白銀の双紋姫

藤和

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第一章

転生

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第一話

日が傾き、学生や、会社勤めの人が多く見られる街の大通りを佐々凪 遥は歩いていた。
明日の休日を何して過ごそうか考えながら歩き、信号で止まる。同じく信号待ちをしている人達の中からも明日の休日の話が出ている。こんな毎日がこれからも続くとこの時の彼はそう思っていた。

ドン!

何者かに車道へと突き飛ばされる。車が来ていなければ良かったのだが、車がもう急ブレーキをかけても間に合わないところまで来ていた。

彼が最後に見たのは突っ込んでくる車であった。



「うわぁ!」

恐怖で目が覚めた。

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・夢か」

夢である事に安堵する。

「これで4度目か。」

私がこの夢を見るのは4回目、とはいえ車に跳ねられる恐怖は変わらない。
何故こんな夢を見るのか、実は私の前世が佐々凪 遥だったからである。初めてこの夢を見て、目が覚めたとき佐々凪 遥だった事を思い出した。今の私の名前はリーディア・ウェン・ハルディア、ハルディア侯爵家の娘である。
ここでハルディア公爵家と、仕えている国について説明しようと思う。ハルディア公爵家はハールハイド王国の公爵家で、5代前の国王の弟が叙爵されてできた。現当主は婿養子で、現国王の弟とのこと。ハールハイド王国は1300年の歴史を持つ王国で、今の国王の名前はグラント・ヴァン・ハールハイド王である。グラント陛下とハルディア公爵の仲は悪いらしい。メイドから聞いたところによると自分ではなく兄が国王を継いだ事に納得しておらず、事あるごとに反発しているとのこと。グラント陛下は反発しかしないし、領地経営も上手くいっていないハルディア公爵ハルディア前公爵の娘をどうにかしようとしているらしいけど公爵に同調する貴族の派閥が大きい為中々罰することができないでいるらしい。

そんなことより私のことが聞きたい?私の名前はさっき言ったばかりだから抜くとして、私はルミナリア・ウェン・ハルディアの娘として生まれた。私は父親の名前を知らないし、会ったこともない。お母様に聞いたこともあったけど、教えてはくれなかった。でもその時のお母様の様子から教えられない理由があるのはなんとなく分かった。記憶が蘇ったのは4か月くらい前で、最初はあの夢から飛び起きたら前世を思い出して驚いたけど死んだ時の夢のおかげか直ぐに落ち着いた。
私の住んでいるところ?公爵領の屋敷の離れよ。お母様は2年前に亡くなったから今は私だけが住んでいる。この離れに何時もやってくるのは数人の使用人だけ。そこで私は公爵の命令で魔道具に魔力を溜め込む作業をさせられている。公爵は私の魔力が溜まった魔道具を取りに数日おきにやって来る。でも離れの玄関の所に魔力を溜めた魔道具を置いておけばそれを持ってさっさと帰るからお母様が亡くなった2年前から顔を合わせてはいない。
今のままじゃロクでもない未来しか待っていない。なのでここからこっそり出て行こうと思っています。
警備があるけど大丈夫なのか?あの警備前公爵に雇われた人らしく、自分の欲のためにしか動かない今の公爵に対しては面従腹背のようで、あまりやる気がないから問題はない。だから何回か使用人がいないうちに離れを抜け出して脱走の準備を進めていて、明日決行できるところまで事を進めている。
お母様が使っていた部屋へ向かう。お母様の部屋にはもう一つ部屋がありそこには鍵が掛かっている。ここの鍵はお母様から貰った私しか持っていない。鍵を貰う時、お母様に
「もし、この先の未来を望まないのならこの鍵を使いなさい。」
と言われている。私がこの家から出て行こうとする事が分かっていたかの様だった。お母様は未来予知出来ないはずなんだけどなぁ。
鍵を使って部屋に入るとそこにあったのはリュックとポーチが置いてある。この二つはお母様が作った魔法鞄で中に収納と拡張領域の魔法陣がある。お母様は魔道具の作成も得意としていて、ポーチの中は一般的なクローゼットと同じくらいの収納量を持ち、リュックについてはお母様曰く侯爵家の屋敷を入れてもまだ余裕があるとか。リュックにはお母様が狩った魔物の素材や、夜営用の道具、ポーション作成のための道具、私がお母様から学んで作った魔道具が入れてあるり、ポーチには私がこっそり出かけた店で買ったポーションや、薬草、お母様が残してくれたお金が入れてある。部屋には他にも抜け出してからの生活に必要となりうるものを買い集めてある。準備は万端。明日離れの中にに私しかいない時警備が交代する時間がある。その時に警備から見えない窓からこっそりと出て行こうと思っている。
そろそろ使用人が来る時間、今日を乗り切って、こんな生活からおさらばしよう、そう思いながら私はこの部屋を出た。
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