15 / 36
愛とオルゴール
12. 報告
私は二人の訪問者のことを帰宅した弟に話して聞かせた。
「うわっそれ本当の話? 怖いね。僕、そんな令嬢と結婚することにならなくて良かった。
全然仲良くなれそうにもないだけでなく、他の男のためにそこまで思い詰めてる人となんて仮面夫婦まっしぐらだったよね。
あと、第二王子殿下は……。
しかし、その人、アンソニー様が自分のことをちゃんと知ったら好きになってもらえるのにって言ってるわけだよね? ただの横恋慕してるだけの人なのに、姉さんのこと舐めてるよね」
ネイサンは憮然としてそう纏めた。
「そういうことよね? 知り合う時間が欲しいというのが最初、どういう意味なのか本当のところよくわからなかったのだけれど、後から考えていたら時間さえあればアンソニーの気が変わると言ってたのだと思いついたのよ。酷いわよね? 舐めている? わよね」
私はここぞとばかりに悪い口をきいてやった。だんだんと本当に腹が立つていたからだ。
「どこからそんな自信が持てるのかわからないけれど、そもそもアンソニー様はその令嬢の事どれくらい知ってるのかな? 姉さん知ってる?」
私は首を横に振った。
「わからないわ。貴方との話が出てた時に、それとなくフォンテーヌ伯爵のことを聞いたことがあったのだけれど、その時に何度か顔を合わせたり話をしたことがあるようなことを言っていたと思うのだけど」
確か、第二王子とよく一緒にいるとは言っていた。
「ふーん、とにかくちょっと怖い人みたいだからすぐにアンソニー様に知らせたほうがいいよ。
アンソニー様の身が女性である場合ほど危険なわけじゃないだろうけど、勢い余って既成事実とかつくられたら姉さんの婚約話が本当に危うくなる事だってあるし」
「既成事実!? ネイサン、貴方なんてこと言うの」
「だって、そういうことする人だって中にはいるだろう? それに王子殿下まで味方なんだよ。ありえない事じゃないって思うな」
「まさか、そんなこと」
私は途方にくれたような気持ちになった。
もちろんアンソニーに知らせるつもりでいたけれど、言い方というか、それがなんだか難しいような気にもなって、とりあえず保留にしていたのだが、既成事実などと言われると怖くなる。
「とにかく、アンソニー様にはすぐに知らせなくちゃ。そうすればブロア家のほうで対応してくれるよ」
「そうね、そうするわ」
「大丈夫? 姉さん」
「ええ、大丈夫よ。少し驚いたけれど、大丈夫」
ネイサンは私の顔をのぞき込んだ。
「心配ないよ。あったことを漏らさず伝えればいいだけだもの。
それにアンソニー様は姉さんに首ったけだから元からそんな怖い人のこと相手にしてないさ。
現にその人も言ってたんだろう? アンソニー様に話をすることも拒まれているって。
だからってうちに乗り込んできて姉さんに文句を言ってくるような人を相手にしてるんだ、早急に手を打ってもらわなくちゃ。
いくら第二王子殿下だってブロア家相手にそうそう好き勝手できないだろうしさ。
あとは、そうだな、万一、何らかのことが起きて婚約が上手くいかないようなことがあったとしても、姉さんのことは僕が一生守ってあげるからね。心配しないで」
私は弟のその言葉に弟を軽く睨んでから笑った。
「まあ、不吉なこと言わないで。でもその気持ちは嬉しいわ」
「姉さんならアンソニー様との事が駄目になっても大勢求婚者が殺到するだろうから僕の出番はないかもしれないけどね。
ちなみに僕の友人の兄とか従兄弟とかそんな人達に今までだってなんだかんだ言われていたんだよ。断るのに苦労したもんさ」
「私とアンソニーは駄目になったりしません。だから他の男性なんて必要ないわ。もう、心配してくれているんだかなんだかわからないわよ」
「ははっ今の話、アンソニー様には内緒にしておいてよ。あの人、こういう事を根に持ちそうだからさ」
私を気遣ってくれる弟の優しさによって、せっかくの幸せな気分を台無しにされたような気分も少しは上向きになったみたいだった。
アンソニーには簡単に経緯を説明し、なるべく早く会いたいのだけれどと書いて送った。
彼に余計な心配させたくないから深刻にならないよう事務的に。
でも書き上がったものをみると、それほど客観的に書けてはいないみたいだった。
それでも、ぐずぐずしないほうがいいと言われてそのまま送った。
アンソニーからはその日の夜には返事がきて、明日の朝、屋敷にきてくれると書いてあった。
「うわっそれ本当の話? 怖いね。僕、そんな令嬢と結婚することにならなくて良かった。
全然仲良くなれそうにもないだけでなく、他の男のためにそこまで思い詰めてる人となんて仮面夫婦まっしぐらだったよね。
あと、第二王子殿下は……。
しかし、その人、アンソニー様が自分のことをちゃんと知ったら好きになってもらえるのにって言ってるわけだよね? ただの横恋慕してるだけの人なのに、姉さんのこと舐めてるよね」
ネイサンは憮然としてそう纏めた。
「そういうことよね? 知り合う時間が欲しいというのが最初、どういう意味なのか本当のところよくわからなかったのだけれど、後から考えていたら時間さえあればアンソニーの気が変わると言ってたのだと思いついたのよ。酷いわよね? 舐めている? わよね」
私はここぞとばかりに悪い口をきいてやった。だんだんと本当に腹が立つていたからだ。
「どこからそんな自信が持てるのかわからないけれど、そもそもアンソニー様はその令嬢の事どれくらい知ってるのかな? 姉さん知ってる?」
私は首を横に振った。
「わからないわ。貴方との話が出てた時に、それとなくフォンテーヌ伯爵のことを聞いたことがあったのだけれど、その時に何度か顔を合わせたり話をしたことがあるようなことを言っていたと思うのだけど」
確か、第二王子とよく一緒にいるとは言っていた。
「ふーん、とにかくちょっと怖い人みたいだからすぐにアンソニー様に知らせたほうがいいよ。
アンソニー様の身が女性である場合ほど危険なわけじゃないだろうけど、勢い余って既成事実とかつくられたら姉さんの婚約話が本当に危うくなる事だってあるし」
「既成事実!? ネイサン、貴方なんてこと言うの」
「だって、そういうことする人だって中にはいるだろう? それに王子殿下まで味方なんだよ。ありえない事じゃないって思うな」
「まさか、そんなこと」
私は途方にくれたような気持ちになった。
もちろんアンソニーに知らせるつもりでいたけれど、言い方というか、それがなんだか難しいような気にもなって、とりあえず保留にしていたのだが、既成事実などと言われると怖くなる。
「とにかく、アンソニー様にはすぐに知らせなくちゃ。そうすればブロア家のほうで対応してくれるよ」
「そうね、そうするわ」
「大丈夫? 姉さん」
「ええ、大丈夫よ。少し驚いたけれど、大丈夫」
ネイサンは私の顔をのぞき込んだ。
「心配ないよ。あったことを漏らさず伝えればいいだけだもの。
それにアンソニー様は姉さんに首ったけだから元からそんな怖い人のこと相手にしてないさ。
現にその人も言ってたんだろう? アンソニー様に話をすることも拒まれているって。
だからってうちに乗り込んできて姉さんに文句を言ってくるような人を相手にしてるんだ、早急に手を打ってもらわなくちゃ。
いくら第二王子殿下だってブロア家相手にそうそう好き勝手できないだろうしさ。
あとは、そうだな、万一、何らかのことが起きて婚約が上手くいかないようなことがあったとしても、姉さんのことは僕が一生守ってあげるからね。心配しないで」
私は弟のその言葉に弟を軽く睨んでから笑った。
「まあ、不吉なこと言わないで。でもその気持ちは嬉しいわ」
「姉さんならアンソニー様との事が駄目になっても大勢求婚者が殺到するだろうから僕の出番はないかもしれないけどね。
ちなみに僕の友人の兄とか従兄弟とかそんな人達に今までだってなんだかんだ言われていたんだよ。断るのに苦労したもんさ」
「私とアンソニーは駄目になったりしません。だから他の男性なんて必要ないわ。もう、心配してくれているんだかなんだかわからないわよ」
「ははっ今の話、アンソニー様には内緒にしておいてよ。あの人、こういう事を根に持ちそうだからさ」
私を気遣ってくれる弟の優しさによって、せっかくの幸せな気分を台無しにされたような気分も少しは上向きになったみたいだった。
アンソニーには簡単に経緯を説明し、なるべく早く会いたいのだけれどと書いて送った。
彼に余計な心配させたくないから深刻にならないよう事務的に。
でも書き上がったものをみると、それほど客観的に書けてはいないみたいだった。
それでも、ぐずぐずしないほうがいいと言われてそのまま送った。
アンソニーからはその日の夜には返事がきて、明日の朝、屋敷にきてくれると書いてあった。
あなたにおすすめの小説
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」