寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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三十七

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 お兄様とランドル様はミリアの料理を食べたし、二時過ぎになった頃。カランコロンとドアベルの音が聞こえて出入り口の扉が開く。
 訓練が終わりミリア亭に来たみんなははいつもの通り、半獣からポフンポフンと獣人、リザードマンの姿に戻り、竜人をの姿のままのリカとカヤも続いて入ってきた。

「こんにちは、ミリア、リーヤ。はー、腹減った」
「ミリア、リーヤ、こんにちは。今日もお二人は綺麗ですね」

「お腹すいたね」
「うん、お腹ペコペコ」

「よっ、ミリア、リーヤ」

「いらっしゃい、訓練お疲れさん」
「こんにちは、いらっしゃい」

 みんなは出入り口近くに武器を置き、いつもの好きな席に座った。

「ミリア、今日の昼はなんだ?」

「今日はチキンのトマト煮込みとパンにサラダと、後はリーヤの手作りパンケーキだね」

 ミリアは料理を準備しながら、隣でお手伝いを始めた、わたしを見た。

「わたしのパンケーキ?」

 その話をミリアに聞いていなくて、驚くわたしに、

「シッシシ。前みたく、パンケーキ焦がすなよ、リーヤ」

「ナサ!!」

 初めて作った"真っ黒なパンケーキ"のことを言うんだろう。
 アレは酷かったとアサトが笑い、ロカ、カヤとリヤも笑う、和気あいあい話すわたしたち。その姿を奥の席で食べる手を止めて、眺めるお兄様とランドル様。

「……やっぱ、デカいな」

 その声にアサトが反応して奥のテーブルを見た。いままでアサト達がお兄様達に気付かなかったのは、お兄様とランドル様は殺気と、己の存在を消していたのかな。

 いきなり存在を示して、発せられた声に、みんなはお兄様達を見た。ナサとロカ、リカとカヤは息をひそめ、アサトが前にでた。

「ん? 見ない顔だな、お前らは誰だ?」 

「なんだ、俺たちの事を知りたいのか?」

 その物言いに殺気をだして、ジロリとお兄様を睨むアサトと。二人は動じなくニッコリ笑って、テーブルを立ち上がった。わたしはこのままだと、ここで何か始まってしまうと感じて、厨房からアサトの前に行き頭を下げた。

「すみません、アサトさん。ナサはさっき北門で会ったよね。この二人はわたしのお兄様カートラと同僚のランドル様です」  

「リーヤの兄貴と同僚?」

 驚くアサトに、

「クックク。さっき北門で会ったナサもデカいと思ったが、アンタもいい体付きしているな……」

 "戦ったら面白そうだ"と続く言葉は言わず。お兄様はジロジロとアサトの体を見た……。

(お、お兄様のその言い方は違う誤解をうみます。ほら、アサトが苦笑いをしているわ)

 ナサだって、シッシシと笑っているけど、顔が引きつってる。

「お兄様、カートラお兄様。アサトさんとナサにそんな言い方しないで、ごめんねナサ、すみませんアサトさん」

 アサトとナサは笑って『いいよ』と、言ってくれたけど。……わたしの気がおさまらなかった。

「もう、カートラお兄様とランドル様は黙って食事をなさって、そんなに彼らをジロジロ見ては失礼ですわ。あんまり失礼だと帰ってもらいます」

「リイーヤ……わかったよ」
「ごめんね、リイーヤちゃん」

 座って、料理を食べようとしたお兄様は、何か思い出した様な顔をした。

「あ、そういや、リイーヤに伝えることがあったんだ」
「なんですか?」

「この国――ガレーン国の皇太子、ラルジュ・ガレーンが結婚の相手を探しているらしくてな」

(ガレーン国のラルジュ・ガレーン皇太子が結婚相手を探している)

 まさか…

「うちの国でも未婚で、公爵以上の令嬢に話がしている。リイーヤ、お前にもその話がきていたぞ」

 ……やっぱり

「お父様はその話を……どうなさるつもりですか?」

「断っといたから」

「え、?」

「断ったよ」

(そんな、簡単にお断りできるものなの?)

「早朝にお断りすると、リルガルド国の国王陛下と父上の手紙を、ラルジュ皇太子の側近に渡したから大丈夫だろう」

「そっか、よかった」

 国王陛下の手紙もあるなら"失礼なく、この話をお断りができるわ"と、わたしは胸を撫で下ろした。
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