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第403話 過剰品質
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「アルト、新しいショートソードを買いたいんだけど、一緒に来てもらえるかな?」
相談窓口に来たのはスターレットだった。
今日は仕事をしに来たわけではなく、どうやら休みの間に武器を新調しようとして、俺を誘いに来たようだ。
彼女はもう一人でも十分に見極めるだけの技能を有していると思うけどなあ。
「オーリスには内緒にしておいてあげるわよ」
と隣りにいたシルビアが意味ありそうに笑う。
そんな事しないって。
スターレットも否定する。
やれやれと、テーブルの上のコーヒーカップに残っていたコーヒーを一気に飲み干すと、スターレットと一緒に冒険者ギルドを出た。
そしてデボネアの店へと向かう。
今日もステラは天気がよくて、往来では商人たちが汗を流しながら商売をしたり、商品を運んでいる。
ここだけ見れば日常生活に何も変わりはなく、魔王軍の魔の手が世界中に伸びているとは思えないほどだ。
しかし、今この瞬間にもどこかで戦いは起きているのだろう。
早いところ勇者でも召喚して、魔王を退治してもらいたいものだ。
ほどなくしてデボネアの店へと到着する。
店内に入るとデボネアがいた。
いつもは工房にいるのだが、珍しくカウンターにいるところだった。
「デートか?」
「いや、武器を新調するのに付き合っているだけだよ」
デボネアも俺とスターレットの関係を疑ってくる。
思えば、デボネアは最初は俺がスターレットにプレゼントするショートソードを買いに来たと勘違いしていたんだよな。
まあ、ジョブ適性がない俺がショートソードを買いたいなんて言えば、他の誰かにプレゼントすると思うのも当然か。
「あれ、カウンターの後ろにあるショートソードを見たんだけど」
スターレットはデボネアの後ろに置いてあるショートソードを指さした。
俺が見ても店に陳列してある物よりも良さそうに見える。
これから陳列するところなのだろうか?
「ああ、あれは売りものじゃないんじゃ」
デボネアの表情が少し険しくなった。
俺はそれが気になる。
「何か事情でも?」
余計なお世話かもしれないが、スターレットも気になっているようなので聞いてみた。
「持った時の重量が少し軽いんじゃよ。作った時はちょっと違和感があるけど問題ないと思ったんじゃが、陳列しようとこちらに持ってきた時に、やっぱり売り物にしないと決めたんじゃ」
「ふーむ」
重量の違和感か。
これがプラスチック成形だったりすると大問題だけど、ショートソードならいいんじゃないかな?
JIS規格にもショートソードの重量は規定されていないし。
「見せて」
スターレットはデボネアに強くお願いした。
最初はデボネアも渋っていたが、スターレットが粘り勝ちしてショートソードを受け取る。
「どう?」
俺は持った感想をスターレットに訊いてみた。
「んー、軽いって最初に聞いたからそんな気がするけど、問題ないんじゃないかな。出来はかなりいいからこれが欲しい」
「失敗作を売りたくはないんじゃが」
しかし、デボネアはやはり険しい顔をしている。
これは過剰品質ってやつだな。
使う分には問題ないが、作り手がNGだと判断して廃却する奴だ。
時には客先の受入検査が過剰品質になる事もある。
噂で聞いたレベルだが、とあるヘッドライト製造メーカーの品質管理課長が買った新車のヘッドライトが、通常よりも暗かったことがあった。
ヘッドライトを確認すると蒸着が薄く、その会社の基準では不良としているレベルだったのだ。
しかし、作っていたのはライバル企業。
車両メーカーの検査も通って市場に出ており、リコールになるような物ではなかった。
後日、その課長が蒸着薄の不良で車両メーカーに呼び出された時に、自分の車のヘッドライトの話をして、不良を取り消してもらった話がとか無かったとか。
これは完全に車両メーカー側の過剰品質だったわけですね。
しかも、そのヘッドライト製造メーカーだけに対して。
車両生産工場が違うので、品質担当者も当然別。
それで判断が変わるのは、実際にはあるんですよね。
っていう噂です。
噂だぞ。
スターレットが買いたいと言っているのに、一向に首を縦に振らないデボネアに俺は業を煮やして【品質偽装】を使った。
「デボネア、今日の体調は?」
「昨日と変わらんよ」
「でも、それって本当に変わらないのかな?ひょっとしたら明日このショートソードを持ったら、軽くないって思えるかもしれないよ。それに、切れ味は最高なんだろう?」
「ああ、今年一番の出来だな」
「そう、これは問題ないんだ。俺の重量測定でもなんの問題もない」
重量測定というのは嘘だ。
基準の重量が無いから、測定したところでOKNGの判断が出来ない。
だからしていないのだ。
「そうか、気のせいだったかもしれんな。スターレット、売るぞ」
こうしてスターレットは無事にショートソードを手に入れる事が出来たのだった。
相談窓口に来たのはスターレットだった。
今日は仕事をしに来たわけではなく、どうやら休みの間に武器を新調しようとして、俺を誘いに来たようだ。
彼女はもう一人でも十分に見極めるだけの技能を有していると思うけどなあ。
「オーリスには内緒にしておいてあげるわよ」
と隣りにいたシルビアが意味ありそうに笑う。
そんな事しないって。
スターレットも否定する。
やれやれと、テーブルの上のコーヒーカップに残っていたコーヒーを一気に飲み干すと、スターレットと一緒に冒険者ギルドを出た。
そしてデボネアの店へと向かう。
今日もステラは天気がよくて、往来では商人たちが汗を流しながら商売をしたり、商品を運んでいる。
ここだけ見れば日常生活に何も変わりはなく、魔王軍の魔の手が世界中に伸びているとは思えないほどだ。
しかし、今この瞬間にもどこかで戦いは起きているのだろう。
早いところ勇者でも召喚して、魔王を退治してもらいたいものだ。
ほどなくしてデボネアの店へと到着する。
店内に入るとデボネアがいた。
いつもは工房にいるのだが、珍しくカウンターにいるところだった。
「デートか?」
「いや、武器を新調するのに付き合っているだけだよ」
デボネアも俺とスターレットの関係を疑ってくる。
思えば、デボネアは最初は俺がスターレットにプレゼントするショートソードを買いに来たと勘違いしていたんだよな。
まあ、ジョブ適性がない俺がショートソードを買いたいなんて言えば、他の誰かにプレゼントすると思うのも当然か。
「あれ、カウンターの後ろにあるショートソードを見たんだけど」
スターレットはデボネアの後ろに置いてあるショートソードを指さした。
俺が見ても店に陳列してある物よりも良さそうに見える。
これから陳列するところなのだろうか?
「ああ、あれは売りものじゃないんじゃ」
デボネアの表情が少し険しくなった。
俺はそれが気になる。
「何か事情でも?」
余計なお世話かもしれないが、スターレットも気になっているようなので聞いてみた。
「持った時の重量が少し軽いんじゃよ。作った時はちょっと違和感があるけど問題ないと思ったんじゃが、陳列しようとこちらに持ってきた時に、やっぱり売り物にしないと決めたんじゃ」
「ふーむ」
重量の違和感か。
これがプラスチック成形だったりすると大問題だけど、ショートソードならいいんじゃないかな?
JIS規格にもショートソードの重量は規定されていないし。
「見せて」
スターレットはデボネアに強くお願いした。
最初はデボネアも渋っていたが、スターレットが粘り勝ちしてショートソードを受け取る。
「どう?」
俺は持った感想をスターレットに訊いてみた。
「んー、軽いって最初に聞いたからそんな気がするけど、問題ないんじゃないかな。出来はかなりいいからこれが欲しい」
「失敗作を売りたくはないんじゃが」
しかし、デボネアはやはり険しい顔をしている。
これは過剰品質ってやつだな。
使う分には問題ないが、作り手がNGだと判断して廃却する奴だ。
時には客先の受入検査が過剰品質になる事もある。
噂で聞いたレベルだが、とあるヘッドライト製造メーカーの品質管理課長が買った新車のヘッドライトが、通常よりも暗かったことがあった。
ヘッドライトを確認すると蒸着が薄く、その会社の基準では不良としているレベルだったのだ。
しかし、作っていたのはライバル企業。
車両メーカーの検査も通って市場に出ており、リコールになるような物ではなかった。
後日、その課長が蒸着薄の不良で車両メーカーに呼び出された時に、自分の車のヘッドライトの話をして、不良を取り消してもらった話がとか無かったとか。
これは完全に車両メーカー側の過剰品質だったわけですね。
しかも、そのヘッドライト製造メーカーだけに対して。
車両生産工場が違うので、品質担当者も当然別。
それで判断が変わるのは、実際にはあるんですよね。
っていう噂です。
噂だぞ。
スターレットが買いたいと言っているのに、一向に首を縦に振らないデボネアに俺は業を煮やして【品質偽装】を使った。
「デボネア、今日の体調は?」
「昨日と変わらんよ」
「でも、それって本当に変わらないのかな?ひょっとしたら明日このショートソードを持ったら、軽くないって思えるかもしれないよ。それに、切れ味は最高なんだろう?」
「ああ、今年一番の出来だな」
「そう、これは問題ないんだ。俺の重量測定でもなんの問題もない」
重量測定というのは嘘だ。
基準の重量が無いから、測定したところでOKNGの判断が出来ない。
だからしていないのだ。
「そうか、気のせいだったかもしれんな。スターレット、売るぞ」
こうしてスターレットは無事にショートソードを手に入れる事が出来たのだった。
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