ。買い取った迷宮ミカンを街の食堂に売るんだけど、黒点病の検査と該当箇所の除去を冒険者ギルドでやっているんだ。今回黒点病を見逃して、売った迷宮ミカンが調理する前に全部腐っちまってなあ。買った店から苦情が来たんだよ」
「見落としかあ」
ギャランの話を聞くと、単純な見逃しだろうか。
まあ、現物を見てみないで断定するのはいかんのだが。
「現物をみたいんだろう。一緒に来てくれ、作業場に回収した現物があるから」
ギャランも何度かの不具合の相談を経て、段々わかってきたようだな。
三現主義だぞ。
二人で買取部門の作業場に向かった。
作業現場に到着すると、ミカンの甘い匂いが鼻を突いた。
果物は腐りかけが一番旨いと言っていたのは誰だったろうか。
多分、高田由美。
これが品質管理をテーマにした小説じゃなければ、高田由美出演と思われるアレなアニメの話で5万文字くらい書いていると思います。
良い子はググっちゃ駄目だぞ。
「随分と迷宮ミカンは匂いが強いんだな」
俺は隣のギャランに感想を伝えた。
「黒点病で腐ると余計だな。ここまでの匂いを出していると食い物にはらなんよ」
「香りを楽しめばいいんじゃないかな」
「それは確かにそうだな。その方向で商品開発してみようか」
俺の言葉をヒントに、ギャランは腐ったミカンの有効活用を考えるようだ。
NG品も有効活用できるか考えるよね。
ただ廃棄するってのも芸がない。
まあ、大抵は会社案内のパンフレットに製品事例として写真をのっけるくらいだが。
「で、これが現物か」
俺は作業台の上に置かれた木箱をのぞき込んだ。
黒点病の迷宮ミカンがびっしりと詰まっている。
迷宮ミカンは全て黒点病に罹患しているのだが、黒点の多さは放射状に減っている。
これを見ると、見逃した迷宮ミカンからどんどんカビが広がったのがわかるな。
「ん――」
俺は黒点病の中心の迷宮ミカンに除去を実施した痕跡があるのに気が付いた。
表面の一部が鋭い刃物で切られているのだ。
「ギャラン、黒点病の迷宮ミカンって廃棄するんじゃなくて、黒点病の箇所を除去するの?」
「そうだ。料理につかうなら外観は関係ないからな」
「なるほどねえ」
どうやら黒点病の見逃しは見逃しなんだろうけど、今回の件は除去したと思って梱包したが、除去しきれていなかったというわけか。
「作業者の聞き取りをしたいんだけど」
「わかったよ」
ギャランに紹介された作業者はヴァーソとコンフォートという二人の男だった。
「自分は黒点病があるかないかを検査しています」
ヴァーソはそう答えた。
「自分はヴァーソが見つけた黒点病を除去しています」
コンフォートはそう答えた。
「コンフォートに聞きたいんだが、黒点病を除去した迷宮ミカンはどうしているんだ?もう一回ヴァーソに見てもらっているかい?」
俺の質問に、コンフォートは首を横に振った。
「除去が終わったものは箱詰めしています」
「そうか」
やはりな。
さて、もう一つ確認だな。
「ギャラン、ここの作業場に手直しフローはあるのか?」
「手直しフロー?初めて聞くな」
「手直しフローっていうのは、手直ししたものをどうやって流すかを決めたルールだと思ってもらいたい。今回でいえば、黒点病を除去したらどうするかって事だな」
「ああ、それなら除去が終わったらそのまま箱に詰めることになっているぞ」
ギャランは当然だろと付け加えた。
当然じゃないんだよな。
「手直しをしたら第三者による検査が必要だな。本来の検査工程に戻すのが一般的、いや、ここでは一般的ではないか。まあ、ヴァーソにもう一回検査してもらうのがいいんだよ。なにせ、コンフォートは自分の作業が終わったと思っているのだから、除去は出来たという思い込みがある」
これは何も今回の作業者に限った事じゃない。
工場の手直しでも、手直し後は正規の検査工程にもう一度戻すのだ。
その際、検査員と手直し作業者は別であることが絶対だ。
さらにいえば、その手直しフローを現場に掲示しなければならない。
今回のフローを書くなら
↓←←←←
↓ ↑
検査→手直し
↓
梱包
というのが正しいフローだな。
検査→手直し
↓ ↓
梱包←←←
ってなっている工程は結構あるが。
流石にティア2レベルまでは手直し後に検査せずに梱包っていうのは無くなってきたが、流出原因をみると検査工程に戻さなかったっていうのはまだある。
ティア3になると、そもそも検査工程に戻すルールがない。
まあ、ここだけの話、ルールがないほうが対策書は書きやすいんだけどな。
手直し品を正規の検査工程に戻すルールがあったのに、何故それを遵守できなかったのかっていうのは非常に対策を立てにくい。
ルールを知っていたが守らなかったにしても、ルールをうっかり忘れたにしても、再発しないための仕組みづくりが大変だ。
知っていたが守らなかったはどうにもならんがね。
誰か代わりに対策書を書いてください。
「大丈夫かアルト、今にも死にそうな顔をしているけど」
ギャランが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「大丈夫、人生にちょっと諧謔が足りないだけだから」
「そうか……」
嫌な事を思い出したな。
前世の事だから笑い飛ばせばいいのに。
来週までに対策を考えなきゃいけない人生なんてここにはないんだぞ。
来週ですよ……
「二人が文字が読めるなら、フローを書いて壁にでも貼っておこう。兎に角、検査に一度戻す事を忘れないようにすれば、再発は防止できるはずだ」
「わかったよ」
ギャランは理解してくれたようだ。
これにて一件落着。
来週の事も落着してくれないかな……
※作者の独り言
手直しフローは全てのラインに教育済みのはずなんですが、どうして遵守出来ないのでしょうか。
ねえどうして、凄く凄く単純な事、ただ伝えたいだけなのに、うまくいかないんだろう?
ねえせめて不良出ないでと願う月に限って一度も出来てはくれないね。
ねえどうして涙が出ちゃうんだろう。
これ、僕の考えたオリジナルの言葉ですからね。
金八先生と高田由美の話はまたどこかで。
唐突にカイエン隊がやってきた。
呼んでないぞ。
「残念ながら、今回カイエン隊の出番は無いぞ」
「そうなの……」
俺が否定すると、カイエン隊のメンバーはトボトボと帰っていった。
遠ざかる彼らの影が人ごみに消えた。
これ以上はどこかから怒られそうなので、やめておこう。
こら果糖ですよ。
みかんだけに。
そんなことを思って、独り相好を崩した。
若い人置いてけぼりなのはいつもの事か。
反省してません!
そんなオープニングがあったとか無かったとか。
ここは荒川土手じゃねえ!!
忘我耽溺?
「アルト、相談があるんだが……」
意気消沈した雰囲気でやってきたのはギャランだ。
どうしたのだろうか?
「迷宮ミカンってしっているか?」
「迷宮で採れるミカンだよな」
「そうだ。甘くておいしいので冒険者ギルドで常時買取をしている果物だ」
外見は普通のミカンだ。
味も前世のミカンにかなり近い。
とある完成車両メーカーに例えるなら矢島工場と北工場くらいの近さだ。
因みに、ミカンと夏ミカンは矢島工場と伊勢崎工場くらいの近さだな。
非常に自動車関係者にわかりやすい比喩だと自画自賛。
いや、三好工場と高岡工場っていう方が一般的だったかな。
さて、そんな迷宮ミカンがどうしたというのだろうか?
「実は迷宮ミカンは黒点病っていう病気にかかりやすくてな。こいつにかかっている奴が近くにあると、他の迷宮ミカンにもどんどん広がっちまうんだよ。だから、黒点病の箇所を除去して出荷しているんだ」
「腐ったミカンの方程式か」
「腐ったミカンの方程式?」
うっかり、前世の記憶に基づいた発言をしてしまった。
この世界に鉄也はいないんだった。
当然ギャランはわからない。
黒点病というのは、果物の表面に黒いカビが繫殖して腐らせてしまうという病気だ。
当然商品価値は失われる。
「腐ったミカンがあると、同じ箱の他のミカンも腐ってしまうから、早めに腐ったミカンを取り出さないといけないってことだな」
「そう、まさしくそれなんだよ。買い取った迷宮ミカンを街の食堂に売るんだけど、黒点病の検査と該当箇所の除去を冒険者ギルドでやっているんだ。今回黒点病を見逃して、売った迷宮ミカンが調理する前に全部腐っちまってなあ。買った店から苦情が来たんだよ」
「見落としかあ」
ギャランの話を聞くと、単純な見逃しだろうか。
まあ、現物を見てみないで断定するのはいかんのだが。
「現物をみたいんだろう。一緒に来てくれ、作業場に回収した現物があるから」
ギャランも何度かの不具合の相談を経て、段々わかってきたようだな。
三現主義だぞ。
二人で買取部門の作業場に向かった。
作業現場に到着すると、ミカンの甘い匂いが鼻を突いた。
果物は腐りかけが一番旨いと言っていたのは誰だったろうか。
多分、高田由美。
これが品質管理をテーマにした小説じゃなければ、高田由美出演と思われるアレなアニメの話で5万文字くらい書いていると思います。
良い子はググっちゃ駄目だぞ。
「随分と迷宮ミカンは匂いが強いんだな」
俺は隣のギャランに感想を伝えた。
「黒点病で腐ると余計だな。ここまでの匂いを出していると食い物にはらなんよ」
「香りを楽しめばいいんじゃないかな」
「それは確かにそうだな。その方向で商品開発してみようか」
俺の言葉をヒントに、ギャランは腐ったミカンの有効活用を考えるようだ。
NG品も有効活用できるか考えるよね。
ただ廃棄するってのも芸がない。
まあ、大抵は会社案内のパンフレットに製品事例として写真をのっけるくらいだが。
「で、これが現物か」
俺は作業台の上に置かれた木箱をのぞき込んだ。
黒点病の迷宮ミカンがびっしりと詰まっている。
迷宮ミカンは全て黒点病に罹患しているのだが、黒点の多さは放射状に減っている。
これを見ると、見逃した迷宮ミカンからどんどんカビが広がったのがわかるな。
「ん――」
俺は黒点病の中心の迷宮ミカンに除去を実施した痕跡があるのに気が付いた。
表面の一部が鋭い刃物で切られているのだ。
「ギャラン、黒点病の迷宮ミカンって廃棄するんじゃなくて、黒点病の箇所を除去するの?」
「そうだ。料理につかうなら外観は関係ないからな」
「なるほどねえ」
どうやら黒点病の見逃しは見逃しなんだろうけど、今回の件は除去したと思って梱包したが、除去しきれていなかったというわけか。
「作業者の聞き取りをしたいんだけど」
「わかったよ」
ギャランに紹介された作業者はヴァーソとコンフォートという二人の男だった。
「自分は黒点病があるかないかを検査しています」
ヴァーソはそう答えた。
「自分はヴァーソが見つけた黒点病を除去しています」
コンフォートはそう答えた。
「コンフォートに聞きたいんだが、黒点病を除去した迷宮ミカンはどうしているんだ?もう一回ヴァーソに見てもらっているかい?」
俺の質問に、コンフォートは首を横に振った。
「除去が終わったものは箱詰めしています」
「そうか」
やはりな。
さて、もう一つ確認だな。
「ギャラン、ここの作業場に手直しフローはあるのか?」
「手直しフロー?初めて聞くな」
「手直しフローっていうのは、手直ししたものをどうやって流すかを決めたルールだと思ってもらいたい。今回でいえば、黒点病を除去したらどうするかって事だな」
「ああ、それなら除去が終わったらそのまま箱に詰めることになっているぞ」
ギャランは当然だろと付け加えた。
当然じゃないんだよな。
「手直しをしたら第三者による検査が必要だな。本来の検査工程に戻すのが一般的、いや、ここでは一般的ではないか。まあ、ヴァーソにもう一回検査してもらうのがいいんだよ。なにせ、コンフォートは自分の作業が終わったと思っているのだから、除去は出来たという思い込みがある」
これは何も今回の作業者に限った事じゃない。
工場の手直しでも、手直し後は正規の検査工程にもう一度戻すのだ。
その際、検査員と手直し作業者は別であることが絶対だ。
さらにいえば、その手直しフローを現場に掲示しなければならない。
今回のフローを書くなら
↓←←←←
↓ ↑
検査→手直し
↓
梱包
というのが正しいフローだな。
検査→手直し
↓ ↓
梱包←←←
ってなっている工程は結構あるが。
流石にティア2レベルまでは手直し後に検査せずに梱包っていうのは無くなってきたが、流出原因をみると検査工程に戻さなかったっていうのはまだある。
ティア3になると、そもそも検査工程に戻すルールがない。
まあ、ここだけの話、ルールがないほうが対策書は書きやすいんだけどな。
手直し品を正規の検査工程に戻すルールがあったのに、何故それを遵守できなかったのかっていうのは非常に対策を立てにくい。
ルールを知っていたが守らなかったにしても、ルールをうっかり忘れたにしても、再発しないための仕組みづくりが大変だ。
知っていたが守らなかったはどうにもならんがね。
誰か代わりに対策書を書いてください。
「大丈夫かアルト、今にも死にそうな顔をしているけど」
ギャランが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「大丈夫、人生にちょっと諧謔が足りないだけだから」
「そうか……」
嫌な事を思い出したな。
前世の事だから笑い飛ばせばいいのに。
来週までに対策を考えなきゃいけない人生なんてここにはないんだぞ。
来週ですよ……
「二人が文字が読めるなら、フローを書いて壁にでも貼っておこう。兎に角、検査に一度戻す事を忘れないようにすれば、再発は防止できるはずだ」
「わかったよ」
ギャランは理解してくれたようだ。
これにて一件落着。
来週の事も落着してくれないかな……
※作者の独り言
手直しフローは全てのラインに教育済みのはずなんですが、どうして遵守出来ないのでしょうか。
ねえどうして、凄く凄く単純な事、ただ伝えたいだけなのに、うまくいかないんだろう?
ねえせめて不良出ないでと願う月に限って一度も出来てはくれないね。
ねえどうして涙が出ちゃうんだろう。
これ、僕の考えたオリジナルの言葉ですからね。
金八先生と高田由美の話はまたどこかで。
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