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第386話 盾の所有者になりたがり
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ジムカーナでドリフトしている車の制御に失敗して、ガードレールに突っ込んだ時に、かなりお高い請求額が来たとか。
サーキットのガードレール、海外からの輸入品でしたね。
そんなに違うもんなんか?
という、個人的な昔の思い出です。
作品とは関係ありません。
それでは本編いってみましょう。
今日はデボネア、エッセ、ホーマーのドワーフ三人に呼ばれて、防具の改善についての相談にのっていた。
「盾の強度を上げたいんだけど、厚みを増やすと重量が増えて扱いにくくなるじゃないか。なにかいい方法はないのかな?」
エッセに言われるが、それならば盾を分厚くするしかないんじゃないだろうか。
という結論になる。
「エルフとか新人冒険者が扱えるようにすれば、きっと需要があるんじゃないかと思うんだよね」
「そうじゃな。体を鍛えてからでは時間が掛かりすぎる」
エッセの意見にデボネアが説明を加える。
それは判らなくもないが、盾と言っても色々な種類がある。
小さい盾を使えばいいんじゃないだろうか。
「ラウンドシールド、ほらバックラーなんかは小さいから重量もそんなに増えないと思うけど」
ラウンドシールドとは丸い盾のことで、バックラーはその一種である。
片手で持って相手の剣を防ぐのに使う。
一般的な使い方は腕を真っ直ぐに伸ばして、なるべく相手の近くに持って行くのだ。
相手の持っている武器の近くであれば、攻撃の初動では防ぐべき範囲は小さくなる。
武器を持ったときの腕の長さから、三角関数で計算すればわかると思うけどね。
なので、こうすることで小さい盾の面積を補う。
だが、俺の考えはエッセ達の思っていたこととは違った。
「バックラーだと面積が小さいから上半身への攻撃はいいんだけど、下半身を防護するのがねえ。特に初心者が扱うとなると飛び道具の防衛もやりたいし。それに、鈍器の攻撃への対応を考えているからね。大きめの盾でいざとなったら両手で持てるようなのがいいかなと」
大きさと重量は比例する。
そんな都合のいいものなんか存在しない。
いや、待てよ。
「ビード加工とガードレールがあったな」
と前世を思い出す。
ビード加工っていうのは、鉄板の一部を盛り上がらせる加工である。
ひも出し加工などとも呼ばれるらしいが、まったく聞いたことは無いな。
円筒だったり三角だったりするが、目的は全て一緒で重量を増やさずに強度を増加させることが出来る。
自動車の鉄製ブラケット部品を見ると、このビード加工はよく目に付く。
200話くらい前にドラム缶作ったけど、そこでもビード加工はしている。
それとガードレールだ。
ガードレールの強度は7ランクに分けられるそうだが、最も強度が強いのは山の数が多い。
単なる板の状態に比べて、数十倍の強度にもなるというのだ。
JIS規格じゃないから詳しくないけど。
一度設計にどうしてそうなるのか聞いたことがあるが、外部から力が加わった時にビードや折り曲げがあることで、力が分散してくれるからだとのこと。
鉄板を折り曲げてやり、更には取っ手にはビード加工を施せば、重量を増やさずとも強度を増加させられるな。
鉄板を折り曲げるのをどうするかって話だが。
「鋳造するかの?」
デボネアは鋳造を提案してきたが、出来れば靭性のある鉄を曲げたい。
打撃で割れる可能性があるから。
超硬で作った金型も磨耗には強かったけど、単純な衝撃には弱かった。
パキンと逝ったよ。
やっぱり靭性は大切だよね。
硬いだけじゃ駄目なんですよ。
という事で、デボネアの案には反対だ。
「ここはやはり、オッティに頼んで作ってもらうか。ただ、それをそのまま使うのではなく、こちらで二次加工すれば付加価値もうまれるだろうし」
困ったときのオッティ頼みだ。
取っ手の溶接はホーマーがやるから、部品の作成のみをお願いすることになる。
今回は流石に自分達ではどうにもならないので、外注することに異論は出なかった。
三人は仕事があるので、俺が一人でオッティのところに行く事になる。
まあ、俺にも仕事があるのだけれど、それはそれ。
品質管理部なんて暇な方がいいんだよ!
そんなわけで、やってきましたグレイス領。
早速オッティに今回の趣旨を説明する。
「んなもん、ポリカーボネートでライオットシールド造ればいいだろ」
とこちらの案を全面否定。
「それだとファンタジー風味が無いじゃないか」
そう反論した。
まあ、賢者の学院辺りでポリカーボネートそっくりな何かを発明してくれそうな気もするが。
ポリカーボネートっていうのは丈夫なプラスチックと思ってもらえばいいだろう。
しかも透明なものもあるので、一般的には信号機だったりCDやDVDに使われている。
自動車の部品でも>PC<って表記があったらそれはポリカーボネートだ。
ヘッドライトとかのクリアー成形なんかですね。
うん、ファンタジーじゃない。
「それじゃなにか、スキルで作り出すプレス機にファンタジー風味が有るとでも?」
オッティは俺を残念な子を見るような、憐憫の眼差しで見てくる。
「それはプレス機であっても、チートスキルで作り出したプレス機だからファンタジーなんだよ」
そう反論した。
「それならポリカーボネートだってスキルで作り出したらファンタジーじゃないか」
「ぐぬぬ」
結局オッティはライオットシールドを作ることになり、それとは別でガードレールシールドの部品も作ってくれることになった。
どちらが売れるか勝負ということになったのである。
剣と魔法の世界でライオットシールドとガードレールを売る対決っていうのもなんだが。
帰りはガードレールの部品を沢山と、サンプルとしてのライオットシールドを一つ貰っていくことになった。
重量はたいしたことないし、そもそも収納魔法があるから重量も気にしていないのだが、これが前世だったら新規部品の重量はIMDSと検査成績書の両方で要求されていたぞ。
というか、IMDSを未登録のまま突っ走っているティア1が、ついに車両メーカーに怒られて弊社に直ぐに重量を連絡しろと電話してきたのですが、そもそもお宅の支給部品でユニットになっている物を、どうして弊社で部品単位で重量がわかるんだよと。
新規品の重量の管理面倒ですよね。
IMDSについてもそうなんですが。
そもそも、今時納入に添付する成績書にIMDSのID番号記入する項目あるんじゃないのかなと思っているのですが、どうしてそれをスルー出来たのか疑問です。
因みに、IMDSって客先承認される必要があったはずなんだけど、その辺もどうなっているのでしょうかね。
おっと、転生した設定を忘れていました。
ステラに帰り着くと早速三人にガードレールシールドとライオットシールドを見せた。
「この透明の盾凄く軽いんだけど、これで相手の攻撃を防げるの?」
ホーマーが盾を振り回して不思議そうにしている。
まあその気持ちはよくわかる。
なので、工房にあった木の棒でライオットシールドを持つホーマーを攻撃した。
ポリカーボネート製の盾は難なくその攻撃を弾く。
「まあこんなもんだ」
「確かにこれで防げますね」
三人は木の棒が当たった場所をじっくりと観察する。
ガラスと同じ程度の強度だと思っていたが、実際にはガラスよりも強度があるとわかってくれたようだ。
「で、こっちがガードレールシールドと普通の盾だだ」
ガードレールに取っ手をつけたものを渡す。
比較対象として曲げていない同じ厚みの鉄板で作った盾もある。
まずは単なる鉄板の盾を鈍器で叩いて曲げて見せる。
まあ、一般的な鉄板ならこんなもんだろう。
鉄は柔らかいのだ。
アメリカ人に引きちぎられて、設備が壊れた経験もあるしね。
インターロックの鉄板を引きちぎるとか、なにしてくれとんのや!
設計泣いてた。
「次はいよいよガードレールシールドか」
俺は鉄板の盾を叩いた時と同じ威力で、ガードレールシールドを叩いた。
「ほら、同じ威力で叩いても結果はちがうだろ」
三人は二つの盾を見比べる。
明らかにへこみ具合が違うのがわかる。
「これはこれで凄いけど、ライオットシールドを見た後だとねえ」
エッセの言葉に二人が頷く。
俺だってそんなのわかってるよ!
ライオットシールドは飛ぶように売れたとか。
※作者の独り言
平らな板に突起をつけることで、板厚を変えなくても丈夫になるのって、現代知識だと思うんですよね。
サーキットのガードレール、海外からの輸入品でしたね。
そんなに違うもんなんか?
という、個人的な昔の思い出です。
作品とは関係ありません。
それでは本編いってみましょう。
今日はデボネア、エッセ、ホーマーのドワーフ三人に呼ばれて、防具の改善についての相談にのっていた。
「盾の強度を上げたいんだけど、厚みを増やすと重量が増えて扱いにくくなるじゃないか。なにかいい方法はないのかな?」
エッセに言われるが、それならば盾を分厚くするしかないんじゃないだろうか。
という結論になる。
「エルフとか新人冒険者が扱えるようにすれば、きっと需要があるんじゃないかと思うんだよね」
「そうじゃな。体を鍛えてからでは時間が掛かりすぎる」
エッセの意見にデボネアが説明を加える。
それは判らなくもないが、盾と言っても色々な種類がある。
小さい盾を使えばいいんじゃないだろうか。
「ラウンドシールド、ほらバックラーなんかは小さいから重量もそんなに増えないと思うけど」
ラウンドシールドとは丸い盾のことで、バックラーはその一種である。
片手で持って相手の剣を防ぐのに使う。
一般的な使い方は腕を真っ直ぐに伸ばして、なるべく相手の近くに持って行くのだ。
相手の持っている武器の近くであれば、攻撃の初動では防ぐべき範囲は小さくなる。
武器を持ったときの腕の長さから、三角関数で計算すればわかると思うけどね。
なので、こうすることで小さい盾の面積を補う。
だが、俺の考えはエッセ達の思っていたこととは違った。
「バックラーだと面積が小さいから上半身への攻撃はいいんだけど、下半身を防護するのがねえ。特に初心者が扱うとなると飛び道具の防衛もやりたいし。それに、鈍器の攻撃への対応を考えているからね。大きめの盾でいざとなったら両手で持てるようなのがいいかなと」
大きさと重量は比例する。
そんな都合のいいものなんか存在しない。
いや、待てよ。
「ビード加工とガードレールがあったな」
と前世を思い出す。
ビード加工っていうのは、鉄板の一部を盛り上がらせる加工である。
ひも出し加工などとも呼ばれるらしいが、まったく聞いたことは無いな。
円筒だったり三角だったりするが、目的は全て一緒で重量を増やさずに強度を増加させることが出来る。
自動車の鉄製ブラケット部品を見ると、このビード加工はよく目に付く。
200話くらい前にドラム缶作ったけど、そこでもビード加工はしている。
それとガードレールだ。
ガードレールの強度は7ランクに分けられるそうだが、最も強度が強いのは山の数が多い。
単なる板の状態に比べて、数十倍の強度にもなるというのだ。
JIS規格じゃないから詳しくないけど。
一度設計にどうしてそうなるのか聞いたことがあるが、外部から力が加わった時にビードや折り曲げがあることで、力が分散してくれるからだとのこと。
鉄板を折り曲げてやり、更には取っ手にはビード加工を施せば、重量を増やさずとも強度を増加させられるな。
鉄板を折り曲げるのをどうするかって話だが。
「鋳造するかの?」
デボネアは鋳造を提案してきたが、出来れば靭性のある鉄を曲げたい。
打撃で割れる可能性があるから。
超硬で作った金型も磨耗には強かったけど、単純な衝撃には弱かった。
パキンと逝ったよ。
やっぱり靭性は大切だよね。
硬いだけじゃ駄目なんですよ。
という事で、デボネアの案には反対だ。
「ここはやはり、オッティに頼んで作ってもらうか。ただ、それをそのまま使うのではなく、こちらで二次加工すれば付加価値もうまれるだろうし」
困ったときのオッティ頼みだ。
取っ手の溶接はホーマーがやるから、部品の作成のみをお願いすることになる。
今回は流石に自分達ではどうにもならないので、外注することに異論は出なかった。
三人は仕事があるので、俺が一人でオッティのところに行く事になる。
まあ、俺にも仕事があるのだけれど、それはそれ。
品質管理部なんて暇な方がいいんだよ!
そんなわけで、やってきましたグレイス領。
早速オッティに今回の趣旨を説明する。
「んなもん、ポリカーボネートでライオットシールド造ればいいだろ」
とこちらの案を全面否定。
「それだとファンタジー風味が無いじゃないか」
そう反論した。
まあ、賢者の学院辺りでポリカーボネートそっくりな何かを発明してくれそうな気もするが。
ポリカーボネートっていうのは丈夫なプラスチックと思ってもらえばいいだろう。
しかも透明なものもあるので、一般的には信号機だったりCDやDVDに使われている。
自動車の部品でも>PC<って表記があったらそれはポリカーボネートだ。
ヘッドライトとかのクリアー成形なんかですね。
うん、ファンタジーじゃない。
「それじゃなにか、スキルで作り出すプレス機にファンタジー風味が有るとでも?」
オッティは俺を残念な子を見るような、憐憫の眼差しで見てくる。
「それはプレス機であっても、チートスキルで作り出したプレス機だからファンタジーなんだよ」
そう反論した。
「それならポリカーボネートだってスキルで作り出したらファンタジーじゃないか」
「ぐぬぬ」
結局オッティはライオットシールドを作ることになり、それとは別でガードレールシールドの部品も作ってくれることになった。
どちらが売れるか勝負ということになったのである。
剣と魔法の世界でライオットシールドとガードレールを売る対決っていうのもなんだが。
帰りはガードレールの部品を沢山と、サンプルとしてのライオットシールドを一つ貰っていくことになった。
重量はたいしたことないし、そもそも収納魔法があるから重量も気にしていないのだが、これが前世だったら新規部品の重量はIMDSと検査成績書の両方で要求されていたぞ。
というか、IMDSを未登録のまま突っ走っているティア1が、ついに車両メーカーに怒られて弊社に直ぐに重量を連絡しろと電話してきたのですが、そもそもお宅の支給部品でユニットになっている物を、どうして弊社で部品単位で重量がわかるんだよと。
新規品の重量の管理面倒ですよね。
IMDSについてもそうなんですが。
そもそも、今時納入に添付する成績書にIMDSのID番号記入する項目あるんじゃないのかなと思っているのですが、どうしてそれをスルー出来たのか疑問です。
因みに、IMDSって客先承認される必要があったはずなんだけど、その辺もどうなっているのでしょうかね。
おっと、転生した設定を忘れていました。
ステラに帰り着くと早速三人にガードレールシールドとライオットシールドを見せた。
「この透明の盾凄く軽いんだけど、これで相手の攻撃を防げるの?」
ホーマーが盾を振り回して不思議そうにしている。
まあその気持ちはよくわかる。
なので、工房にあった木の棒でライオットシールドを持つホーマーを攻撃した。
ポリカーボネート製の盾は難なくその攻撃を弾く。
「まあこんなもんだ」
「確かにこれで防げますね」
三人は木の棒が当たった場所をじっくりと観察する。
ガラスと同じ程度の強度だと思っていたが、実際にはガラスよりも強度があるとわかってくれたようだ。
「で、こっちがガードレールシールドと普通の盾だだ」
ガードレールに取っ手をつけたものを渡す。
比較対象として曲げていない同じ厚みの鉄板で作った盾もある。
まずは単なる鉄板の盾を鈍器で叩いて曲げて見せる。
まあ、一般的な鉄板ならこんなもんだろう。
鉄は柔らかいのだ。
アメリカ人に引きちぎられて、設備が壊れた経験もあるしね。
インターロックの鉄板を引きちぎるとか、なにしてくれとんのや!
設計泣いてた。
「次はいよいよガードレールシールドか」
俺は鉄板の盾を叩いた時と同じ威力で、ガードレールシールドを叩いた。
「ほら、同じ威力で叩いても結果はちがうだろ」
三人は二つの盾を見比べる。
明らかにへこみ具合が違うのがわかる。
「これはこれで凄いけど、ライオットシールドを見た後だとねえ」
エッセの言葉に二人が頷く。
俺だってそんなのわかってるよ!
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