(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに

にのまえ

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29話

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 カサンドラ達は日が暮れた暗い道を、ランタンの灯りをたよりに、カーシン国からのんびり荷馬車で戻っていた。

「アオ、疲れたでしょう? そこの傍に停めて荷台で休憩しましょう」

「わかった! 荷馬車を止めるとき、少し揺れるからきをつけて」

「はーい」

 開けた場所に荷馬車を停めて、スズさんに頂いたパンを袋からカゴへと取り出した。シュシュは持ってきていたバスケットを開き、出発前に作っておいた水だし紅茶を人数分ティーカップに注いだ。

「お嬢様のお祖母様、ドラお嬢様、アオ君、水出し紅茶が入りました」
 
「シュシュ、ありがとう」
「サンキュ!」
「水出し紅茶か懐かしいね、少し、冷やした方が美味しいから、氷魔法で氷をだそう」
 
 お祖母様が手にした杖を振ると、カラン、コロンとみんなのティーカップに小さな氷が入り、ジワジワとティーカップの水出し紅茶を冷やした。

「お祖母様、いただきます。……あら? 氷で冷やすと香りと紅茶の味が締まっておいしいわ」

 遠出をするとき直ぐに火が使えないから、水に紅茶の葉をひと晩浸し、茶こしでこしながらコップに注ぐ水出し紅茶。
 
 カサンドラ、シュシュ、アオはお祖母様みたいに魔法で簡単に氷を出して冷やすことができないので、いつもぬるい水出し紅茶を飲んでいた。

(まあ、ぬるくても茶葉がいいから飲めるのだけど。冷やすとこんなにも美味しいのね――氷魔法って使えるわ)
 
 
「ドラ、シュシュ、最後のスルール貰うな!」

 と、アオが竹カゴから手にしたスルールの実が金色に変わった。

「お、な、なんだぁ? スルールの色が金に変わったぞ?」

「まあ、ほんとうね」
「ほんとうです」

 お祖母様はそのスルールをみて、微笑み。

「おやおや、珍しいね。アオは種入りをひいたようだ。わたしがさっき言った通り、庭にタネを植えて井戸水をかけるといい。すぐに低木が生えてスルールの実がなり、楽しいことが起こる」

「楽しいことですか?」
「ああ、とても楽しいことさ」

「フフ、お祖母様のその言葉、ワクワクいたしますわ」

「そうだな」
「ワクワクします」
 
 お祖母様のいう通り、アオが金色のスルールを剥くと、果肉の中に3センチほどのタネが一粒入っていた。そのタネを、カサンドラは大切にハンカチに包んで胸にしまった。



♱♱♱


 
 翌朝、庭にスルールのタネをみんなで植えて、井戸の水を撒くと。そのスルールのタネはすぐに芽をだし、お昼過ぎには低木まで育っていた。

「なんて、早い成長ね。とても不思議だわ」
「ドラ、これは不思議ってもんじゃねぇ……不気味だ」
「はい、不思議と不気味です。こんなに早く植物が育つなんて……シャクと豆豆の木みたいです」

「それだ!」
「それですわ」

 物話を知っていたので、みんなで顔をあわせ頷いた。楽しげなカサンドラ達の様子を見に、お祖母様が屋敷から庭へ現れて。

「フフッ、やっているね。そのスルールの木、実をつけるのは明日の早朝か、それとも深夜かな?」

 と、おっしゃった。

 

 ♱♱♱
 

 その日の深夜。

 スルールのタネを植えた庭先から、何やら楽しそうに話す声が、カサンドラの寝室に聞こえてきた。何事かと部屋から、そろりと足音を立てず庭に行こうとした。

 ちょうど隣のシュシュの部屋ではなく。シュシュ隣、アオの部屋の扉が開き、中からパジャマ姿のアオが手にナイフを持って顔を出した。どうやらアオにも庭から話し声が聞こえて、目が覚めたらしい。

 隣のシュシュは気持ちよく寝ていたので、起こすのをやめた。

 カサンドラは扉横に吊るされた、ランタンを手に取り火をつけ、アオはナイフを構えた。足音を立てず、2人で並んでスルールを植えた庭先の低木に近づくと……そこにはキラキラ光る球がフワフワ浮いていた。

 さらに近付くと、可愛らしい声が聞こえる。

「たくさん実れ~! 甘く美味しくなぁ~れ! 果実が実ったら分けてもらうんだぁ~」

「「⁉︎」」

 庭先でカサンドラとアオが目にしたのは、背中に光る羽を生やした、手のひらサイズの小さな女の子。その子は手に枝を持って、スルールの低木の周りを飛んでいた。
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