寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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四十七

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 北門に現れた強制召喚された、コカトリス討伐から一ヶ月後。

 リモーネ君は国王祭の準備で忙しいらしいく、ワカさん親子よりも後に昼食を食べに来ていた。今日も閉店過ぎに店にやってきて、気まぐれ"シャケのムニエル"をカウンター席で黙々食べている。

 食べ終えたリモーネ君は優雅に、フォークとナイフをお皿に置き厨房で働くわたしに、

「リイーヤに頼みがあるのだが……」

 と、言いにくそうに言った。

「頼み事?」

「ああ、国王祭まで騎士団の仕事が忙しい。ミリア亭に来られないから、その、気まぐれのお持ち帰りを作ってくれないか」

「気まぐれのお持ち帰り? それって、お弁当のこと?」

「そうだ、それで五人前でお弁当をお願いしたい。隊員が北区のミリア亭で昼食を食べていると知ってから、しつこく聞くんだ……とくにカムイだが」

 リモーネ君の話では三番隊のカムイ君を初め、他の隊員もワーウルフと戦ったわたしが、ミリア亭で働いている事も知っている。

(ワーウルフ討伐は騎士団の手柄となっているけど……当時、内輪では噂になっていたみたい、騎士団の仲間と共闘をしたのもあって、表には出ない話だけど)

「隊員がな、その子、綺麗な子なんだろとか、一度見たいと、お礼をまだしていないとか、俺達も『ミリア亭に行きたい』とか言いだしたんだ」

 リモーネ君は遠い目をして、ため息をついた。

「お礼をしたいと言っているのは、カムイ様だよね……前に中央区で会って以来だから……」

 そのときに食事に誘われだけど、着て行く服もなく、貴族とは余り関わりたくなくて……お断りの手紙をリモーネ君に頼んだ。

「僕が隊長を務める三番隊は、中央区の見回りなどを行う部隊で、本当なら中央区から成る可く離れてはならないんだ……僕は休憩時間に来ている」

「え、」

「でな、隊員に黙っている代わりにお弁当が食べたいとなった。三番隊の詰め所に最初の一度だけ、お弁当を五個届けてくれ、次からは僕が取りに来る」

「ええ、!! お弁当を作るのも難易度が高いのに、三番隊の詰め所に届ける……の?」

「頼む、リイーヤ」

 リモーネ君は立ち上がって、深くわたしに頭を下げた。

(ここまでされると、断ることができない)

「それじゃ隊長さん。そのお弁当五個は、何時までに詰め所に届ければいいんだい?」

 困って何も言えずにいたわたしに、厨房でローストビーフの仕込みをするミリアが聞いた。

「ミリアさん?」

「リーヤ、一度弁当を持っていけば、後は店に取りに来るんだろ? いま、この話を受けておかないと、ゾロゾロと騎士が店に来るよ」

 ミリアさんの言う通りかも。

(……リモーネ君は知り合いだからいいけど、騎士が嫌いなナサ達とかち合ったら、ユックリ休めなくなっちゃう)

 それは避けたい。

「わ、わかった、お弁当は引き受けるけど、ミリア亭のお休みの日はなしでね。それで何時ごろ詰め所に届ければいい?」

「ほんとうか? 引き受けてくれるのか、ありがとう。そうだな、お弁当を届ける時間か……ミリア亭が閉まってからお願いしたいが?」

 わかったと、お弁当の値段は七百ニルにして、リモーネ君に詰め所の地図を描いてもらった
 



 

 鎧を直し、剣を腰にさした帰り間際。

「リイーヤ、お弁当を引き受けてくれて、ありがとう」

「明日、詰め所にお弁当を待って行くね」

 "わかった"と頷いて、帰るのかと思ったのだけど、足を止めて振り向いた。

 どうしたのと見つめると、

「……あのな、リイーヤに一つ聞くが、皇太子の婚約者決めの、舞踏会に参加するのか?」

 リモーネ君は舞踏会の話を聞いてきた。
 なぜ知っているのと聞くと、舞踏会の警備の為、騎士団に参加する貴族名簿が配られて、リルガルド国欄に公爵令嬢リイーヤ・サンディーアの名前を見つけたとのこと。

 わたしは"ああっ"と頷き。

「一週間くらい前にカートラお兄様が用事で、ガレーン国に来ていてね。婚約者候補の話はお断りして、その後に色々あって……結局、舞踏会だけ出ることになったわ」

「そうか、舞踏会だけ出るのか。……あの、壊滅的なダンスは上手くなったのか?」

「壊滅的……な、ダンス?」
「学園の卒業式後の、舞踏会で僕と踊ったろ?」

 リモーネ君の言葉で当時を思いだす。

「ああ、リモーネ君、あの時はごめんね。わたしのダンスが下手で、ターンする度に、リモーネ君の足を踏みっぱなしだった」

「思い出したのか、ククッ…」

「あのあとね、反省してお兄様と弟君とで猛特訓して、少しはマシになったはずだけど……結婚して離縁するまでの、二年間は誰とも踊ったことがないわ」

 元旦那とも初め出会った、舞踏会で踊ったきりだし。

「無理なお願いをした。なんなら、僕がダンスの練習に付き合うか?」

 リモーネ君がダンスの練習に付き合う?
 また、あの日のように足を傷つけてしまう?

「え、いいよ。国王祭が終わるまでは、訓練とか、騎士団の仕事が忙しくなるのでしょう? 大丈夫、わたしは壁の花で、誰とも踊らないから無理しないで」

「そうか、その方がいいかもな。また、明日な」

 リモーネ君はわたしのダンスを思い出したのか、笑って帰っていった。
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