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第404話 降車確認
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俺は今縛られて馬車の荷台に転がされている。
周りには同じ様に縛られた子供が10人ほどいる。
スンスンと泣きながら鼻をすする音が聞こえては来るが、全員が猿轡を噛まされており喋る事ができない。
この馬車は荷台に幌がついており、外の景色は全く見えなかった。
サスペンションの無い馬車の酷い揺れに身を任せていると、外から男たちの会話が聞こえてきた。
「もうすぐ約束の場所に着く。こいつらを引き渡して代金を受け取ったら、しばらくこの国から離れるぞ」
「ほとぼりが冷めるまで他所の国で遊んで暮らすっつーわけですね」
「そうだ」
二人の男が御者台で会話をしているようだ。
さて、何でこんなことになっているのかといえば、奴隷商が違法に奴隷を集めているという情報があり、オーリスに頼まれて俺が囮捜査をすることになったからだ。
今は変身のスキルを使って子供になっている。
目的は誘拐の実行犯を捕まえることではなく、そいつらが誘拐した子供たちを売る相手だ。
買う方も善意の第三者と言うわけではなく、犯罪であることを知りながら子供たちを買っているのだ。
悪は根本から絶たないとね。
ひどい揺れに荷台の全員がぐったりとなった頃、やっと馬車は止まってくれた。
外の景色が見えないから感覚になるが、ステラからそうは離れていない場所のはずだ。
誘拐した子供たちの売買が秘密裏に行われるので、街道から近いということはないだろうが。
「着いたが相手がまだ来てないようだな」
「じゃあ、商品を降ろしておきやすか」
「そうだな」
再び男たちの会話が聞こえてきたと思ったら、誘拐してきた子供たちを降ろす話になった。
俺は姿を消すためにスキルを使う
「【インビジブル】」
そう唱えると透明になる。
透明になった直後に幌の一部から光が差し込んできた。
誘拐犯が荷台の方にやってきたのだ。
荷台に顔を見せたのは坊主頭の男だった。
そして次々と子供たちを荷台から降ろしていく。
「あれ?」
「どうした」
「なんか、さらった人数よりも少ない気がして」
片方の男が首を傾げている。
そりゃそうだ、俺が消えてしまったのだから。
「もう一回荷台を見てみろよ」
「そうしやす」
ここで俺は姿を現してやった。
「あっ!いたいた」
「ほら、やっぱりお前の見落としじゃないか」
「すいやせん」
と男は仲間に頭を下げる。
どうも上下関係があるみたいだな。
俺は降ろされたときに、もう一人の犯人の顔を確認した。
もう一人は、眼帯で片目を覆ったオールバックの男だった。
中二病を発病させたみたいだなと思った。
さて、俺は坊主頭の方に話しかける。
「次に誘拐するときは、子供につける首輪を用意しておくんだな。荷台に押し込んだときに首輪を幌にでも掛けておけば、降ろすときに首輪をつけることで数の確認が出来るぞ」
ミルクランなんかでもよくあるのだが、製品や空箱を降ろさなかったり、違う場所に降ろしてしまったりなんてのを聞く。
製品であれば納期遅れになるし、空箱は余所の会社で使われて返ってこないなんてことになるのだ。
引き渡しの伝票があっても、そういったミスは無くならない。
物流部門が頭を悩ませている案件だな。
ガルウィング閉じる前に、降ろし忘れに気付く仕組みがあればと思う。
伝票の突き合せだと、確認方法としてはちと弱い。
「ああ、そうか。お前頭いいな」
坊主頭の男は喜んでくれた。
が、眼帯の男は異常に気付く。
「おい、そいつの猿轡はどうして無いんだ?」
「あれ、本当だ。お前、猿轡はどうした?」
「最初からしてなかったじゃないか」
と口からでまかせを言ったら、相手は信じてくれた。
「ちゃんと確認しろ!」
眼帯の男が坊主頭の頭を殴る。
「痛い!すいやせん」
坊主頭は殴られたところを手で押さえながら謝った。
「まあいい。こんな森の中で叫ばれても助けなんか来ねえからな」
と眼帯の男が言ったところで、取引相手とみられる男たちが現れた。
人相の悪い太った中年の男を囲むように5人の男が立っている。
5人は護衛だろうな。
彼我の距離は5メートルくらいだ。
「商品はそれか?」
太った中年の男が眼帯に訊ねる。
「ああ。全部で11人だ。1人金貨1枚になるぞ」
「約束どおりだな」
太った中年の男が護衛に顎で指示をすると、護衛のひとりが金貨が入っているとみられる袋を持って眼帯の男へと歩み寄っていく。
そして袋を手渡すと、眼帯の男は直ぐに中を確認する。
「間違いな――――」
と、そこで言葉が途切れた。
両手で袋と金貨を握っていたことで無防備となったところを、袋を持ってきた護衛に襲われたのだ。
護衛の手に隠された短い刃物で首を斬られてしまったのだ。
誘拐犯を殺そうとしているのは金を払いたくないのと、誘拐犯から足がつくのを防ぐためかな。
「なにしやがる!」
坊主頭がダガーナイフを取り出してそう叫んだ。
しかし、相手は6人いて分が悪い。
焦りの表情がみてとれる。
護衛達がジリジリと坊主頭との距離を詰めてきた。
ここだな。
「【スリープ】」
俺は全員が効果範囲に入るように、眠りの魔法を使った。
魔法が発動すると全員が抵抗できずに眠ってしまう。
それを確認して縄抜けをし、自由になったところで寝ている男たちを縛り上げた。
そして、全員を俺たちが運ばれてきた馬車の荷台に転がす。
子供たちも魔法で眠ってしまったので、同じように荷台に寝かせた。
起きて暴れられても面倒だしな。
そして、俺は御者台に座るとステラに向かって馬車を走らせる。
「アルトのおかげで犯人を捕まえるどころか、前に誘拐されて売られた子供たちの行方までわかりましたわ。何人かは貴族に買われたようですが、彼らも違法に売買された証拠を突きつければ子供たちを返してくれるでしょう。どうせ違法だと知っていたのでしょうが、世間体もあるから表面上は素直に応じてくれるはずですわ」
オーリスは俺が捕まえた犯人たちから情報を聞き出し、既に売買された子供たちを買い戻すことが出来そうだと教えてくれた。
犯人を生け捕りにしたのはそのためだ。
眼帯の男も瀕死だったところをヒールで助けてあったのだ。
まあ、どうせ他にも色々と犯罪に手を染めているだろうから、このあと縛り首になるかもしれないんだけど。
「子供たちの親は見つかったの?」
「それが、孤児も含まれているので全員がとはいきませんでしたわ。それに親に売られた子供たちも居るでしょうし」
「そうか」
そういった子供たちは孤児院に預けられることになる。
それでも奴隷にさせるよりはマシか。
青少年育成条例がない世界なので、小児愛好者の歯止めが効かないから、奴隷になった子供たちの扱いが酷いのだ。
具体的に書いたらこの作品がBANされるくらいだ。
「気になる子がいれば、当家で引き取ってもよろしいのですわよ」
オーリスが試すようなことを言うので、首を振って否定した。
「自分の子供がそんな境遇になったらと思うと無理だよ」
「そうですわね。もうすぐパパになるんですものね」
「え?!」
※作者の独り言
車内に子供が取り残されて熱中症で死亡した事件がありましたが、どうしたら降車忘れを防げるのかなと考えてみました。
幼稚園児であれば、お迎えのときに保護者から名札を預かり、車のドアのところに置いておき、降車時に園児に名札を付けていくのなら直ぐに出来るのかなと。
名札が残っていたら降ろしていない子供がいるのでドアを閉めないように出来ると思います。
ドアを閉めてからの点呼だと流出防止であって、発生対策はその前の段階でやるべきなんでしょうね。
作中では首輪になってますが、誘拐してきた子供に名札はないですからね。
まあ、車内に取り残されて熱中症で死亡するのは家庭でもパチンコ屋の駐車場でもあるので、根本的には車内の温度が死ぬほど上がらないようになるのが一番だと思います。
自動車メーカーがどこまで出来るかはわかりませんけどね。
周りには同じ様に縛られた子供が10人ほどいる。
スンスンと泣きながら鼻をすする音が聞こえては来るが、全員が猿轡を噛まされており喋る事ができない。
この馬車は荷台に幌がついており、外の景色は全く見えなかった。
サスペンションの無い馬車の酷い揺れに身を任せていると、外から男たちの会話が聞こえてきた。
「もうすぐ約束の場所に着く。こいつらを引き渡して代金を受け取ったら、しばらくこの国から離れるぞ」
「ほとぼりが冷めるまで他所の国で遊んで暮らすっつーわけですね」
「そうだ」
二人の男が御者台で会話をしているようだ。
さて、何でこんなことになっているのかといえば、奴隷商が違法に奴隷を集めているという情報があり、オーリスに頼まれて俺が囮捜査をすることになったからだ。
今は変身のスキルを使って子供になっている。
目的は誘拐の実行犯を捕まえることではなく、そいつらが誘拐した子供たちを売る相手だ。
買う方も善意の第三者と言うわけではなく、犯罪であることを知りながら子供たちを買っているのだ。
悪は根本から絶たないとね。
ひどい揺れに荷台の全員がぐったりとなった頃、やっと馬車は止まってくれた。
外の景色が見えないから感覚になるが、ステラからそうは離れていない場所のはずだ。
誘拐した子供たちの売買が秘密裏に行われるので、街道から近いということはないだろうが。
「着いたが相手がまだ来てないようだな」
「じゃあ、商品を降ろしておきやすか」
「そうだな」
再び男たちの会話が聞こえてきたと思ったら、誘拐してきた子供たちを降ろす話になった。
俺は姿を消すためにスキルを使う
「【インビジブル】」
そう唱えると透明になる。
透明になった直後に幌の一部から光が差し込んできた。
誘拐犯が荷台の方にやってきたのだ。
荷台に顔を見せたのは坊主頭の男だった。
そして次々と子供たちを荷台から降ろしていく。
「あれ?」
「どうした」
「なんか、さらった人数よりも少ない気がして」
片方の男が首を傾げている。
そりゃそうだ、俺が消えてしまったのだから。
「もう一回荷台を見てみろよ」
「そうしやす」
ここで俺は姿を現してやった。
「あっ!いたいた」
「ほら、やっぱりお前の見落としじゃないか」
「すいやせん」
と男は仲間に頭を下げる。
どうも上下関係があるみたいだな。
俺は降ろされたときに、もう一人の犯人の顔を確認した。
もう一人は、眼帯で片目を覆ったオールバックの男だった。
中二病を発病させたみたいだなと思った。
さて、俺は坊主頭の方に話しかける。
「次に誘拐するときは、子供につける首輪を用意しておくんだな。荷台に押し込んだときに首輪を幌にでも掛けておけば、降ろすときに首輪をつけることで数の確認が出来るぞ」
ミルクランなんかでもよくあるのだが、製品や空箱を降ろさなかったり、違う場所に降ろしてしまったりなんてのを聞く。
製品であれば納期遅れになるし、空箱は余所の会社で使われて返ってこないなんてことになるのだ。
引き渡しの伝票があっても、そういったミスは無くならない。
物流部門が頭を悩ませている案件だな。
ガルウィング閉じる前に、降ろし忘れに気付く仕組みがあればと思う。
伝票の突き合せだと、確認方法としてはちと弱い。
「ああ、そうか。お前頭いいな」
坊主頭の男は喜んでくれた。
が、眼帯の男は異常に気付く。
「おい、そいつの猿轡はどうして無いんだ?」
「あれ、本当だ。お前、猿轡はどうした?」
「最初からしてなかったじゃないか」
と口からでまかせを言ったら、相手は信じてくれた。
「ちゃんと確認しろ!」
眼帯の男が坊主頭の頭を殴る。
「痛い!すいやせん」
坊主頭は殴られたところを手で押さえながら謝った。
「まあいい。こんな森の中で叫ばれても助けなんか来ねえからな」
と眼帯の男が言ったところで、取引相手とみられる男たちが現れた。
人相の悪い太った中年の男を囲むように5人の男が立っている。
5人は護衛だろうな。
彼我の距離は5メートルくらいだ。
「商品はそれか?」
太った中年の男が眼帯に訊ねる。
「ああ。全部で11人だ。1人金貨1枚になるぞ」
「約束どおりだな」
太った中年の男が護衛に顎で指示をすると、護衛のひとりが金貨が入っているとみられる袋を持って眼帯の男へと歩み寄っていく。
そして袋を手渡すと、眼帯の男は直ぐに中を確認する。
「間違いな――――」
と、そこで言葉が途切れた。
両手で袋と金貨を握っていたことで無防備となったところを、袋を持ってきた護衛に襲われたのだ。
護衛の手に隠された短い刃物で首を斬られてしまったのだ。
誘拐犯を殺そうとしているのは金を払いたくないのと、誘拐犯から足がつくのを防ぐためかな。
「なにしやがる!」
坊主頭がダガーナイフを取り出してそう叫んだ。
しかし、相手は6人いて分が悪い。
焦りの表情がみてとれる。
護衛達がジリジリと坊主頭との距離を詰めてきた。
ここだな。
「【スリープ】」
俺は全員が効果範囲に入るように、眠りの魔法を使った。
魔法が発動すると全員が抵抗できずに眠ってしまう。
それを確認して縄抜けをし、自由になったところで寝ている男たちを縛り上げた。
そして、全員を俺たちが運ばれてきた馬車の荷台に転がす。
子供たちも魔法で眠ってしまったので、同じように荷台に寝かせた。
起きて暴れられても面倒だしな。
そして、俺は御者台に座るとステラに向かって馬車を走らせる。
「アルトのおかげで犯人を捕まえるどころか、前に誘拐されて売られた子供たちの行方までわかりましたわ。何人かは貴族に買われたようですが、彼らも違法に売買された証拠を突きつければ子供たちを返してくれるでしょう。どうせ違法だと知っていたのでしょうが、世間体もあるから表面上は素直に応じてくれるはずですわ」
オーリスは俺が捕まえた犯人たちから情報を聞き出し、既に売買された子供たちを買い戻すことが出来そうだと教えてくれた。
犯人を生け捕りにしたのはそのためだ。
眼帯の男も瀕死だったところをヒールで助けてあったのだ。
まあ、どうせ他にも色々と犯罪に手を染めているだろうから、このあと縛り首になるかもしれないんだけど。
「子供たちの親は見つかったの?」
「それが、孤児も含まれているので全員がとはいきませんでしたわ。それに親に売られた子供たちも居るでしょうし」
「そうか」
そういった子供たちは孤児院に預けられることになる。
それでも奴隷にさせるよりはマシか。
青少年育成条例がない世界なので、小児愛好者の歯止めが効かないから、奴隷になった子供たちの扱いが酷いのだ。
具体的に書いたらこの作品がBANされるくらいだ。
「気になる子がいれば、当家で引き取ってもよろしいのですわよ」
オーリスが試すようなことを言うので、首を振って否定した。
「自分の子供がそんな境遇になったらと思うと無理だよ」
「そうですわね。もうすぐパパになるんですものね」
「え?!」
※作者の独り言
車内に子供が取り残されて熱中症で死亡した事件がありましたが、どうしたら降車忘れを防げるのかなと考えてみました。
幼稚園児であれば、お迎えのときに保護者から名札を預かり、車のドアのところに置いておき、降車時に園児に名札を付けていくのなら直ぐに出来るのかなと。
名札が残っていたら降ろしていない子供がいるのでドアを閉めないように出来ると思います。
ドアを閉めてからの点呼だと流出防止であって、発生対策はその前の段階でやるべきなんでしょうね。
作中では首輪になってますが、誘拐してきた子供に名札はないですからね。
まあ、車内に取り残されて熱中症で死亡するのは家庭でもパチンコ屋の駐車場でもあるので、根本的には車内の温度が死ぬほど上がらないようになるのが一番だと思います。
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