(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ

文字の大きさ
20 / 75

20話

しおりを挟む
 ウサギちゃんと同じ縦長の耳だけど、体は筋肉質で、アオよりもかなり身長も高い。パン屋というより、素手で戦っていそうな戦士の雰囲気。

 でも、物腰はやさしく。

「ルル、ウチのパンをぜんぶ買っていただけるって、ほんとうかい?」

 ウサギちゃん――チロちゃんは可愛くうなずく。
 
「パパ、このお姉さんがぜんぶ、買ってくれるって」
 
「ええ、全部いただくわ。そこのカフェスペースで一つか二つ、パンを食べたいのだけどいいかしら?」

 カサンドラはお腹が空きすぎて、我慢できなかった。
 パンを選ぶためにトレーを持つと、シュシュとアオも着いて来る。二人もこの香ばしい、パンの香りに我慢できないみたい。

「ドラお嬢様、私もパン五個食べます」
「オレも食べる」

「どうぞ。チロは奥からパンを入れる袋と、包む紙を持ってきてくれるかい?」
 
「はい、パパ」

 チロちゃんは奥に行き、パパさんはパンを集めて、包む準備をはじめた。

「お客さま、コーヒー、紅茶もありますので自由に飲んでください。選んだパンは魔石トースターで温めて……って……お前、アオじゃないか? ギギ達のパーティーを追い出されたって聞いたぞ」

 カサンドラ達の後についてきたアオを見て、パパさんは声を上げる。

「スズさん、久しぶり。アイツらに使えない者はいらない、出ていけって、さんざん痛めつけられて追い出されたよ。いくあてもなくてさ、隣国デュオンに流れついて、ドラとシュシュに助けられた」

「……助けられた、そうか」

 苦労したな……と、パパさんに頭を撫でられ、アオは照れくさそうにした。

(よかった、アオには優しくしてくれる仲間がいる。さっきの酷い人達ばかりじゃないのね)

「シュシュ、選んだパンを温めて食べましょう」
 
「はい、お嬢様」

 カサンドラとシュシュは選んだパンを、魔石トースターに入れたはいいが、使い方がわからない。

「これ、どう使うのかしら?」
「私もはじめてなので……わかりません」

 取り敢えず押せそうなボタンを押して、回せそうな摘みを回したが魔石トースターは動かない。

(謎だわ)

「待て、ドラ、シュシュ、使い方はオレが知ってるから待ってて。スズさん、オレは大丈夫だから……心配してくれてありがとう。スズさんも奥さんの風邪を早く治さないとな」

「ありがとう、冒険ついでに薬草を探しているが……見つからないな」

「あの薬草は希少だから……見つけるのは難しい。オレも手伝うよ」

「いいのか? 薬草の知識のあるアオが探してくれるのは……大変助かる」

「見つけたら連絡するよ」

 話を終えたアオはカサンドラ達のところに来て、魔石トースターの使い方を教えてくれる。使い方は簡単、魔石カゴに入っている赤い色をした火の魔石をトングで掴み、トースタの魔石置きボタンを押すだけだった。

 火の魔石が温まり、パンを温めてくれる。
 多く入れると、パンがカリカリに焼けるとも教えて貰った。

 

「ドラ、シュシュ、パンが焼き上がったぞ」
 
「ありがとう、いい香り」
「ありがとうございます」

 魔石トースターで焼き上がったパンは、外はカリカリで、中はふんわりしていた。家だと一日食べる分しか焼かないから固くならないけど。この魔石トースターが家にあれば、いつでもカリカリふわふわが楽しめる。

(次に来たとき、魔石トースターを買うっきゃないわね)

「ドラお嬢様、サクサクで美味しいです」
 
 今、カサンドラの前で幸せそうな表情をして、パンを食べているシュシュ。最後の日も牢屋越しに、二人で水分が抜け、パサパサな固いパンを食べた事をカサンドラは思い出した。

 あの時のパンは……固いだけで、味もなく、美味しくなかった。当時のカサンドラ、シュシュの空腹は満たした……。

「本当、サクサクで美味しいわ」

 カサンドラが――あの時のパンの味を思い出してしまえば……けして忘れられない。

 二度と、あのパンをシュシュには食べさせたくない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。 妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。 今迄関わる事のなかった異母姉。 「私が、お姉様を幸せにするわ!」 その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。 最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。 ❋主人公以外の他視点の話もあります。 ❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。

【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ
恋愛
 ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。  どうすれば良いのかしら?  ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。  このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。 ・本編141話 ・おまけの短編 ①9話②1話③5話

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

白百合の君を瞼に浮かべて

蒼あかり
恋愛
騎士隊副隊長のレイモンドは、第二王子アーサーの婚約者アリシアの事を密かに想っていた。 『白百合の君』と呼ばれるほどに美しいアリシアが、自分の起こした行動により婚約破棄を告げられてしまう。酔った勢いで婚約破棄を告げ後悔するアーサーだが、大きな力で婚約の存続は途絶えてしまった。それでもアリシアを手放せないアーサーが、執拗にアリシアを追い詰めてくる。そんなアリシアを守るために求め続けるも、二人はすれ違い続けついには行方知れずに。 年月を重ね、二人は再び出会うことができるだろうか? 他サイトでも掲載しております。

処理中です...