寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

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六十四

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 皇太子殿下達はがっつりローストビーフ丼を食べて『明日も来る』と言い王城に戻られた。

 ミリアさんはフゥッと息を吐き、

「リーヤも厄介ごとに巻き込まれたね、相手がいてもいいとか皇太子はどうなってんだい?」

「それが貴族というもんだ」

 アサトが言うと、ナサは頷き。

「そうだな。王族は一夫多妻はあたりまえ、国王になるものは世継ぎを産まなくちゃならねぇ。大変だとはわかっているが……いまは貴族から遠ざかるリーヤに言い寄るのはおかしな話だし、舞踏会に集まる婚約者候補に失礼だ」

「ナ、ナサは王族に詳しいね」

「まぁな、シッシシ」


 でも、アサトとナサの言う通り。王族、貴族は恋愛結婚ではなく政略結婚が多い。うちの両親も政略結婚で、そこから恋愛に発展したとお母様に聞いたことがある。

 皇太子殿下ならよい所の令嬢と婚約者、結婚できるはず。公爵令嬢だとしてもいまは北区に住む一般の平民のようなものだから、皇太子がよいと言っても。王族、上流貴族などの周り黙っていないだろう。

 皇太子の婚約者に選ばれたい令嬢達もだ、彼女達は幼い頃から勉学、作法、教養を習い身につけてきている。

(自分が選ばれるのはあたりまえだと、思っている令嬢だっているはずだわ)

 わたしはこの恋を大切にしたいの。
 ナサと恋愛をして、幸せな結婚をして子供だって欲しい。







 皇太子殿下の舞踏会、国王祭が近付くに連れて、北口の門にモンスターが現れる日が多くなった。はじめは小物ばかりだったモンスターは徐々に大型に変わった。

 みんなの怪我が多くなったし、日々の戦闘に疲れているようだ。それなのに騎士団は彼らに手を貸すどころか、休ませようとはしない。

「はぁー、疲れた」
「えぇ、疲れましたね」

「「ふわぁぁあ~」」

 ミリア亭に着いた早々テーブルにどっかり腰を下ろした、アサトとロカ、リヤとカヤは大欠伸をしていた。

「なんだ、昨日の夜もモンスターが現れたのかい?」
「あぁ、なんとかやったが手こずった」

「じゃ、今日もこれを飲んで元気を回復だ!」

 ミリアはエネルギー回復にと果物、野菜の栄養たっぷりジュースをみんなに出した。アサトは受け取り渋い顔をする。


「これ、効くけど匂いが苦手だ……」


 ナサも口数少なく、鼻を摘んで栄養満タンジュースを飲んでいた。

「私にはモンスターと戦うことはできないが。店を開けとくから朝方、騎士団と交代したら宿舎まで戻らず、ここで仮睡しな! 朝食もリーヤと作る。このままじゃ、みんな倒れちゃうよ」 

「はい、わたしも手伝います」

「おぉ、それはありがたい」
「なんとら嬉しいことです」
「シッシシ、助かる」

「「ありがとう」」

 ミリアとわたしは朝五時に店を開けて、みんなの朝食を準備した。北区の住人なら亜人隊の大変さはわかってると、店の前に張り紙をしてオープン時間を十二時にした。

 次の日、お昼下がりに店にやってきた皇太子一行もこの事を知っていた。彼らも騎士団が動き召喚する術者を探しているらしい。


 亜人達のみんなはモンスターと戦い。
 わたしたちは必死に働いていた。

 その日の深夜『ドゴォォオォーーン』と何かが門に突き当たる音で目覚めた。その後、異常なモンスターの鳴き声が聞こえた。

「これって、大型モンスター⁉︎」


(ナサに真夜中に何があっても、北口に来るなと言われているけど)

 辛抱できずわたしは急いで着替えて、木刀を手に門まで走った。他の亜人の人たちもみんな手に武器を持ち、北門向かっていく姿が見えた、その中に見知った人がいた。

「ミカさん!」
「リーヤ、来たの」

 雑貨屋のミカはパジャマ姿のまま手に杖を持って、門に向かおうとしていた。
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