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第426話 最近三国志や戦国時代の例え話をする上司っていなくなったよね 後編
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そんなわけで監査当日を迎えた。
本当は事前監査のみで帰る予定だったのだが、グレイスがどうしてもというので残ることになった。
無関係の人間が監査に立ちあうわけにはいかないので、名目上はステラの冒険者ギルドからの期限付きレンタル移籍ということになっている。
まあ、監査なんて慣れていない人間からしたら不安だし、仕方がない事なのかなとは思う。
「本日の監査よろしくお願いいたします」
本日の監査員はひょろっとした体形の若い男性で、吹けば飛ぶようなという形容がぴったりだ。
折角罠にはめるんだから、曹操みたいな人に来て欲しかった。
曹操見たこと無いけど。
「沖田総司から萌え要素を全部あく抜きした感じね」
とはグレイスの感想である。
いや、それって創作の沖田総司だよね?
「もしくは総受けの鬼庭綱元から受け要素をゼロにした感じ?」
もっとわかりにくい例えが出てきた。
「片倉景綱じゃなくて鬼庭綱元?しかもいかりや長介のイメージしか浮かばないんだけど」
「それは父親の左月斎よ。っていうか、大河ドラマの話でしょ」
どうも自分の中では父親の左月斎と息子の綱元がごっちゃになっていたようだ。
というか、歴史上の人物の例えから更に発展させて、BL交えてくると伝わりにくさが格段に上がるな。
こんな上司は持ちたくない。
監査員の外見はともかく、冒険者ギルドの運営についての監査は始まった。
そして、やはり最初は買取部門を見たいと言われる。
「ここまではアルトの読み通りね」
グレイスがこそっと耳打ちしてきた。
俺は無言で頷く。
ただし、言ってみればこれは初手でしかない。
ここを読み外すようでは不測の事態になるだろうな。
かなり細かく質問をされて、買取部門の担当者が資料を調べるのに時間がかかったりもしたが、結局買取部門で指摘事項は出てこなかった。
俺からの事前に出した指示で、極力時間を引っ張るようにというのがあって、調べるのに時間がかかったのは時間稼ぎの意味もある。
この辺は時間が有限な監査員に他を見させないためのテクニックでもある。
午後の時間もかなりつかい、太陽がさようならをしそうになる前にと思って俺は切り出した。
「時間も押してますし、監査はこの辺で」
と俺が言うも、
「宿は一週間おさえてありますから御心配には及びません。なんなら明日も監査できますよ」
と監査員が返してきた。
それと、彼のなんか悪い笑みが見えたような気もした。
こいつ、見た目とは大違いでかなり厄介な相手だ。
一日で終わる監査なのに、なんで宿を一週間おさえているんだよ。
やる気満々じゃねーか。
買取部門だけをじっくり見るつもりじゃなく、他も気になるところがあればとことん監査するつもりだったのだろう。
そういえば本物の偽撃転殺も三日間西門を攻撃したんだっけな。
さては三国志マニアだな。
「それはこれからの監査の進み具合に応じてですね」
と受け流しておいたが、心のなかではそんなに長くいられてもなあという気持ちでいっぱいだ。
予定してない指摘事項が出てきては面倒である。
「では、受付付近を確認させてもらいましょうか」
今度は受付を見ることになった。
そして、受付の付近には依頼が貼り出されている掲示板もある。
ただし、朝依頼が取られてしまったので、その後追加されたものを入れてもそんなには多くない。
「ちょっと、アルト」
「なんだい、グレイス」
グレイスが俺の袖を引っ張るので、そちらを向いた。
「掲示板の見づらさに気がつかなかったらどうするのよ?」
「ああそれなら大丈夫だ。こちらから自白すればいいんだから」
「自白するの?」
「そうだよ」
不思議そうな顔のグレイスだが、これはよく使う手段だ。
相手がボンクラ過ぎてこちらの用意した瑕疵に気づかない場合は、敢えて自白して気づかせるのだ。
だが、今回はその自白の必要もなく、無事に指摘事項となってくれた。
勿論対策は用意しているのだが、そこは対策までの日数をきちんともらっておく。
そして、指摘事項のランクも重要とはならず、軽微な改善要求止まりだったのだ。
これで俺も役目を果たしたってことになるな。
監査結果を書いた報告書を読んでいるとグレイスがやってきた。
「小泉紀男に酒を飲ませて、シャブを勧めて非行に走るのを止めた時の中松警部みたいな顔をしているわね」
「美味しんぼのアニメで欠番になった『及第ガユ』で例えても、伝わる人が限定されちゃうよ」
「だって歴史上の人物の張繍なんて見たこと無いんだから、虚誘掩殺の計が成功した時の顔なんて例えようがないじゃない」
「光輝でええやん」
「光輝なんて鉄人でお腹いっぱいよ。若しくは草間大作」
「半ズボンの男の子が好きなのね」
「そうよ。それが嫌いな女子なんていないわ」
こんなところで自分の趣味を暴露されても対応に困るので止めて欲しい。
っていうか、デスノート使っているあれの「計画通り」って表現すればいいだけなのにね。
「で、俺の顔の評価をしに来たわけじゃないだろう?なんの用事があったんだ」
「そうそう、まずは監査を無事に終えられたことについてお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」
「仕事だからね」
と言ってはみたが、感謝されるのは嬉しい。
監査なんて乗り切って当たり前。
厳しい指摘事項が出ると、何故か製造部門からこっちが恨まれるようなマイナスのイベントでしかないので、こうして感謝されるなんてことはなかったのだ。
「指摘事項も期日までには対策出来るし、これで運営許可の取り消しの心配も無くなったわ」
「これで俺もやっとステラに戻る事が出来るね」
「ええ。また次の監査の時はお願いね」
「え?」
グレイスのお願いに驚いた。
今回でやり方はわかったはずなので、次回の監査は自分の領地の人間でやるものだと思っていたが、次回の監査もご指名をいただいてしまった。
「だって、あんなずる賢い、狡猾な考え方なんてアルト以外には出来ないもの」
「褒め言葉じゃないよね」
せめて乱世の奸雄みたいって言って欲しかった。
※作者の独り言
監査の時はあらかじめ指摘される個所を用意して、変な指摘を貰わないようにしていますが、全国共通ですよね?
本当は事前監査のみで帰る予定だったのだが、グレイスがどうしてもというので残ることになった。
無関係の人間が監査に立ちあうわけにはいかないので、名目上はステラの冒険者ギルドからの期限付きレンタル移籍ということになっている。
まあ、監査なんて慣れていない人間からしたら不安だし、仕方がない事なのかなとは思う。
「本日の監査よろしくお願いいたします」
本日の監査員はひょろっとした体形の若い男性で、吹けば飛ぶようなという形容がぴったりだ。
折角罠にはめるんだから、曹操みたいな人に来て欲しかった。
曹操見たこと無いけど。
「沖田総司から萌え要素を全部あく抜きした感じね」
とはグレイスの感想である。
いや、それって創作の沖田総司だよね?
「もしくは総受けの鬼庭綱元から受け要素をゼロにした感じ?」
もっとわかりにくい例えが出てきた。
「片倉景綱じゃなくて鬼庭綱元?しかもいかりや長介のイメージしか浮かばないんだけど」
「それは父親の左月斎よ。っていうか、大河ドラマの話でしょ」
どうも自分の中では父親の左月斎と息子の綱元がごっちゃになっていたようだ。
というか、歴史上の人物の例えから更に発展させて、BL交えてくると伝わりにくさが格段に上がるな。
こんな上司は持ちたくない。
監査員の外見はともかく、冒険者ギルドの運営についての監査は始まった。
そして、やはり最初は買取部門を見たいと言われる。
「ここまではアルトの読み通りね」
グレイスがこそっと耳打ちしてきた。
俺は無言で頷く。
ただし、言ってみればこれは初手でしかない。
ここを読み外すようでは不測の事態になるだろうな。
かなり細かく質問をされて、買取部門の担当者が資料を調べるのに時間がかかったりもしたが、結局買取部門で指摘事項は出てこなかった。
俺からの事前に出した指示で、極力時間を引っ張るようにというのがあって、調べるのに時間がかかったのは時間稼ぎの意味もある。
この辺は時間が有限な監査員に他を見させないためのテクニックでもある。
午後の時間もかなりつかい、太陽がさようならをしそうになる前にと思って俺は切り出した。
「時間も押してますし、監査はこの辺で」
と俺が言うも、
「宿は一週間おさえてありますから御心配には及びません。なんなら明日も監査できますよ」
と監査員が返してきた。
それと、彼のなんか悪い笑みが見えたような気もした。
こいつ、見た目とは大違いでかなり厄介な相手だ。
一日で終わる監査なのに、なんで宿を一週間おさえているんだよ。
やる気満々じゃねーか。
買取部門だけをじっくり見るつもりじゃなく、他も気になるところがあればとことん監査するつもりだったのだろう。
そういえば本物の偽撃転殺も三日間西門を攻撃したんだっけな。
さては三国志マニアだな。
「それはこれからの監査の進み具合に応じてですね」
と受け流しておいたが、心のなかではそんなに長くいられてもなあという気持ちでいっぱいだ。
予定してない指摘事項が出てきては面倒である。
「では、受付付近を確認させてもらいましょうか」
今度は受付を見ることになった。
そして、受付の付近には依頼が貼り出されている掲示板もある。
ただし、朝依頼が取られてしまったので、その後追加されたものを入れてもそんなには多くない。
「ちょっと、アルト」
「なんだい、グレイス」
グレイスが俺の袖を引っ張るので、そちらを向いた。
「掲示板の見づらさに気がつかなかったらどうするのよ?」
「ああそれなら大丈夫だ。こちらから自白すればいいんだから」
「自白するの?」
「そうだよ」
不思議そうな顔のグレイスだが、これはよく使う手段だ。
相手がボンクラ過ぎてこちらの用意した瑕疵に気づかない場合は、敢えて自白して気づかせるのだ。
だが、今回はその自白の必要もなく、無事に指摘事項となってくれた。
勿論対策は用意しているのだが、そこは対策までの日数をきちんともらっておく。
そして、指摘事項のランクも重要とはならず、軽微な改善要求止まりだったのだ。
これで俺も役目を果たしたってことになるな。
監査結果を書いた報告書を読んでいるとグレイスがやってきた。
「小泉紀男に酒を飲ませて、シャブを勧めて非行に走るのを止めた時の中松警部みたいな顔をしているわね」
「美味しんぼのアニメで欠番になった『及第ガユ』で例えても、伝わる人が限定されちゃうよ」
「だって歴史上の人物の張繍なんて見たこと無いんだから、虚誘掩殺の計が成功した時の顔なんて例えようがないじゃない」
「光輝でええやん」
「光輝なんて鉄人でお腹いっぱいよ。若しくは草間大作」
「半ズボンの男の子が好きなのね」
「そうよ。それが嫌いな女子なんていないわ」
こんなところで自分の趣味を暴露されても対応に困るので止めて欲しい。
っていうか、デスノート使っているあれの「計画通り」って表現すればいいだけなのにね。
「で、俺の顔の評価をしに来たわけじゃないだろう?なんの用事があったんだ」
「そうそう、まずは監査を無事に終えられたことについてお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」
「仕事だからね」
と言ってはみたが、感謝されるのは嬉しい。
監査なんて乗り切って当たり前。
厳しい指摘事項が出ると、何故か製造部門からこっちが恨まれるようなマイナスのイベントでしかないので、こうして感謝されるなんてことはなかったのだ。
「指摘事項も期日までには対策出来るし、これで運営許可の取り消しの心配も無くなったわ」
「これで俺もやっとステラに戻る事が出来るね」
「ええ。また次の監査の時はお願いね」
「え?」
グレイスのお願いに驚いた。
今回でやり方はわかったはずなので、次回の監査は自分の領地の人間でやるものだと思っていたが、次回の監査もご指名をいただいてしまった。
「だって、あんなずる賢い、狡猾な考え方なんてアルト以外には出来ないもの」
「褒め言葉じゃないよね」
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