上 下
3 / 19

2

しおりを挟む
 私がベロニカに転生したと知った1ヶ月後。ついに来た――スザーリン王子からのお茶会の招待状。私は婚約者候補として王城へ呼ばれた。

 推しに会えるなんて最高!
 どのドレスを着て行こうかな?
 髪型は無難にポニーテール?

 はじめは乙女ゲームでの推しの王子が見れると、付き添いのお母様とワクワクしながら王城に来たのだけど。のっけから……驚きとため息がもれた。

(そうか……そうくのるか。2人はいつも一緒だって攻略の本には書いてはあったけど。ここまで……ベッタリだとは思わなかったよぉ)

「お待たせしました」

 ゲームと違い少し高めの声と、庭園に現れたスザーリン殿下は……なんと、ミミリアと手を繋いで初顔合わせの場所に現れて、当たり前のように並んでテーブルへ座った。

 幼い、可愛見た目のスザーリン殿下は反対側に座る、私とお母様を見て和かに笑い。

「初めまして、スザーリン・シュラーリンゲルです」

「あ、はじめましてミミリア・デロンドです」

(自己紹介は必要だけど、なぜ、あなたまでするの?)
 
 婚約者候補の初顔合わせの日なのに……わけがわからずいる私に、隣に座るお母様が挨拶しなさいと催促した。

「初めまして、ロドリゲス公爵の娘ベロニカです」

 私の挨拶は虚しく、仲良く話している2人には届かないようだ。

「………」

(――――――はぁぁぁぁあぁ!)

 初顔合わせで、イチャイチャな場面を見せつけられて……もう思うしかないじゃない。悪役令嬢はただ仲の良い2人の周りでキャンキャン吠える……咬ませ犬しかなれない。

 所詮、乙女ゲームはそういうものだ。といえばわからないでもないけど……なんなの、このゲームは? 悪役令嬢いる?

 ヒロインが幸せになるゲームだから、この2人の態度を許せと?
 さすがに城まで呼び出しといて、人として失礼だと思う。  

 ねぇ、あなた達は知ってる? 

 ここに来るまで、2時間以上もお尻が痛いのを我慢して、馬車に揺られできたんだよ。まだ婚約候補者の1人かも知らないけど、今日はそんな2人の初顔合わせの日。
 大切な日にこの有り様は何? こんなの怒らない令嬢、いいえ、人が何処にいるというの?

 一応、乙女ゲームを知っているから、落ち着いてこの状態を見ているけど。コレだけは言い切れる、怒らない人は絶対にいない!
 
 2人とも早く気付いて、あなた達のその態度に、周りのメイドと騎士はドン引きよ!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ショート朗読シリーズ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

色々な人のくすぐり体験談(小説化)

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:4

死が見える…

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:4,134

チート鋼鉄令嬢は今日も手ガタく生き抜くつもりです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:133

恋が芽生えて

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:17

幸介による短編恋愛小説集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

目の前の超美少女令嬢がボクの婚約者だって?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:25

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,134pt お気に入り:29,349

処理中です...