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純真な恋人
03. 世継ぎの王子の誕生
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エドワード王子との結婚と同時に王太子妃となった彼の婚約者はすぐに一人目の王子を産んだ。
その出産を待ち、アニエスはヴェルトナー伯爵家へと嫁いだのだが、それまでの約1年間アニエスは意外にも充実した日々をおくった。
もちろん、愛するエドワードがアニエスではない人と過ごさなくてはならず、その上子供を作ることは辛く悲しいことだった。
思うように会えない日々に疲弊したこともある。
だけど、そのことでアニエスが落ち込みすぎないように、王子の秘密の恋人時代からの知り合いであるエドワードの側近達は皆アニエスに優しくしてくれたし、彼らを通してエドワードからの手紙や贈り物が常に届けられたから耐えられた。
また、いつも突然で慌ただしいものではあったが、二人には短い逢瀬の時間も与えられた。
王太子となったエドワードからはアニエスが公妾として堂々と王子の側にいられるのはもう一人子供が生まれてからだと言われていた。
それまでは、クロードの伯爵家で王族の側にいても恥ずかしくない振舞いができるようにマナーを身に着け、教養を磨いていればいいが、それほど難しいことを望まれているわけではないのだから気楽に過ごすようにと。
アニエスは高貴な人々から注目されることに慣れてはいないし、マナーや教養も下級貴族の娘、そして同じような家格の男性の夫人として過ごす程度のものであったから学ぶことは多かった。
しかし、そもそもアニエスは何れは王となる予定の王太子の正式な妻になるわけではないのだから、高位貴族達と対等に話をしたり、外国の賓客をもてなすことはない。
せいぜい一緒に過ごす夜会などであからさまな嘲笑を受けない程度のことができればいいと言われていたし、それくらいしかアニエスにはできる気がしなかった。
元よりエドワードとの出会いが夢のような出来事であったのだ。
アニエスのエドワードへの愛は本物だ。だが、彼の立場やそれにあわせることを求められる自身の立場にはしり込みする気持ちがないわけではなかった。
また、他にも気になることができた。
アニエスにいつも優しく接してくれる夫クロードに対する罪悪感だ。アニエスは伯爵家で生活するにつれ、名ばかりの夫や伯爵家のことについて悩ましく思うようになっていた。
アニエスを受け入れたことにより、クロードが被ることになった様々なことを考えると申し訳ない気持で一杯になる。
伯爵家で良くしてもらえばしてもらうほどその罪悪感は募った。
クロードにも身分違いの恋人がいることはエドワードから聞いていた。
だから気にすることはないのだと。
誰かの地位を奪ってここにいるわけではないし、伯爵家からアニエスに与えられるものに遠慮はいらないと。
それを聞いて少しは安心できた。
クロードも本来結ばれるべき人を正式な妻にできない人だということに、親近感を感じたし。
それで私たちは同じ苦悩を抱える仲間だからもっと仲良くなれるのではと期待する気持が生まれた。
ただ、アニエスの友好的な気持ちはクロードに遠慮されてしまった。エドワードに対する忠誠心から、二人の関係はこれまで通り他人同様のものにしておくべきだと。
また、クロードからは当然ながらアニエスの純潔は王子に捧げるべきものであるため自分との関係は白いままで問題ないと言われた。
もちろん、最初からそういう話であったからこの結婚を受け入れたのだし、いくらクロードが良い人でも、エドワード以外の人となんてアニエスにとっては考えたくもないことだった。
政略結婚では愛情とは関係なく、相手の子供を産まなくてはならないのだと頭では理解していても気持ちに嘘はつけない。
もしかすると、公爵令嬢であった王太子妃のような人にはそんなことは何でも無いことかもしれない。あの人の産む子はエドワードの次に王になるのだから、むしろ、誉れとなるのかもしれないし。
でも、アニエスには無理だ。
それに、王太子妃はいくら未来の王のためだからといってエドワードに愛されてもいないのに彼の子を産まなくてはならないなんて憐れだと考えてしまう。
彼女のような人には簡単に割り切れるものなのかもしれないが、それとも実は彼女はエドワードに対して愛情を感じていて、そのことで自分に折り合いをつけているのだろうか。
エドワードはそんなことはないと言うが、アニエスは王太子妃がエドワードに愛情を感じている可能性を否定できなかった。
エドワードは素敵な人だ。そんな人の妻という立場で彼を愛しく思わずにいられるものだろうか?
そこまで考えて、アニエスは全てを手にしているような美しく教養ある王太子妃を再び憐れに思った。
王太子妃は王太子の正式な妻という立場にいるが夫に愛されずにいることから決して幸せではないだろう、そう思うと彼女も運命に呪われた被害者に感じられて心が痛む。
正式な妻にはなれないが王太子に愛されている自分と、妻の座にいながら愛されない王太子妃、果たしてどちらがより不幸であるのかはわからない。
政略結婚や身分に縛られて生きるというのは皆にとって不幸だと改めて思う。
アニエスなどが考えても詮の無いことだと思いつつもアニエスは自分たちのおかれた状況と、アニエスに良くしてくれる伯爵家やクロードのこと、愛されない妻である王太子妃のことを思いそっと吐息をつくのだった。
その出産を待ち、アニエスはヴェルトナー伯爵家へと嫁いだのだが、それまでの約1年間アニエスは意外にも充実した日々をおくった。
もちろん、愛するエドワードがアニエスではない人と過ごさなくてはならず、その上子供を作ることは辛く悲しいことだった。
思うように会えない日々に疲弊したこともある。
だけど、そのことでアニエスが落ち込みすぎないように、王子の秘密の恋人時代からの知り合いであるエドワードの側近達は皆アニエスに優しくしてくれたし、彼らを通してエドワードからの手紙や贈り物が常に届けられたから耐えられた。
また、いつも突然で慌ただしいものではあったが、二人には短い逢瀬の時間も与えられた。
王太子となったエドワードからはアニエスが公妾として堂々と王子の側にいられるのはもう一人子供が生まれてからだと言われていた。
それまでは、クロードの伯爵家で王族の側にいても恥ずかしくない振舞いができるようにマナーを身に着け、教養を磨いていればいいが、それほど難しいことを望まれているわけではないのだから気楽に過ごすようにと。
アニエスは高貴な人々から注目されることに慣れてはいないし、マナーや教養も下級貴族の娘、そして同じような家格の男性の夫人として過ごす程度のものであったから学ぶことは多かった。
しかし、そもそもアニエスは何れは王となる予定の王太子の正式な妻になるわけではないのだから、高位貴族達と対等に話をしたり、外国の賓客をもてなすことはない。
せいぜい一緒に過ごす夜会などであからさまな嘲笑を受けない程度のことができればいいと言われていたし、それくらいしかアニエスにはできる気がしなかった。
元よりエドワードとの出会いが夢のような出来事であったのだ。
アニエスのエドワードへの愛は本物だ。だが、彼の立場やそれにあわせることを求められる自身の立場にはしり込みする気持ちがないわけではなかった。
また、他にも気になることができた。
アニエスにいつも優しく接してくれる夫クロードに対する罪悪感だ。アニエスは伯爵家で生活するにつれ、名ばかりの夫や伯爵家のことについて悩ましく思うようになっていた。
アニエスを受け入れたことにより、クロードが被ることになった様々なことを考えると申し訳ない気持で一杯になる。
伯爵家で良くしてもらえばしてもらうほどその罪悪感は募った。
クロードにも身分違いの恋人がいることはエドワードから聞いていた。
だから気にすることはないのだと。
誰かの地位を奪ってここにいるわけではないし、伯爵家からアニエスに与えられるものに遠慮はいらないと。
それを聞いて少しは安心できた。
クロードも本来結ばれるべき人を正式な妻にできない人だということに、親近感を感じたし。
それで私たちは同じ苦悩を抱える仲間だからもっと仲良くなれるのではと期待する気持が生まれた。
ただ、アニエスの友好的な気持ちはクロードに遠慮されてしまった。エドワードに対する忠誠心から、二人の関係はこれまで通り他人同様のものにしておくべきだと。
また、クロードからは当然ながらアニエスの純潔は王子に捧げるべきものであるため自分との関係は白いままで問題ないと言われた。
もちろん、最初からそういう話であったからこの結婚を受け入れたのだし、いくらクロードが良い人でも、エドワード以外の人となんてアニエスにとっては考えたくもないことだった。
政略結婚では愛情とは関係なく、相手の子供を産まなくてはならないのだと頭では理解していても気持ちに嘘はつけない。
もしかすると、公爵令嬢であった王太子妃のような人にはそんなことは何でも無いことかもしれない。あの人の産む子はエドワードの次に王になるのだから、むしろ、誉れとなるのかもしれないし。
でも、アニエスには無理だ。
それに、王太子妃はいくら未来の王のためだからといってエドワードに愛されてもいないのに彼の子を産まなくてはならないなんて憐れだと考えてしまう。
彼女のような人には簡単に割り切れるものなのかもしれないが、それとも実は彼女はエドワードに対して愛情を感じていて、そのことで自分に折り合いをつけているのだろうか。
エドワードはそんなことはないと言うが、アニエスは王太子妃がエドワードに愛情を感じている可能性を否定できなかった。
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そこまで考えて、アニエスは全てを手にしているような美しく教養ある王太子妃を再び憐れに思った。
王太子妃は王太子の正式な妻という立場にいるが夫に愛されずにいることから決して幸せではないだろう、そう思うと彼女も運命に呪われた被害者に感じられて心が痛む。
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政略結婚や身分に縛られて生きるというのは皆にとって不幸だと改めて思う。
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