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四章 もう一つの組織
19話:覚悟
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クレーエンは目を覚ました。
朝のルーティンが決まっているわけではないが、食事を取る前に身体を動かさなければならない性分である。
寝室を出る。
走り込みだけでなくて、早朝から走るのも良いかもしれない。
ラメッタの活躍で治安が良くなったと聞いた。待ちに出て様子を見ても良いかもしれない。
「あいつがこの国を変えているのか」
気に食わないという気持ちがないわけではない。
だが、エアデ王国でラメッタは厄介者という扱いを受けていた一方で、魔道具職人として水資源を守っていた。
世界樹に魔法薬を掛ける実験を行って世界樹を暴走させたのは庇いようがないが。
バオム国を豊かにしている。
それだけでも、ラメッタを評価するしかない。
「俺はあいつと違って役立たずか」
クレーエンは騎士団に拾われたものの、騎士団にはなれなかった。その生まれが騎士に相応しいものではなかったのだろうか?
詳しいことはクレーエンには分からない。
クレーエンは自分への苛立ちをぶつけるものがなく、走ることですっきりしようとしていた。
城を出る。
「よし、クレーエン。デート行くぞ!」
ピンクの髪の少女。
今日は一人らしい。
「やけに積極的だな?」
ラメッタのからかうような言い方に苛立つ。代わりに、そのテンションに応えた。
「ふふふ。クレーエンが元気ないからの! オシュテンに勝てなかったからか?」
「負けてもないが?」
「そっか。なんでもよい」
「生意気な」
「クレーエン、魔剣を持ってこい。この国を変える」
「は?」
「力で変えなきゃならないものもある。残念ながらな。この国はもうすぐ一つになれる、じゃが」
もうすぐ一つになる、それはつまりオシュテン率いるオシュテン派を引き込むことができるということだ。
「オシュテンを探すのか?」
「違うな。他の細かい組織を押さえつける。クレーエン、得意じゃろ?」
「対人戦の経験はまだ浅いって分かっただろ」
「対人以外なら?」
「魔物も魔族も倒した。拾われる前も拾われてからも。その一人ぼっちの戦い方が俺には合っていた。組織では厄介なほどにな」
「統率を考えれば仕方ない。じゃが、今は変わり者でも戦力になる」
「そうかよ」
クレーエンは表情を押し殺した。ラメッタの言葉でにやけてしまえば、ラメッタが調子に乗ることは明らかだ。
「魔剣、使い勝手いいじゃろ?」
「悲しいことに」
クレーエンの剣はラメッタが調整して魔道具に変えたものだ。多様な技を使えるだけでなく、怪力のクレーエンであっても決して壊れない丈夫さを持つ。
クレーエンは嫌々部屋に戻ることにした。ラメッタが背中に飛び付く。振り払おうとすると、ラメッタはクレーエンの髪を引っ張る。
「痛いんだが?」
「わし、おんぶしろ」
「なぜだ?」
「美少女を背負いたいと思わんか? それにわしはうとうと眠りながら移動したい」
「魔剣を取りに行けばいいんだな?」
クレーエンは得意気な表情になる。ラメッタはクレーエンが言うことを聞くことが嬉しいらしい。
「そうじゃ、そうじゃ!」
偉そうに言う。
「本当にいいんだな?」
「バオムのためじゃ」
ラメったは気づかない。
背負われると満足げに目を閉じて。
部屋に着いたクレーエンは、魔剣を持ってきて刃先を見せる。
ラメッタは短い髪を持って一歩下がる。そして、泣いた。
元々ラメッタはお団子ツインテールだったが、クレーエンが世界樹を暴走させた反省しないラメッタに苛立ち切ってしまったのだ。
ラメッタはお気に入りの髪型を失ってしまい大きなショックを受けていて。今でもトラウマであった。
「ごめんなのじゃ、でもわし傾国の美少女になるんじゃぞ!」
「お姉さんにしか興味ないが?」
「人でなし! 美少女は国の財産じゃぞ」
ラメッタは喚く。
世界樹によって、ラメッタはおいない。十三才で止まったしまったため、七十八年生きたところで子供らしい部分がある。
普段は元気がある一方で、疲れやすさがあるのはそのためだろう。
「準備はした」
街へ。
バオムに入国した際、ラメッタたちはテロ組織に襲撃された。ラメッタが誘拐されたのだ。
そう思うと、街の離れまで歩いて何事もないのは治安が良くなったからだろう。
「どこまで歩くんだ?」
「クレーエン、癇癪を起こすのはまだ早いぞ?」
ラメッタは背負いバッグから水筒を取り出しクレーエンに渡す。
「甘いものじゃよ」
「ガキ扱いか?」
「糖分不足じゃろ?」
ある程度歩くと、いっそう砂漠で、乾いた砂が時々舞う。
視界が悪い。
「客人か?」
ラフな格好だが目つきの悪い男たちが、互いの顔を合わせる。
あいつ、知り合いか?
知らない。
ガキもいるぞ?
どうする?
捕まえるか?
面白いもの見たさに来たなら物を知らない旅人か?
「ここは、殴り合いでお金を賭けて楽しむところだ。旅人か?」
仕切っている男が値踏みするように言う。
「エアデ王国からバオムに来た者だ」
男たちは愉快そうに笑う。
そして、銃を向けてきた。
「王国が動くほどのことか。バオムの王族はエアデ王国でも無能って知ってるのか!」
ラメッタのこめかみがぴくりと動く。拳を握り、反論しようと息を吸う。
が。
先にクレーエンが仕切る男を蹴り飛ばした。
朝のルーティンが決まっているわけではないが、食事を取る前に身体を動かさなければならない性分である。
寝室を出る。
走り込みだけでなくて、早朝から走るのも良いかもしれない。
ラメッタの活躍で治安が良くなったと聞いた。待ちに出て様子を見ても良いかもしれない。
「あいつがこの国を変えているのか」
気に食わないという気持ちがないわけではない。
だが、エアデ王国でラメッタは厄介者という扱いを受けていた一方で、魔道具職人として水資源を守っていた。
世界樹に魔法薬を掛ける実験を行って世界樹を暴走させたのは庇いようがないが。
バオム国を豊かにしている。
それだけでも、ラメッタを評価するしかない。
「俺はあいつと違って役立たずか」
クレーエンは騎士団に拾われたものの、騎士団にはなれなかった。その生まれが騎士に相応しいものではなかったのだろうか?
詳しいことはクレーエンには分からない。
クレーエンは自分への苛立ちをぶつけるものがなく、走ることですっきりしようとしていた。
城を出る。
「よし、クレーエン。デート行くぞ!」
ピンクの髪の少女。
今日は一人らしい。
「やけに積極的だな?」
ラメッタのからかうような言い方に苛立つ。代わりに、そのテンションに応えた。
「ふふふ。クレーエンが元気ないからの! オシュテンに勝てなかったからか?」
「負けてもないが?」
「そっか。なんでもよい」
「生意気な」
「クレーエン、魔剣を持ってこい。この国を変える」
「は?」
「力で変えなきゃならないものもある。残念ながらな。この国はもうすぐ一つになれる、じゃが」
もうすぐ一つになる、それはつまりオシュテン率いるオシュテン派を引き込むことができるということだ。
「オシュテンを探すのか?」
「違うな。他の細かい組織を押さえつける。クレーエン、得意じゃろ?」
「対人戦の経験はまだ浅いって分かっただろ」
「対人以外なら?」
「魔物も魔族も倒した。拾われる前も拾われてからも。その一人ぼっちの戦い方が俺には合っていた。組織では厄介なほどにな」
「統率を考えれば仕方ない。じゃが、今は変わり者でも戦力になる」
「そうかよ」
クレーエンは表情を押し殺した。ラメッタの言葉でにやけてしまえば、ラメッタが調子に乗ることは明らかだ。
「魔剣、使い勝手いいじゃろ?」
「悲しいことに」
クレーエンの剣はラメッタが調整して魔道具に変えたものだ。多様な技を使えるだけでなく、怪力のクレーエンであっても決して壊れない丈夫さを持つ。
クレーエンは嫌々部屋に戻ることにした。ラメッタが背中に飛び付く。振り払おうとすると、ラメッタはクレーエンの髪を引っ張る。
「痛いんだが?」
「わし、おんぶしろ」
「なぜだ?」
「美少女を背負いたいと思わんか? それにわしはうとうと眠りながら移動したい」
「魔剣を取りに行けばいいんだな?」
クレーエンは得意気な表情になる。ラメッタはクレーエンが言うことを聞くことが嬉しいらしい。
「そうじゃ、そうじゃ!」
偉そうに言う。
「本当にいいんだな?」
「バオムのためじゃ」
ラメったは気づかない。
背負われると満足げに目を閉じて。
部屋に着いたクレーエンは、魔剣を持ってきて刃先を見せる。
ラメッタは短い髪を持って一歩下がる。そして、泣いた。
元々ラメッタはお団子ツインテールだったが、クレーエンが世界樹を暴走させた反省しないラメッタに苛立ち切ってしまったのだ。
ラメッタはお気に入りの髪型を失ってしまい大きなショックを受けていて。今でもトラウマであった。
「ごめんなのじゃ、でもわし傾国の美少女になるんじゃぞ!」
「お姉さんにしか興味ないが?」
「人でなし! 美少女は国の財産じゃぞ」
ラメッタは喚く。
世界樹によって、ラメッタはおいない。十三才で止まったしまったため、七十八年生きたところで子供らしい部分がある。
普段は元気がある一方で、疲れやすさがあるのはそのためだろう。
「準備はした」
街へ。
バオムに入国した際、ラメッタたちはテロ組織に襲撃された。ラメッタが誘拐されたのだ。
そう思うと、街の離れまで歩いて何事もないのは治安が良くなったからだろう。
「どこまで歩くんだ?」
「クレーエン、癇癪を起こすのはまだ早いぞ?」
ラメッタは背負いバッグから水筒を取り出しクレーエンに渡す。
「甘いものじゃよ」
「ガキ扱いか?」
「糖分不足じゃろ?」
ある程度歩くと、いっそう砂漠で、乾いた砂が時々舞う。
視界が悪い。
「客人か?」
ラフな格好だが目つきの悪い男たちが、互いの顔を合わせる。
あいつ、知り合いか?
知らない。
ガキもいるぞ?
どうする?
捕まえるか?
面白いもの見たさに来たなら物を知らない旅人か?
「ここは、殴り合いでお金を賭けて楽しむところだ。旅人か?」
仕切っている男が値踏みするように言う。
「エアデ王国からバオムに来た者だ」
男たちは愉快そうに笑う。
そして、銃を向けてきた。
「王国が動くほどのことか。バオムの王族はエアデ王国でも無能って知ってるのか!」
ラメッタのこめかみがぴくりと動く。拳を握り、反論しようと息を吸う。
が。
先にクレーエンが仕切る男を蹴り飛ばした。
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