17 / 36
愛とオルゴール
(間話)アンソニー 1
僕の家は代々、男児しか生まれていない。
五代前にブロア公爵の名を頂いて臣下にくだった王弟の時代からのことだからそれほど昔からというわけではないが、とにかくこれまで男の子しか産まれておらず、皆、それぞれに優秀だった。
周囲には僕もブロアの人間らしくとても優秀だと言われているし、またそうあろうと常に努力をしている。
しかし、ふとした時に自分が父である公爵には及ばないということを見せつけられて悔しさを感じる事もあるのだが、父も昔、祖父に対して同じように感じていたはずだからと考えることでいっそう高みを目指すようにしていた。
ブロア家の男は他者から侮られることを何より嫌い、常に努力して揺るぎない地位を確立してきたと言われて育つわけだから、私にもブロアの男として恥じない人間になりたいと思う気持ちが少なからずあるからだ。
ただ、我が家の男の特徴として、そのような向上心が何かに執着しすぎるという悪い側面としてあらわれる場合があると外から来た人間である母や祖母などには認識されているようで、私や弟は彼女たちからその点を注意深く育てられたらしい。
そのためかどうかはわからないが、幼い頃から剣術に夢中になっている弟はその傾向を危ぶまれているところもあるようだが私はそういった面があまり顕著でないということを彼女達の中で密かに喜ばれているようだった。
元々、五代前の王弟であった先祖は自身が王になれなかったことを最後まで悔しがっていたらしい。だからとにかく権力に固執した。
その子と次の当主は権力よりも金儲けに走り、それからまた権力欲の強い祖父を経て、金と権力を生まれながらに持っていた父は人を交渉事で負かすことが何より好きというというやっかいな傾向を持っている。
これが災いして、私の婚約についての話し合いは通常よりもはるかに長い時間をかけて行われていた。
婚約そのものには何も問題などないのに、条件についての話し合いをする父と彼女の父親、というより彼女の母親の実家であるニュートン伯爵家の当主との間に、父の交渉好きの血を騒がせるものがあったためだ。
嬉々としてやり手で有名なニュートン伯爵との交渉をする父に半ば呆れてはいたが、私は当初は父の気が済むようにすればいいというような気持ちでいた。
なぜなら、正式な婚約を結んでいなくても私と恋人のジェシカは必ず結婚することに決まっているからだ。
口では彼女に正式な婚約者になって早く彼女を皆に紹介したい、そうならないと不安だというようなことを言ってはいるが、私は彼女を手放すことなど考えていないし、そもそもこの縁談に不安要素などなかった。
家柄からも、私達二人の互いに向ける愛情からも破談などありえない。いや、そんなとあるはずがないのだから、恋人である期間が少しくらい延びても、その間にジェシカと楽しく過ごせれば何の問題もなかった。
私は愛するジェシカを手に入れる。それは覆ることのない未来の話だ。
だから、その未来が脅かされる危険があるとなれば、悠長に父の酔狂に付き合ってはいられない。
もちろん、ジェシカに対する私の思いは純粋な愛情であることは間違いないのだが、同時に、私の血がジェシカへの愛というものに対して狂おしい執着をみせているのを否定もできない。
母達には悪いが、私は立派にブロアの男だったことを私自身、ジェシカに恋したことにより悟ることになった。
五代前にブロア公爵の名を頂いて臣下にくだった王弟の時代からのことだからそれほど昔からというわけではないが、とにかくこれまで男の子しか産まれておらず、皆、それぞれに優秀だった。
周囲には僕もブロアの人間らしくとても優秀だと言われているし、またそうあろうと常に努力をしている。
しかし、ふとした時に自分が父である公爵には及ばないということを見せつけられて悔しさを感じる事もあるのだが、父も昔、祖父に対して同じように感じていたはずだからと考えることでいっそう高みを目指すようにしていた。
ブロア家の男は他者から侮られることを何より嫌い、常に努力して揺るぎない地位を確立してきたと言われて育つわけだから、私にもブロアの男として恥じない人間になりたいと思う気持ちが少なからずあるからだ。
ただ、我が家の男の特徴として、そのような向上心が何かに執着しすぎるという悪い側面としてあらわれる場合があると外から来た人間である母や祖母などには認識されているようで、私や弟は彼女たちからその点を注意深く育てられたらしい。
そのためかどうかはわからないが、幼い頃から剣術に夢中になっている弟はその傾向を危ぶまれているところもあるようだが私はそういった面があまり顕著でないということを彼女達の中で密かに喜ばれているようだった。
元々、五代前の王弟であった先祖は自身が王になれなかったことを最後まで悔しがっていたらしい。だからとにかく権力に固執した。
その子と次の当主は権力よりも金儲けに走り、それからまた権力欲の強い祖父を経て、金と権力を生まれながらに持っていた父は人を交渉事で負かすことが何より好きというというやっかいな傾向を持っている。
これが災いして、私の婚約についての話し合いは通常よりもはるかに長い時間をかけて行われていた。
婚約そのものには何も問題などないのに、条件についての話し合いをする父と彼女の父親、というより彼女の母親の実家であるニュートン伯爵家の当主との間に、父の交渉好きの血を騒がせるものがあったためだ。
嬉々としてやり手で有名なニュートン伯爵との交渉をする父に半ば呆れてはいたが、私は当初は父の気が済むようにすればいいというような気持ちでいた。
なぜなら、正式な婚約を結んでいなくても私と恋人のジェシカは必ず結婚することに決まっているからだ。
口では彼女に正式な婚約者になって早く彼女を皆に紹介したい、そうならないと不安だというようなことを言ってはいるが、私は彼女を手放すことなど考えていないし、そもそもこの縁談に不安要素などなかった。
家柄からも、私達二人の互いに向ける愛情からも破談などありえない。いや、そんなとあるはずがないのだから、恋人である期間が少しくらい延びても、その間にジェシカと楽しく過ごせれば何の問題もなかった。
私は愛するジェシカを手に入れる。それは覆ることのない未来の話だ。
だから、その未来が脅かされる危険があるとなれば、悠長に父の酔狂に付き合ってはいられない。
もちろん、ジェシカに対する私の思いは純粋な愛情であることは間違いないのだが、同時に、私の血がジェシカへの愛というものに対して狂おしい執着をみせているのを否定もできない。
母達には悪いが、私は立派にブロアの男だったことを私自身、ジェシカに恋したことにより悟ることになった。
あなたにおすすめの小説
上手に騙してくださらなかった伯爵様へ
しきど
恋愛
アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。
文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。
彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。
貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。
メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」