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愛とオルゴール
05. 弟と母への気持ち
私とネイサンの生い立ちが貴族の子女として特別複雑だということはないかもしれない。
政略結婚も父の身勝手も母からの無関心も、よくある話といえばよくある話だ。
それでも、私たちは恵まれていると言うべきだろう。祖父母と母の実家の後ろ盾があり、親の愛情を受け取れないことを除けば何不自由なく育てられたのだから。
だけど、私自身が婚姻を結ぶような年になったからこそ考えずにいられない。
父に婚姻できない恋人がいることを承知で政略結婚させられた母はいったい何を思っていたのだろうか、と。
母はとても美しく、財力のある伯爵家の娘で、前ニュートン伯爵である母方の祖父は、娘にそのような婚姻をさせるような人にはてとても思えない。
それなのに、母は父に嫁いでいる。
思い返せば、リカルドの件で父は両家に対して面目を失い、皆から相当責められた筈だ。
しかし、夫に蔑ろにされた当人であるはずの母はその事について怒っている様子も嘆き悲しんでいる様子もなかったように思う。
感情を見せないようにしていた?
もしかすると、母のほうはそれでも父を愛していたとか?
あり得ない、と私には思える。
幼子であった私の見た父と母はいがみ合っているわけでも無視しあうわけでもなく、会えば淡々と礼儀正しく接するだけの、全く熱の感じられない関係だった。
婚姻前に全てを諦めてしまっていたという可能性はある。でも、どこかしっくりこない。
母が私たち姉弟の前に姿を見せることはほとんど無く、ごく稀に会うことがあっても、何処かに感情を置いてきたかのように淡々とした態度しか見せなかった。
私たちには最初から親はいないも同然だった。
だから私とネイサンにはお互いしかいなかった。
二人きりの姉弟としてお互いを大切にすることでその喪失感を無理やり補っていただけかもしれないが、それでも私たちはそうやって生きるしかなかった。
私は姉として出来る限りネイサンの面倒を見たつもりだし、ネイサンは幼い頃の可愛らしかった時期を過ごした後は、成長するにしたがって逆に私を守ろうとしてくれる優しくて可愛い弟だ。
私たちは親には恵まれなかったが、ネイサンがいてくれたから私は今こうしていられる。
あの子がいなかったら、私はきっと人を愛するということに戸惑いを持たずにはいられなかっただろう。
そして、人から愛されるということを信じられず拒んで生きることになったかもしれない。
元々、私は必要のない子供だった。
母は跡継ぎとなる男児を産むことを求められていたのだから。
だけど、私はここにいて、愛する弟が理不尽な仕打ちを受けて悲しんでいるなら慰めて、彼のために、彼と共に戦わなくてはならない。
母に代わって。
決して母が果たした役割が否定されることがないように。
政略結婚も父の身勝手も母からの無関心も、よくある話といえばよくある話だ。
それでも、私たちは恵まれていると言うべきだろう。祖父母と母の実家の後ろ盾があり、親の愛情を受け取れないことを除けば何不自由なく育てられたのだから。
だけど、私自身が婚姻を結ぶような年になったからこそ考えずにいられない。
父に婚姻できない恋人がいることを承知で政略結婚させられた母はいったい何を思っていたのだろうか、と。
母はとても美しく、財力のある伯爵家の娘で、前ニュートン伯爵である母方の祖父は、娘にそのような婚姻をさせるような人にはてとても思えない。
それなのに、母は父に嫁いでいる。
思い返せば、リカルドの件で父は両家に対して面目を失い、皆から相当責められた筈だ。
しかし、夫に蔑ろにされた当人であるはずの母はその事について怒っている様子も嘆き悲しんでいる様子もなかったように思う。
感情を見せないようにしていた?
もしかすると、母のほうはそれでも父を愛していたとか?
あり得ない、と私には思える。
幼子であった私の見た父と母はいがみ合っているわけでも無視しあうわけでもなく、会えば淡々と礼儀正しく接するだけの、全く熱の感じられない関係だった。
婚姻前に全てを諦めてしまっていたという可能性はある。でも、どこかしっくりこない。
母が私たち姉弟の前に姿を見せることはほとんど無く、ごく稀に会うことがあっても、何処かに感情を置いてきたかのように淡々とした態度しか見せなかった。
私たちには最初から親はいないも同然だった。
だから私とネイサンにはお互いしかいなかった。
二人きりの姉弟としてお互いを大切にすることでその喪失感を無理やり補っていただけかもしれないが、それでも私たちはそうやって生きるしかなかった。
私は姉として出来る限りネイサンの面倒を見たつもりだし、ネイサンは幼い頃の可愛らしかった時期を過ごした後は、成長するにしたがって逆に私を守ろうとしてくれる優しくて可愛い弟だ。
私たちは親には恵まれなかったが、ネイサンがいてくれたから私は今こうしていられる。
あの子がいなかったら、私はきっと人を愛するということに戸惑いを持たずにはいられなかっただろう。
そして、人から愛されるということを信じられず拒んで生きることになったかもしれない。
元々、私は必要のない子供だった。
母は跡継ぎとなる男児を産むことを求められていたのだから。
だけど、私はここにいて、愛する弟が理不尽な仕打ちを受けて悲しんでいるなら慰めて、彼のために、彼と共に戦わなくてはならない。
母に代わって。
決して母が果たした役割が否定されることがないように。
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