411 / 439
第410話 使用するに至ったエビデンス
しおりを挟む
「アルト、聞いてよ」
珍しくスターレットが泣きながら俺のところに来た。
未来の世界からやってきた猫型ロボットではないが、スターレットの話を聞いてあげる。
「それはひどい」
「まだ何も言ってないんだけど」
お約束の定型文で返事をしたらジト目で睨まれた。
「こっちでの扱いが酷くない?」
「シルビアに比べたらマシでしょ。一応シルビアメインの話も作ってはあるけど、日の目を見ないまま下書きで終わっちゃうと思うよ」
そう、シルビアがメインヒロインの設定でも品質の話を書いてはあるのだが、発表するタイミングが無いのでそのままになっている。
まあ、それはおいといて。
「で、何があったの?」
俺はスターレットに訊ねた。
「そうそう、実は銅等級の冒険者に武器がショートソードなのはどうしてなのかって訊かれたのよ。それで、『使いやすいから』って答えたら、『それってあなたの感想ですよね。エビデンスは?他の武器は試したの?』って言われたのよ。その言い方がムカついて、ムカついて。生ガキにレモンを絞って食べるように言った訳でもないのに、酷い言われようなのよ。川地さんじゃなくても刺しに行ってるわ」
「刺すのは止めてこうね。せめて熱い油をかけるくらいにしておかないと」
どこの川地さんだか知りませんが、店がつぶれそうになっていたら思いつめちゃうよね。
スターレットからも似た雰囲気がする。
俺も前世でそんな言い方をする品管担当者を見たことがあるが、まあ、殴ってくる奴もいるから気をつけてねって心の中でアドバイスをしたものです。
「なんか今日は話が脱線しすぎている気がするけど……」
再びスターレットにジト目で睨まれた。
それを笑ってごまかす。
「話はわかった。つまり、その銅等級の冒険者にショートソードを使っている理由を言ったら馬鹿にされたってことだね」
「そうなのよ。某巨大掲示板の元管理者みたいな言い方が鼻につくの」
「あ、はい」
インターネットってこちらにも繋がっているんですかね。
「言い方は悪いけど、言っている事には一理あるかもしれないね」
「何で?」
スターレットは理解できないようだが、工場では使用する設備や工具について選定理由が必要だ。
工場でなくてもそういった事はある。
例えば自動車。
通勤通学に使う目的なのに、大型のトラックを買うような人はいないだろう。
使用目的に応じた選定理由があるわけだ。
しかし、それが鍋だったり包丁だったりしたらどうだろうか。
料理が好きで細かくこだわる人ならば、道具の選定理由もはっきりするだろうけど、日本中のご家庭が明確な選定理由を持っているとは思えない。
煮る事が出来るから、材料を切る事ができるから、それで十分だという理由で購入していることもあるだろう。
家庭ならそれでも十分だろうけど、工場での生産ともなればそうはいかない。
錆びないからステンレスにしようと言っても、それはSUS303なのか、SUS304なのか、SUS316なのか、SUS430なのか。
塗装やメッキじゃ駄目なのか。
表面処理を選択しても、塗装もメッキも種類が山ほどある。
過去にはニッケルメッキが綺麗だからという理由だけで、外観部品でもないものをニッケルメッキにしてくれた設計を思い出しますね。
しかも無電解じゃない方に。
全てにおいて選定理由は必要である。
綺麗だからも理由か……
という建前で、なんとなくの経験から決めちゃってますけどね。
で、不良が流出した時に客の品管からスターレットみたいなことを言われるわけですよ。
殴りたい。
客じゃなくて設計を。
生技だったりすることもあるけどね。
結構昔から使っていると、理由は特になくて昔から使っている実績があるからってなっちゃうけど、本当はもっと条件の良いものがあるんじゃないですかねっていう事です。
例えるなら、ガラケー使っていたけどスマホに変えてみたら激変みたいな。
弊社は黒電話レベルなんですけどね。
「スターレットのジョブは剣士だから、ウォーハンマーやハルバード、サイスにメイスなんていうのは選択肢としてないかもしれないけど、剣といってもショートソードやロングソード、バスタードソード、シミター、レイピア、エストック、シャムシール、カットラス、レーザーブレードに仕込み杖と色々あるじゃない。どれが最適なのか試してみるのもいいと思うよ。実際に使ってみたらショートソードよりもいいものが有るかもしれないから」
「レーザーブレードはギャランにでも持たせておけば。それはそうと言われてみれば、駆け出しでお金が無かったからとりあえずショートソードだったけど、今なら他の武器も買う事が出来るね」
スターレットもわかってくれたようだ。
武器というのは戦場での要求によって、どんどん進化して形を変えていくものだ。
斬れる事を目的としたものもあれば、突く事に特化したり、打撃武器としての機能を要求されることもある。
銃などもその例にもれない。
遠距離狙撃の必要が出来たのなら狙撃銃が開発されるし、狭い室内で使うために小型拳銃が開発される。
しかしオールマイティーの武器などないのでどうしても足りないところが出てくる。
狙撃中なら連射はきかないし、小型拳銃だと殺傷力が足りないこともあるだろう。
剣においてもそれは同じで、硬さを求めれば靭性が犠牲になるようなもんである。
一長一短があってなにが一番いいとは言い切れないのだが、それでも一度は試してみないと評価をしたとはいえないからな。
世界的スナイパーの漫画でもM16を使っている理由がそこにあったな。
メンテナンス作業の煩雑さはあるにしても、狙撃から突撃銃としての役割まで持たせようとすると、AK47は選択肢から外れてしまう、ひとりだけの軍隊だからっていうのが理由だったな。
冒険者のパーティーでも鈍器を持っている仲間がいるのであれば、切れ味に特化してもいいのかもしれないが、そうでなければ切れ味を多少犠牲にしても鈍器としての機能を持たせることになるか。
アイアンゴーレムやロックゴーレムみたいなのが出現したら、相手の部位を切断するのは難しい。
達人に出もなればそれでも切断出来るのかもしれないが、一般的な冒険者にそれは無理だ。
「そもそも、武器を試すのもお金がないと出来ないんじゃ、失敗しやすい駆け出しの方が更に失敗しやすくなるじゃない」
スターレットが口を尖らせる。
「言われてみればそうだね。訓練場にジョブに応じた武器を置いておき、冒険に出る前に試せるようにしようか。一度に全部の武器は揃えられないだろうけど、予算を組んで毎年少しずつ増やしていこうかな。ギルド長に相談してみるよ」
そうしよう。
そう考えていたら、スターレットが上目づかいでこちらを見てくる。
「あ、それなら防具もお願いしてみて。ラウンドシールド、カイトシールド、バックラー、スクトゥム、ランタンシールド、ライオットシールドって試してみたいじゃない」
「ライオットシールドは無理かな……」
俺はライオットシールドの要求は断った。
オッティに頼めば可能なんだけど、ファンタジー要素が無くなっちゃうからね。
それに、日光に当たっり温度変化にさらされているとだんだん色がついたり耐久性がおちてくるから、長くは使えないんだよね。
プラスチックだと飛び散った破片が刺さったりもするから、結構危ないんだよね。
「あー、でも結局冒険に出た時に色々なモンスターに遭遇することを考えたら、全部持って行くしかないのか」
スターレットはそれに気づいてがっかりした。
「荷物運びを雇えばいいんじゃないかな?レベルが高ければアイテムボックスのスキルも使えるだろうし」
「それならアルトがアイテム鞄を買ってくれてもいいんじゃないかな」
アイテム鞄はアイテムボックスの魔法を付与した鞄だ。
ある程度の荷物を入れる事ができ、その量は金額に比例する。
まあ、ばくさんのかばんだと思ってくれればそれでいい。
「ばーくばくばくばくばくー」という呪文の詠唱はいらないけどね。
その例えで通じているのかは疑問ですが、対象年齢が40歳以上の作品なので我慢してください。
知らない人はググってね。
「俺がそれをスターレットに買ってあげたら、他の冒険者から苦情が出るだろう。それとオーリスから」
「え、私たちって恋人だよね?」
「それは違う世界線ですね」
「ぐぬぬ……」
そんなやり取りをしていても不毛なので、俺は自分が持っているいくつかの剣を使って、スターレットの武器選びに付き合うことを提案したら、そこにシルビアとプリオラがやってきた。
丁度いい、彼女達にも訊いてみよう。
「シルビアとプリオラは自分の使っている武器を選んだ基準って何?」
「何よ突然」
二人は怪訝な顔をした。
質問が唐突すぎたな。
「実は、スターレットの使っているショートソードについて、先輩冒険者からなんでそれを使っているのかって言われたんだけど、その理由が特になかったんだよね。使いやすいからっていうのはあったんだけど、でも他の武器を試したわけでもなくてね。で、他のベテラン冒険者はどうなのかなって思って訊いてみたんだ」
そう説明するとシルビアが答えてくれる。
「相手を倒せればなんでもいいのよ。ね、プリオラ」
「そうね。難しいことなんか考えたくもないわね」
シルビアの言葉にプリオラも頷いた。
二人の言うのは、いわゆる出来栄え評価ってやつだな。
武器の要求定義は相手を倒せることだ。
つまり、斬ろうが殴ろうが叩こうが、相手を倒せればそれでよいのだ。
工場でいうならば、刃物が材料を切って寸法が管理値に収まっているかぎり、そのまま使い続けるという管理方法になる。
品質管理という観点からしたら、良品になっている原理原則を理解していないので、とても不安な管理方法だ。
だけど、実際にはそんなのばっかりですよ。
なんにも考えずに超硬の刃物つかってたりとかあるんですよね。
よくわからない人は、工場の床を掃除するための清掃道具で、箒とモップのどちらを購入するか検討しないで、目についたから箒を買っちゃった事だと思ってください。
結果的にどちらを使っても掃除は出来ると思います。
シルビアとプリオラは綺麗になるんだからそれでいいっていう意見だな。
よく言えば『弘法筆を選ばず』か。
「ただ、色々な局面で使えるって考えたら、結局ショートソードなのよね」
プリオラはそう付け加えた。
「そうそう。使っている人が多いっていうのはそういうことよ。だから、使いやすいからっていうのは正しいの。そんなのもわからずに訊いてきた奴が悪いわ。今から一緒に殴りに行く?」
シルビアがスターレットにそう訊ねたが、スターレットは全力で否定した。
今行かないなら、明日か?
それとも、振り返れば訊いた奴がいる?
…………
ま、不良がでなければそれでいいじゃない。
※作者の独り言
不良が出た時に、原因となる工具、工法等に選定理由がないとき本当に困る。
開発時と同じような検証を要求されますからね。
それが今
珍しくスターレットが泣きながら俺のところに来た。
未来の世界からやってきた猫型ロボットではないが、スターレットの話を聞いてあげる。
「それはひどい」
「まだ何も言ってないんだけど」
お約束の定型文で返事をしたらジト目で睨まれた。
「こっちでの扱いが酷くない?」
「シルビアに比べたらマシでしょ。一応シルビアメインの話も作ってはあるけど、日の目を見ないまま下書きで終わっちゃうと思うよ」
そう、シルビアがメインヒロインの設定でも品質の話を書いてはあるのだが、発表するタイミングが無いのでそのままになっている。
まあ、それはおいといて。
「で、何があったの?」
俺はスターレットに訊ねた。
「そうそう、実は銅等級の冒険者に武器がショートソードなのはどうしてなのかって訊かれたのよ。それで、『使いやすいから』って答えたら、『それってあなたの感想ですよね。エビデンスは?他の武器は試したの?』って言われたのよ。その言い方がムカついて、ムカついて。生ガキにレモンを絞って食べるように言った訳でもないのに、酷い言われようなのよ。川地さんじゃなくても刺しに行ってるわ」
「刺すのは止めてこうね。せめて熱い油をかけるくらいにしておかないと」
どこの川地さんだか知りませんが、店がつぶれそうになっていたら思いつめちゃうよね。
スターレットからも似た雰囲気がする。
俺も前世でそんな言い方をする品管担当者を見たことがあるが、まあ、殴ってくる奴もいるから気をつけてねって心の中でアドバイスをしたものです。
「なんか今日は話が脱線しすぎている気がするけど……」
再びスターレットにジト目で睨まれた。
それを笑ってごまかす。
「話はわかった。つまり、その銅等級の冒険者にショートソードを使っている理由を言ったら馬鹿にされたってことだね」
「そうなのよ。某巨大掲示板の元管理者みたいな言い方が鼻につくの」
「あ、はい」
インターネットってこちらにも繋がっているんですかね。
「言い方は悪いけど、言っている事には一理あるかもしれないね」
「何で?」
スターレットは理解できないようだが、工場では使用する設備や工具について選定理由が必要だ。
工場でなくてもそういった事はある。
例えば自動車。
通勤通学に使う目的なのに、大型のトラックを買うような人はいないだろう。
使用目的に応じた選定理由があるわけだ。
しかし、それが鍋だったり包丁だったりしたらどうだろうか。
料理が好きで細かくこだわる人ならば、道具の選定理由もはっきりするだろうけど、日本中のご家庭が明確な選定理由を持っているとは思えない。
煮る事が出来るから、材料を切る事ができるから、それで十分だという理由で購入していることもあるだろう。
家庭ならそれでも十分だろうけど、工場での生産ともなればそうはいかない。
錆びないからステンレスにしようと言っても、それはSUS303なのか、SUS304なのか、SUS316なのか、SUS430なのか。
塗装やメッキじゃ駄目なのか。
表面処理を選択しても、塗装もメッキも種類が山ほどある。
過去にはニッケルメッキが綺麗だからという理由だけで、外観部品でもないものをニッケルメッキにしてくれた設計を思い出しますね。
しかも無電解じゃない方に。
全てにおいて選定理由は必要である。
綺麗だからも理由か……
という建前で、なんとなくの経験から決めちゃってますけどね。
で、不良が流出した時に客の品管からスターレットみたいなことを言われるわけですよ。
殴りたい。
客じゃなくて設計を。
生技だったりすることもあるけどね。
結構昔から使っていると、理由は特になくて昔から使っている実績があるからってなっちゃうけど、本当はもっと条件の良いものがあるんじゃないですかねっていう事です。
例えるなら、ガラケー使っていたけどスマホに変えてみたら激変みたいな。
弊社は黒電話レベルなんですけどね。
「スターレットのジョブは剣士だから、ウォーハンマーやハルバード、サイスにメイスなんていうのは選択肢としてないかもしれないけど、剣といってもショートソードやロングソード、バスタードソード、シミター、レイピア、エストック、シャムシール、カットラス、レーザーブレードに仕込み杖と色々あるじゃない。どれが最適なのか試してみるのもいいと思うよ。実際に使ってみたらショートソードよりもいいものが有るかもしれないから」
「レーザーブレードはギャランにでも持たせておけば。それはそうと言われてみれば、駆け出しでお金が無かったからとりあえずショートソードだったけど、今なら他の武器も買う事が出来るね」
スターレットもわかってくれたようだ。
武器というのは戦場での要求によって、どんどん進化して形を変えていくものだ。
斬れる事を目的としたものもあれば、突く事に特化したり、打撃武器としての機能を要求されることもある。
銃などもその例にもれない。
遠距離狙撃の必要が出来たのなら狙撃銃が開発されるし、狭い室内で使うために小型拳銃が開発される。
しかしオールマイティーの武器などないのでどうしても足りないところが出てくる。
狙撃中なら連射はきかないし、小型拳銃だと殺傷力が足りないこともあるだろう。
剣においてもそれは同じで、硬さを求めれば靭性が犠牲になるようなもんである。
一長一短があってなにが一番いいとは言い切れないのだが、それでも一度は試してみないと評価をしたとはいえないからな。
世界的スナイパーの漫画でもM16を使っている理由がそこにあったな。
メンテナンス作業の煩雑さはあるにしても、狙撃から突撃銃としての役割まで持たせようとすると、AK47は選択肢から外れてしまう、ひとりだけの軍隊だからっていうのが理由だったな。
冒険者のパーティーでも鈍器を持っている仲間がいるのであれば、切れ味に特化してもいいのかもしれないが、そうでなければ切れ味を多少犠牲にしても鈍器としての機能を持たせることになるか。
アイアンゴーレムやロックゴーレムみたいなのが出現したら、相手の部位を切断するのは難しい。
達人に出もなればそれでも切断出来るのかもしれないが、一般的な冒険者にそれは無理だ。
「そもそも、武器を試すのもお金がないと出来ないんじゃ、失敗しやすい駆け出しの方が更に失敗しやすくなるじゃない」
スターレットが口を尖らせる。
「言われてみればそうだね。訓練場にジョブに応じた武器を置いておき、冒険に出る前に試せるようにしようか。一度に全部の武器は揃えられないだろうけど、予算を組んで毎年少しずつ増やしていこうかな。ギルド長に相談してみるよ」
そうしよう。
そう考えていたら、スターレットが上目づかいでこちらを見てくる。
「あ、それなら防具もお願いしてみて。ラウンドシールド、カイトシールド、バックラー、スクトゥム、ランタンシールド、ライオットシールドって試してみたいじゃない」
「ライオットシールドは無理かな……」
俺はライオットシールドの要求は断った。
オッティに頼めば可能なんだけど、ファンタジー要素が無くなっちゃうからね。
それに、日光に当たっり温度変化にさらされているとだんだん色がついたり耐久性がおちてくるから、長くは使えないんだよね。
プラスチックだと飛び散った破片が刺さったりもするから、結構危ないんだよね。
「あー、でも結局冒険に出た時に色々なモンスターに遭遇することを考えたら、全部持って行くしかないのか」
スターレットはそれに気づいてがっかりした。
「荷物運びを雇えばいいんじゃないかな?レベルが高ければアイテムボックスのスキルも使えるだろうし」
「それならアルトがアイテム鞄を買ってくれてもいいんじゃないかな」
アイテム鞄はアイテムボックスの魔法を付与した鞄だ。
ある程度の荷物を入れる事ができ、その量は金額に比例する。
まあ、ばくさんのかばんだと思ってくれればそれでいい。
「ばーくばくばくばくばくー」という呪文の詠唱はいらないけどね。
その例えで通じているのかは疑問ですが、対象年齢が40歳以上の作品なので我慢してください。
知らない人はググってね。
「俺がそれをスターレットに買ってあげたら、他の冒険者から苦情が出るだろう。それとオーリスから」
「え、私たちって恋人だよね?」
「それは違う世界線ですね」
「ぐぬぬ……」
そんなやり取りをしていても不毛なので、俺は自分が持っているいくつかの剣を使って、スターレットの武器選びに付き合うことを提案したら、そこにシルビアとプリオラがやってきた。
丁度いい、彼女達にも訊いてみよう。
「シルビアとプリオラは自分の使っている武器を選んだ基準って何?」
「何よ突然」
二人は怪訝な顔をした。
質問が唐突すぎたな。
「実は、スターレットの使っているショートソードについて、先輩冒険者からなんでそれを使っているのかって言われたんだけど、その理由が特になかったんだよね。使いやすいからっていうのはあったんだけど、でも他の武器を試したわけでもなくてね。で、他のベテラン冒険者はどうなのかなって思って訊いてみたんだ」
そう説明するとシルビアが答えてくれる。
「相手を倒せればなんでもいいのよ。ね、プリオラ」
「そうね。難しいことなんか考えたくもないわね」
シルビアの言葉にプリオラも頷いた。
二人の言うのは、いわゆる出来栄え評価ってやつだな。
武器の要求定義は相手を倒せることだ。
つまり、斬ろうが殴ろうが叩こうが、相手を倒せればそれでよいのだ。
工場でいうならば、刃物が材料を切って寸法が管理値に収まっているかぎり、そのまま使い続けるという管理方法になる。
品質管理という観点からしたら、良品になっている原理原則を理解していないので、とても不安な管理方法だ。
だけど、実際にはそんなのばっかりですよ。
なんにも考えずに超硬の刃物つかってたりとかあるんですよね。
よくわからない人は、工場の床を掃除するための清掃道具で、箒とモップのどちらを購入するか検討しないで、目についたから箒を買っちゃった事だと思ってください。
結果的にどちらを使っても掃除は出来ると思います。
シルビアとプリオラは綺麗になるんだからそれでいいっていう意見だな。
よく言えば『弘法筆を選ばず』か。
「ただ、色々な局面で使えるって考えたら、結局ショートソードなのよね」
プリオラはそう付け加えた。
「そうそう。使っている人が多いっていうのはそういうことよ。だから、使いやすいからっていうのは正しいの。そんなのもわからずに訊いてきた奴が悪いわ。今から一緒に殴りに行く?」
シルビアがスターレットにそう訊ねたが、スターレットは全力で否定した。
今行かないなら、明日か?
それとも、振り返れば訊いた奴がいる?
…………
ま、不良がでなければそれでいいじゃない。
※作者の独り言
不良が出た時に、原因となる工具、工法等に選定理由がないとき本当に困る。
開発時と同じような検証を要求されますからね。
それが今
0
あなたにおすすめの小説
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる