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第427話 かりゅう退治
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「アルト、手紙が来ているわよ」
心地よい気温の午後、冒険者ギルドの自分の席で眠気と格闘しているとシルビアに声をかけられた。
「手紙か」
この世界では手紙は専業の郵便業者などないので、冒険者が他の依頼のついてに運搬を依頼されて運ぶことが殆どだ。
なので、差出人が依頼した場所から目的の場所まで移動する冒険者がいないといつまでたっても届かない。
王家や貴族ともなれば、書簡の運搬のみで冒険者を雇う事もあるし、自分の家来を使ったりも出来るので話は別だが。
さて、差出人に心当たりは全くないので、誰が送ってきたのかという興味がわいてきたので、急いで運んできてくれた冒険者のところに向かう。
「あ、受け取りのサインをお願いします」
冒険者パーティーのリーダーらしき男から依頼書を渡され、そこに俺のサインをすると相手は嬉しそうにそれを持って受付カウンターに走っていった。
依頼料を受け取るためだ。
「誰だと思ったらオッティか」
差出人はオッティだった。
「グレイスのところの研究員よね」
「そうそう」
シルビアが手紙を覗き込む。
他人の手紙を読むとか常識がないんじゃないかとおもったが、よくよく考えたら現代社会は会社のメールは全て監視されているから、そんなに非常識でもないのかな?
恋文でもないし。
それと、これは日本語で書かれているので、シルビアは読めないはずだ。
「えーっと、内容は『かりゅうをやっつけたいのでこっちに来て。最優先事項よ(CV:井上喜久子●7歳)』って、おいおい」
伏字にしているところは意図的に間違っているんですよね?
「え、火竜?そんなのアルトが行っても無理じゃないの?」
「んー、最優先事項のボケは無視ですか」
一応解説しておくと、最優先事項ってのは『おねティ』のメインヒロインである風見みずほの台詞で、そのアニメの主題歌が「Shooting Star」。
で、呪われた島で暴れていた火竜の名前がシューティングスターなのだけど、こんなもん40代以上じゃないとわかりにくいわ!
さあ、そんなことはおいといて。
「かりゅうってわざわざひらがなで書くのも気になるなあ。本当にドラゴンなのか気になるところだが」
「行くの?」
「うーん、どうしようかな。冒険者ギルドをとおして依頼するっていうのなら断る理由は無いけれど……」
ということを手紙で書いて送ったら、見事に冒険者ギルドから指名依頼という連絡があった。
そして、仕事なので晴れて堂々とグレイス領に出張となる。
どうも本業以外での外出が多いと他部門からのクレームがあったらしく、最近は業務の一環ですよという理由が必要になってしまったのだ。
グレイス領に出張してオッティに会うと第一声が
「ゴムの加硫の条件知っているか?」
だった。
「流石にそんなもん知らんけどなあ。そんなの手紙で聞けばよかったんじゃないか?」
「それだとアルトが知っていたとして、万が一情報が流出した時にこわいだろ」
「どこの誰がこんな中世ヨーロッパ程度の文明レベルの世界でゴムの架橋するっていうんだよ!」
「ほら、他の小説だとカエルみたいなモンスターとかからゴムの代わりになる物質を見つけたり、ゴムの生産を現地人に教えたりするじゃないか。そこに架橋、加硫の方法が知られたらどうするんだ?技術的に間違っているのをニヤニヤしながら読むのが楽しいのに、その楽しみを俺から奪うっていうのか?」
「そんな楽しみ知らんがな」
加硫のというのはゴムに硫黄を加える工程の事である。
この工程によってゴムの弾性が生まれる。
異世界転生小説をいくつか読んでみたが、ちゃんと加硫の工程を描写したのはなかったな。
それでもゴムは生産されているので、ファンタジーならではの不思議な法則でもあるんだとは思っていたが、まあ作者が知らないだけだよね。
かく言う自分も加硫という単語は知っているが、見たことは無いので大差はない。
まあ、それでもゴムホースメーカーの人とはそれなりに品質の話をしてきたので、全く知らない人よりは上か。
専門業者からみたら団栗の背比べなんだろうけど。
脱線にはなるが、金属材料にも硫黄を添加することはある。
切削性の向上に繋がるからだ。
環境負荷の関係で最近は出来なかったりするけど。
「まあ、それとこれは俺が心配するようなことなじゃいけど」
と前置きして、ゴムホースの生産の心配事をオッティに伝える。
「ゴムホースの生産ラインの負荷計算はどうするんだ?ホースのサイズごとに段取り替えが発生するけど、頻繁な段取り替えはラインの稼働率が悪くなるだろ。生産管理と製造の管理者の育成なんて俺もお前も出来ないじゃないか」
ゴムホースの生産計画はおよそ二ヶ月前くらいに策定する。
そして、生産途中の段取り替えは基本的にはやらない。
突発の注文に応えるだけの余力はないくらいに、きっちりと生産計画をつくるのだ。
それと、ホースのサイズごとと言ったが、実際には同じサイズでも種類が違うものが有るので、品数はもっと増える。
そんな生産計画を未経験の俺達で出来るわけがない。
が、オッティは俺を憐れむような目で見た。
「それは地球での話だろう。ここにそんなにゴムホースの需要が有ると思うか?ゴムの需要なんて馬車の車輪をゴムタイヤに全て替えるようなことをしたって、需要なんて直ぐに枯渇する程度だぞ。ましてやホースだ。好事家が買って終わりだよ。ホースのサイズなんてこちらで決めた奴だけで使ってもらえばいいんだ」
「それもそうか」
いらない心配をしたようだな。
馬車には液体を使うことなんて無い。
いや、エアコン配管があるから、液体は使っているか。
それでも、それ以外に液体を使っていないから、ゴムホースの需要なんて多くは無い。
生産計画なんて細かく立案しなくてもいいか。
「あ、それと俺達みたいな素人だと加硫の際に成形で偏肉させちゃうだろ。偏肉したゴムホースって挿入できなかったりするから、その辺の公差を決めたりするのが必要になってくるはずだ」
偏肉とはゴムホースの外径と内径の中心がずれた状態のことであり、そうなるとゴムホースの板厚が均一ではなくなってしまう。
そのホースを使用するばあい、内外両方で押さえようとしたときに不具合が出る可能性がある。
庭の水撒きに使用するような場合なら問題にはならないが、高圧をかける場合には抜け防止として内外押さえが必要になってくる。
エンジンルーム見ればわかるよね、ゴムホースの押さえ方が全然違うから。
「やはり加硫退治は難しそうだな。加硫なんて忘れて花街にでも行くか?」
とオッティに言われたので、
「遠慮しておくよ。俺は自分のものに自信が無いから、花柳で短小と言われたくはないんだよ」
と断った。
※作者の独り言
ゴムのノウハウなんて無いのに対策書を書く身にもなれ!
心地よい気温の午後、冒険者ギルドの自分の席で眠気と格闘しているとシルビアに声をかけられた。
「手紙か」
この世界では手紙は専業の郵便業者などないので、冒険者が他の依頼のついてに運搬を依頼されて運ぶことが殆どだ。
なので、差出人が依頼した場所から目的の場所まで移動する冒険者がいないといつまでたっても届かない。
王家や貴族ともなれば、書簡の運搬のみで冒険者を雇う事もあるし、自分の家来を使ったりも出来るので話は別だが。
さて、差出人に心当たりは全くないので、誰が送ってきたのかという興味がわいてきたので、急いで運んできてくれた冒険者のところに向かう。
「あ、受け取りのサインをお願いします」
冒険者パーティーのリーダーらしき男から依頼書を渡され、そこに俺のサインをすると相手は嬉しそうにそれを持って受付カウンターに走っていった。
依頼料を受け取るためだ。
「誰だと思ったらオッティか」
差出人はオッティだった。
「グレイスのところの研究員よね」
「そうそう」
シルビアが手紙を覗き込む。
他人の手紙を読むとか常識がないんじゃないかとおもったが、よくよく考えたら現代社会は会社のメールは全て監視されているから、そんなに非常識でもないのかな?
恋文でもないし。
それと、これは日本語で書かれているので、シルビアは読めないはずだ。
「えーっと、内容は『かりゅうをやっつけたいのでこっちに来て。最優先事項よ(CV:井上喜久子●7歳)』って、おいおい」
伏字にしているところは意図的に間違っているんですよね?
「え、火竜?そんなのアルトが行っても無理じゃないの?」
「んー、最優先事項のボケは無視ですか」
一応解説しておくと、最優先事項ってのは『おねティ』のメインヒロインである風見みずほの台詞で、そのアニメの主題歌が「Shooting Star」。
で、呪われた島で暴れていた火竜の名前がシューティングスターなのだけど、こんなもん40代以上じゃないとわかりにくいわ!
さあ、そんなことはおいといて。
「かりゅうってわざわざひらがなで書くのも気になるなあ。本当にドラゴンなのか気になるところだが」
「行くの?」
「うーん、どうしようかな。冒険者ギルドをとおして依頼するっていうのなら断る理由は無いけれど……」
ということを手紙で書いて送ったら、見事に冒険者ギルドから指名依頼という連絡があった。
そして、仕事なので晴れて堂々とグレイス領に出張となる。
どうも本業以外での外出が多いと他部門からのクレームがあったらしく、最近は業務の一環ですよという理由が必要になってしまったのだ。
グレイス領に出張してオッティに会うと第一声が
「ゴムの加硫の条件知っているか?」
だった。
「流石にそんなもん知らんけどなあ。そんなの手紙で聞けばよかったんじゃないか?」
「それだとアルトが知っていたとして、万が一情報が流出した時にこわいだろ」
「どこの誰がこんな中世ヨーロッパ程度の文明レベルの世界でゴムの架橋するっていうんだよ!」
「ほら、他の小説だとカエルみたいなモンスターとかからゴムの代わりになる物質を見つけたり、ゴムの生産を現地人に教えたりするじゃないか。そこに架橋、加硫の方法が知られたらどうするんだ?技術的に間違っているのをニヤニヤしながら読むのが楽しいのに、その楽しみを俺から奪うっていうのか?」
「そんな楽しみ知らんがな」
加硫のというのはゴムに硫黄を加える工程の事である。
この工程によってゴムの弾性が生まれる。
異世界転生小説をいくつか読んでみたが、ちゃんと加硫の工程を描写したのはなかったな。
それでもゴムは生産されているので、ファンタジーならではの不思議な法則でもあるんだとは思っていたが、まあ作者が知らないだけだよね。
かく言う自分も加硫という単語は知っているが、見たことは無いので大差はない。
まあ、それでもゴムホースメーカーの人とはそれなりに品質の話をしてきたので、全く知らない人よりは上か。
専門業者からみたら団栗の背比べなんだろうけど。
脱線にはなるが、金属材料にも硫黄を添加することはある。
切削性の向上に繋がるからだ。
環境負荷の関係で最近は出来なかったりするけど。
「まあ、それとこれは俺が心配するようなことなじゃいけど」
と前置きして、ゴムホースの生産の心配事をオッティに伝える。
「ゴムホースの生産ラインの負荷計算はどうするんだ?ホースのサイズごとに段取り替えが発生するけど、頻繁な段取り替えはラインの稼働率が悪くなるだろ。生産管理と製造の管理者の育成なんて俺もお前も出来ないじゃないか」
ゴムホースの生産計画はおよそ二ヶ月前くらいに策定する。
そして、生産途中の段取り替えは基本的にはやらない。
突発の注文に応えるだけの余力はないくらいに、きっちりと生産計画をつくるのだ。
それと、ホースのサイズごとと言ったが、実際には同じサイズでも種類が違うものが有るので、品数はもっと増える。
そんな生産計画を未経験の俺達で出来るわけがない。
が、オッティは俺を憐れむような目で見た。
「それは地球での話だろう。ここにそんなにゴムホースの需要が有ると思うか?ゴムの需要なんて馬車の車輪をゴムタイヤに全て替えるようなことをしたって、需要なんて直ぐに枯渇する程度だぞ。ましてやホースだ。好事家が買って終わりだよ。ホースのサイズなんてこちらで決めた奴だけで使ってもらえばいいんだ」
「それもそうか」
いらない心配をしたようだな。
馬車には液体を使うことなんて無い。
いや、エアコン配管があるから、液体は使っているか。
それでも、それ以外に液体を使っていないから、ゴムホースの需要なんて多くは無い。
生産計画なんて細かく立案しなくてもいいか。
「あ、それと俺達みたいな素人だと加硫の際に成形で偏肉させちゃうだろ。偏肉したゴムホースって挿入できなかったりするから、その辺の公差を決めたりするのが必要になってくるはずだ」
偏肉とはゴムホースの外径と内径の中心がずれた状態のことであり、そうなるとゴムホースの板厚が均一ではなくなってしまう。
そのホースを使用するばあい、内外両方で押さえようとしたときに不具合が出る可能性がある。
庭の水撒きに使用するような場合なら問題にはならないが、高圧をかける場合には抜け防止として内外押さえが必要になってくる。
エンジンルーム見ればわかるよね、ゴムホースの押さえ方が全然違うから。
「やはり加硫退治は難しそうだな。加硫なんて忘れて花街にでも行くか?」
とオッティに言われたので、
「遠慮しておくよ。俺は自分のものに自信が無いから、花柳で短小と言われたくはないんだよ」
と断った。
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